生活習慣病も、高齢化も「日本ならではの健康課題」を考え抜いて作ったMeiji NPS

食品の栄養価値を科学的に評価する仕組み「栄養プロファイリングシステム(Nutritional Profiling System:NPS)」。栄養課題解決への効果的なアプローチとして、近年注目されています。明治が食品企業として、商品の栄養価値を高めるため、新たに開発した「Meiji NPS(明治栄養プロファイリングシステム)」についてご紹介します。
食品の栄養価値を評価する「NPS」で、明治の商品の栄養価値を高めていきたい
昨今の世界では低栄養と過栄養が併存する状態「栄養不良の二重負荷」が大きな課題となっています。
これは日本も例外ではありません。例えば成人の生活習慣病が健康課題である一方で、若年女性は痩せたい願望が強く、痩せ過ぎる傾向にあることも問題視されています。さらに日本は高齢化が進んでいるため、高齢者のフレイル(加齢により運動機能や認知機能が低下した状態)も大きな健康課題となっています。
こうした課題に対しては「適切な栄養摂取」も重要だと考えられていますが、食品の栄養成分は多岐にわたり、それを消費者が正確に把握して、適切に摂取するのは簡単なことではありません。
そこで、その具体的な解決策として今注目されているのが、NPSです。食品に含まれる栄養成分などの量により、食品の栄養価値を科学的な根拠に基づいてスコア化するなどして、評価する仕組みのことをいいます。
食品企業である明治がNPS開発に取り組み、NPSで食品の価値を評価することは、栄養価値の高い商品の開発や、既存商品の栄養価値をより高めるような商品改良につながるのです。
日本には「ライフステージに合わせた複数のNPS」が必要だった
Meiji NPSは、ライフステージによって異なる日本の健康課題に着目し、そのライフステージごとに分けてNPSを開発した点が大きな特徴です。
海外ではオーストラリア・ニュージーランドの「HSR(Health Star Rating)」というNPSが有名ですが、これは海外で年齢を問わず健康課題となっている肥満や過体重に注目しています。「肥満に対処するNPS」であれば成人も高齢者も両方対処できるという考え方です。
日本も同様の課題は抱えていますが、オーストラリア・ニュージーランドほど肥満率が高いわけではありません。逆に日本の若年女性の痩せが問題視されていますし、高齢者のフレイルの問題もあります。
分かりやすい例として、日本栄養士会などでは「日本の健康課題は、65歳前後をひとつのターニングポイントとして大きく変化する」といわれています。成人期では生活習慣病や若年女性の痩せが重要な反面、年齢を重ねていくと徐々に筋肉が衰える、活動量が減る、やがては機能的な自立性を保てなくなる、ということが事実として認識されています。つまり日本では、1つのNPSで成人と高齢者の両方には対処できない可能性があるのです。そうすると日本のNPSのあるべき姿は複雑ですが、これらの課題に対応しなければなりません。
現在、Meiji NPSは生活習慣病と若年女性の痩せに着目したプロファイルを持つ「成人NPS」と、高齢者のフレイルに着目したプロファイルを持つ「高齢者NPS」の2つあります。大きな違いは、各NPSに含まれる「栄養成分の種類」です。
日本における健康課題の観点から、たんぱく質と食物繊維、カルシウム、ビタミンDは、積極的に摂ったほうがよい栄養成分です。なおかつ、若年女性については鉄を積極的に摂ったほうがよいことから、「成人NPS」ではこうした栄養素を「推奨栄養成分」としています。
一方、高齢者において鉄は十分に摂取していると考えられます。また、国内のエビデンスを考慮しても、鉄はフレイルへの影響がほとんどないことから、「高齢者NPS」では「推奨栄養成分」にしていないのです。
もうひとつ、摂取を制限すべき栄養成分である「制限栄養成分」にも違いがあります。「成人NPS」はエネルギーと飽和脂肪酸、糖類、食塩の4つです。しかし、高齢者にとって飽和脂肪酸は、フレイルに対する効果が明らかでないので、「高齢者NPS」では飽和脂肪酸を「制限栄養成分」とはしていません。

Meiji NPSはこれからも検証を重ね、アップデートを続けていく
「Meiji NPS」の開発を手がけた若山 諒大主任研究員、於 タオ研究員は現在も、Meiji NPSが科学的に信頼されるものになるように、その妥当性を検証する研究を続けています。
於:NPSの開発のみにとどまらず、世界基準に合わせて検証研究を進められているのは、目覚ましい成果だと感じています。Meiji NPSはこれから、既存商品の改良や新商品の開発などの際に、1つの尺度として利活用されていきます。
私たちは幅広い商品を提供していることから、このような取り組みから生まれる効果に期待して、商品を通じてお客さまの健康に貢献していきたいと考えています。これを機に、お客さまの健康を陰ながら支える私たちの取り組みをぜひ知っていただきたいですね。
若山:Meiji NPSは、グループ理念を各事業や商品に落とし込む際の考え方を明文化した「明治栄養ステートメント」を具現化する1つの手段、明治の考える“栄養”に向かっていくための尺度です。商品改良が目的であるがゆえに、自社の商品に対してシビアにスコアを出すことになります。
そして、実はMeiji NPSはこれで完成というわけではありません。日本の栄養摂取状況もロングスパンで見ると変わっていきますし、新しいエビデンスや知見が増えれば、それに応じて変えていかなければベストとはいえません。常に科学的に正しいスコアであるべく、アップデートしていく作業はこれからも続いていきます。
