私たちが食べ物を口にすると、食品に含まれる成分が消化吸収され、一部は糖分となり血液中を流れます。
この血液中に含まれる糖分の濃度を血中のブドウ糖濃度と呼びます。
糖分は体を動かす重要なエネルギーですが、急激に増えると体に好ましくない反応を引き起こします。血中のブドウ糖濃度を下げようとしてインスリンと呼ばれるホルモンが過剰に分泌されるのです。健康を考えるうえでは、血中のブドウ糖濃度は上げすぎず、下げすぎず一定の幅に抑えることが大事です。
そこで着目すべき指標が、食品に含まれる糖質量とは別のGI値というものです。 GI値はGlycemic Index(グライセミック・インデックス)の略で、食品に含まれる糖質の「吸収の度合い」を示すものです。
血中のブドウ糖濃度はGI値が高い食品を食べた時ほど急激に上昇してしまいますが、GI値の低い食品ほどおだやかに上昇します。
血中のブドウ糖濃度が気になる人は食品に含まれる糖質量に目が行きがちですが、同じ糖質量を含む食品を食べても、血中のブドウ糖濃度の上がり方は異なります。
実は食後の血中のブドウ糖濃度の急激な上昇を抑える観点で、 GI値の低い食品に着目することこそ重要と言えるのです。
GI値はブドウ糖を摂取したときの血中のブドウ糖濃度の吸収度合いを100として、食品ごとに相対的に表されます。 オーストラリアの大学で行われたGI値測定試験では、同じ糖質量を含む基準食品(ブドウ糖)または「チョコレート効果」を食べた後の血中のブドウ糖濃度を測定しました。その結果、同じ糖質量にもかかわらず、ブドウ糖を摂取すると、血中のブドウ糖濃度が急上昇した後、摂取前より下回りました。それに対して「チョコレート効果」を食べた後は、血中のブドウ糖濃度の上昇が非常におだやかで、食後90分以降も食前を下回らず、安定しているという結果が得られました。
このことから、「チョコレート効果」はGI値が低い“低GI食品”であるということが分かります。
東京慈恵会医科大学附属柏病院
栄養部課長/管理栄養士
湯浅 愛 氏
1994年、東京慈恵会医科大学附属病院栄養部に入職。
2013年より同葛飾医療センター、2017年より現職。
腎臓病、糖尿病を中心に、医師と連携したチーム医療活動を行い、患者が実践できる分かりやすい食事療法をめざして活動の場を広げている。
血中のブドウ糖濃度を気にしたり、体調管理をしている人のなかには、食品に含まれる糖質量に注意している人が多いようです。でもたとえ同じ糖質量でも、食品によって糖質の吸収度合いは異なります。よって単純な糖質量より、その食品のGI値に着目することが大事なのです。
また砂糖が入っていない食品にヘルシーなイメージをもっている人もいるようですが、例えばおせんべいは、主成分がお米であるため高GI食品で、血中のブドウ糖濃度が上がりやすい食品です。
一方、高カカオチョコレートの「チョコレート効果」は、低GI食品であることが分かっています。
私の栄養指導では、無理なく長く続けられることを重視しています。大好きな食べものを我慢していると、イライラが募るもの。我慢し続けたあげく、〝ストレスがたまって食べ過ぎてしまった〟なんてこともよくあります。
何ごとも過度の我慢は長続きしません。ですからチョコレートが好きな人には、低GIの 「チョコレート効果」 を少しずつ食べることをすすめることもよくあります。好きなものを我慢することはストレスとなり、QOL(生活の質)が低くなることにも繋がります。おいしい高カカオチョコレートなら、栄養管理も無理なく、長続きします。
「チョコレート効果」 は、低GIなだけでなくさまざまな栄養成分が含まれているのも特徴です。例えば、食物繊維など、普段の食事で不足しがちな栄養成分が含まれている点、ポリフェノールを手軽にたっぷり摂取できる点もメリットです。さらに、脂質が含まれているので、少量で空腹感が和らぎます。香りによる癒やし効果もあり、気分転換や気持ちを前向きに切り替えたいときにもおすすめです。
また、日々の生活のなかで常に高GI食品を避けて、低GI食品だけを食事に取り入れるのも難しいでしょう。その点、「チョコレート効果」は嗜好品として気軽に食べられます。携帯しやすく、食べるとき音が出ないので、シーンも選びません。日持ちするので、日頃から家庭やオフィスに常備しておくこともできます。仕事が忙しくて食事がとれなかったり、帰宅時間が遅くなったりしたときなど、「チョコレート効果」を一口食べておけば、帰り道での食べ過ぎを防ぐこともできます。
低GIでさまざまな栄養成分を含む「チョコレート効果」を、普段からコツコツ食べる。心とカラダの健康のためには、そんな習慣もおすすめです。
たまにカロリーを気にして、朝食を抜くなど食事の回数を減らす人がいます。でもこれは、健康にとっては逆効果。食事の回数が少ないと、血中のブドウ糖濃度の急上昇や急降下が起きやすくなります。
いっぽう、“間食”に対して健康に悪いイメージをもっている人もいるようですが、1日のトータルのカロリーを知った上で食べる分には、むしろ健康によい効果をもたらします。1日3食に間食を加え、食事を何度にも分けて摂取したほうが、血中のブドウ糖濃度の上昇を抑えられるからです。
間食には、血中のブドウ糖濃度の上昇がおだやかな低GI食品がおすすめです。
血中のブドウ糖濃度の急上昇を抑え、ストレス解消やコミュニケーションのうえでも有益な間食である低GIの「チョコレート効果」を、ぜひ日々の食生活に取り入れてみてはいかがでしょう。