NPSの特徴

①NPSの定義

食べすぎ、偏食、栄養不足などにより引き起こされる健康課題は、適切に栄養を摂ることにより、その多くが解決できると考えられます。しかし、実際には食品の栄養成分はさまざまで、生活者が食品の栄養を正しく把握し、適切に食品を組み合わせることはとても難しいことです。そこで注目されているのが栄養プロファイリングシステム(Nutritional Profiling System:NPS)です。

WHOは、「栄養プロファイリング」とは「疾病予防及び健康増進のために、栄養成分に応じて、食品を区分またはランク付けする科学」と定義しています。※1そしてWHOは、「栄養プロファイリング」について各用途に活用する一連の仕組みを、「モデル」という表現をつけて、「栄養プロファイルモデル」と称しています。一方、「モデル」を含めた、より広範な取り組み全体を指し示す意味合いとして、「システム」をつけた「栄養プロファイリングシステム」という表現も一般化しています。

  • ※1World Health Organization. Use of nutrient profile models for nutrition and health policies: meeting report on the use of nutrient profile models in the WHO European Region, September 2021. No. WHO/EURO: 2022-6201-45966-66383. World Health Organization. Regional Office for Europe, 2022.

②NPSにおける科学的根拠の重要性

NPSとは、食品に含まれる栄養成分の量を科学的な根拠にもとづきスコア化するなどして、食品の栄養価値を評価する仕組みです。
世界では、用途に合わせてさまざまなNPSが開発され、利用されています。そのため、世界保健機関(WHO)は、NPSは対象者の食生活の実態や健康課題に対応して設計することを推奨しています 。

NPSは、それぞれの考えにもとづいて自由に設計できる仕組みです。従って、設計されたNPSが科学的に信頼しうるものかどうか、その妥当性を検証することが重要です。代表的なNPS として、欧州で活用されている「Nutri-Score」、オーストラリアとニュージーランドで活用されている「Health Star Rating(HSR)」、米国タフツ大学で開発された「Food Compass」があり、これらのNPSは科学的妥当性の検証が行われており、栄養価値が高いと評価された食品を摂取するほど、健康にプラスの影響を及ぼすことが複数の学術論文にて報告されています。※2

NPSを設計する際には、妥当性を確かめながら、必要に応じて改良していくことが重要です。設計されたNPSの科学的検証を積み重ね、改良を続けていくことで、その妥当性が頑強なものとなり、NPSとしての科学的な信頼性が高まっていきます。

  • ※2Barrett, Eden M., et al. "Criterion validation of nutrient profiling systems: a systematic review and meta-analysis." The American Journal of Clinical Nutrition 119.1 (2024): 145-163.

牛乳や食パン、焼き魚、パイナップルなどたくさんの食材に囲まれた女性のイラストです。女性はNPSを参考に食材選びを行っています。 牛乳や食パン、焼き魚、パイナップルなどたくさんの食材に囲まれた女性のイラストです。女性はNPSを参考に食材選びを行っています。

NPSの用途

NPSの代表的な用途として、①栄養に関する情報提供(商品への栄養価値の記載など)と②食品企業による栄養価値を考慮した商品の開発への活用が挙げられます。

①栄養に関する情報提供への活用

WHOは、食品の栄養価値を分かりやすくパッケージに表示する容器包装前面表示(Front-Of-Pack Labelling:FOPL)という取り組みを推奨しています。日本ではFOPL導入に向けた議論がスタートした段階ですが、海外のいくつかの国では、政府が主導してFOPLがすでに実施されています。たとえば、フランスでは「Nutri-Score」というNPSが開発されており、フランス政府によりFOPL制度に活用されています(下図)。栄養成分情報から算出した評価結果がA(最高)からE(最低)にランクづけされ、商品パッケージの前面にロゴマークが表示されています。これらのロゴマークが表示された商品を手にされた方は、「Nutri-Score」により示された栄養価値を参考に商品を選択できるようになっています。このようにFOPLにおける栄養に関する情報提供の根拠として、NPSによる栄養価値の評価結果が活用されています。

フランスで使用されているNPSのロゴマークの紹介と、そのロゴマークがパッケージの前面に表示された状態を説明する商品のイラストが描かれています。 フランスで使用されているNPSのロゴマークの紹介と、そのロゴマークがパッケージの前面に表示された状態を説明する商品のイラストが描かれています。

より詳しい解説

②食品企業による栄養価値を考慮した商品開発への活用

「おいしく食べること」による喜びや充足感は、食の価値としてとても大切です。そして、栄養価値も同じく食の価値として大切です。食品企業においては、NPSにより食品の栄養価値を科学的に評価することにより、栄養価値を高める商品改良を行うことや、新たに栄養価値の高い商品を開発することができます。海外のいくつかの食品企業は、NPSを用いて自社商品の栄養価値を評価することにより、より健康的な商品の提供に努めていることを公表しています。

左に、パソコンで食品の栄養評価を行う食品企業の担当者2名、右に、その栄養評価をもとに商品の改良や開発を行う担当者2名のイラストが描かれています。 左に、パソコンで食品の栄養評価を行う食品企業の担当者2名、右に、その栄養評価をもとに商品の改良や開発を行う担当者2名のイラストが描かれています。

対象に合わせたNPSの必要性

栄養に関わる健康課題は、栄養摂取の過不足や全体的な栄養バランスに大きな影響を受けます。摂取する栄養成分の過不足は、食文化などから大きな影響を受けるため、地域によって栄養の問題はさまざまです。また、子供、成人、高齢者といったライフステージごとに注意すべき健康課題は異なってきます。このほかにも、人種や経済状況などさまざまな要因が、栄養に関わる健康課題に影響します。NPSを用いて栄養に関わる健康課題に効果的にアプローチするためには、対象に合わせてNPSを設計することが必要です。

左から、幼児、成人、高齢者の各世代の人が、それぞれ異なるメニューで食事する様子のイラストです。 左から、幼児、成人、高齢者の各世代の人が、それぞれ異なるメニューで食事する様子のイラストです。

より詳しい解説

監修者プロフィール

津金 昌一郎 先生

国際医療福祉大学大学院
医学研究科公衆衛生学専攻 教授

1981年慶應義塾大学医学部卒業、同大学院医学研究科において公衆衛生学を専攻。同大学医学部助手を経て、1986年国立がんセンター(現・国立がん研究センター)に入所し、同・社会と健康研究センター長などを歴任。その後、2021年より国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所にて、理事兼国立健康・栄養研究所長を経て、2023年より現職。