からだにいいこと

カカオポリフェノールの効果とは?

2025/10/10

カカオポリフェノールの効果とは?

チョコレートに含まれる“カカオポリフェノール”が、私たちの健康と美容にうれしい効果をもたらす可能性があることが、長年の研究によって明らかになっています。 高血圧や動脈硬化の予防、肌の老化対策、アレルギーの軽減、さらには脳の活性化にまで働きかける可能性を秘めた成分──それがカカオポリフェノールです。 本記事では、「カカオポリフェノールとは何か?」という基本から具体的な効果について、わかりやすく解説します。

カカオポリフェノールとは?

「チョコレートが健康に役立つ」と聞くと、少し意外に感じる方も多いでしょう。けれども近年の研究では、チョコレートの原料であるカカオ豆に豊富に含まれる「カカオポリフェノール」が、私たちの体にさまざまな良い影響をもたらすことがわかってきました。

植物に含まれる苦みや色素の成分である「ポリフェノール」は、8000種以上存在するといわれています。代表的なものに、赤ワインに含まれるレスベラトロールや、緑茶のカテキンなどがあり、いずれも抗酸化作用を持つことで知られています。

抗酸化作用とは、体の中で発生する「余分な活性酸素を除去する働き」のこと。酸素が鉄を錆びさせるように、過剰に産生された活性酸素は体内の物質を酸化させます。これは体のサビとも呼ばれ、老化や動脈硬化、生活習慣病の原因になると考えられています。つまり、ポリフェノールは“体を酸化ストレスから守る盾”のような役割を果たすのです。

数あるポリフェノールの中でも、近年注目を集めているのがカカオポリフェノールです。カカオ豆に豊富に含まれ、チョコレートを通じて比較的効率よく摂取できる点が大きな魅力といえます。普段の食生活で赤ワインやブルーベリーなどの自然食品から十分なポリフェノールを継続して摂り続けるのは意外に難しいのですが、チョコレートであれば手軽に、しかもおいしく続けられるという利点があります。

さらに、カカオポリフェノールは単なる抗酸化作用にとどまらず、血圧を下げる作用や血管の柔軟性維持、美容やアレルギー改善、脳の活性化など多方面での健康効果が報告されています。
つまり「カカオポリフェノール」とは、ポリフェノールの一種でありながら、チョコレートを食べることで無理なく摂れるおいしい健康成分だといえるのです。

カカオポリフェノールの効果とは

血圧を低下させる

血管が詰まり、細くなることで血圧は上昇しますが、カカオポリフェノールをとることで、血管を広げる、あるいは、血管をしなやかにする作用が期待できることがわかりました。

→血圧を低下させる、カカオポリフェノールの効果について詳しく

動脈硬化を予防する

動脈硬化を引き起こす原因のひとつは、体内に生じる活性酸素によってLDLコレステロールが酸化されること。カカオポリフェノールは強い抗酸化力で、酸化を抑える働きが期待されています。

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美容効果

見た目年齢が若くても、肌は年齢とともに老化します。カカオポリフェノールには、肌老化の原因のひとつである「活性酸素」が引き起こすトラブルを防ぐことが期待されています。

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アレルギーの改善

アレルギーの発症には過剰に作られる「活性酸素」が関わっています。カカオポリフェノールは、この活性酸素を生み出すさまざまな因子の働きを抑制することが報告されています。

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脳の活性化

脳は加齢とともに記憶や学習などの認知機能が低下します。カカオポリフェノールは、脳の栄養といわれる「BDNF」の産生を高めたり、認知機能を改善したりする可能性が報告されています。

→脳を活性化する、カカオポリフェノールの効果について詳しく

カカオポリフェノールが血圧を下げる

血圧が高い状態が続くと、血管に大きな負担がかかり、心臓病や脳卒中など重大な生活習慣病のリスクを高めることが知られています。特に日本では高血圧は非常に多くの人に見られる症状で、「沈黙の病」とも呼ばれるほど自覚症状が乏しいのが特徴です。そのため、日常的に血圧をコントロールすることが健康維持の鍵となります。

血圧は、基本的には血管が詰まり、細くなることで上昇します。カカオポリフェノールには、この高血圧リスクを軽減する作用があると報告されています。

その理由の一つが、血管を広げる作用(血管拡張作用)です。具体的には、カカオポリフェノールが血管内皮細胞に働きかけることで、「一酸化窒素(NO)」という物質の生成を促すことがわかっています。NOは血管をしなやかに広げ、血流をスムーズにする役割を持っているため、結果的に血圧が下がる効果につながります。

実際に、ヨーロッパで行われた試験では、カカオポリフェノールを含むチョコレートを2週間摂取した人に、血圧低下とインスリン感受性の改善が確認されました。ただし、その実験では1日100g(約500kcal)という大量摂取が必要で、カロリー過多が問題となりました。(※1)

そこで日本・蒲郡市で行われた実証研究では、カカオ分70%以上の高カカオチョコレートを、1日あたり25g摂取する方法で検証が行われました。その結果、高血圧の人では血圧が有意に低下し、しかも体重やBMIへの悪影響は見られませんでした。

つまり、カカオポリフェノールは抗酸化作用だけではなく、血管内皮機能を改善し、血流をスムーズにする働きがあることから、日常的な高血圧対策に役立つ可能性が高いといえます。

※1 Grassi, D.; Desideri, G.; Necozione, S.; Lippi, C.; Casale, R.; Properzi, G.; Blumberg, J. B.; Ferri, C., Blood pressure is reduced and insulin sensitivity increased in glucose-intolerant, hypertensive subjects after 15 days of consuming high-polyphenol dark chocolate. J Nutr 2008, 138, 1671-6.

カカオポリフェノールが動脈硬化を予防する

動脈硬化とは、血管の内側に脂肪やコレステロールが沈着し、血管が硬く狭くなっていく状態を指します。進行すると血液の通り道が狭まり、血流が悪化して心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を引き起こす可能性があります。日本人の主要な死因の一つである虚血性心疾患や脳卒中の多くに、この動脈硬化が関与していると考えられています。

この動脈硬化の原因の一つが、悪玉コレステロール(LDL)が体内で酸化されることです。酸化したLDLは、血管壁にダメージを与えたり、免疫細胞に取り込まれて“泡沫化細胞”と呼ばれる細胞をつくって血管の内側にプラーク(沈着物)を形成しやすくしたりします。これが血管の詰まりや破裂を招き、重篤な循環器疾患につながるのです。

ここで役立つのが、強い抗酸化作用を持つカカオポリフェノールです。カカオポリフェノールはLDLが酸化されるのを防ぎ、血管に悪影響を与えにくくします。また、血液をサラサラにして流動性を改善し、血管をしなやかに保つ作用も報告されています。(※2)(※3)

さらに、血管内皮細胞の機能を改善し、一酸化窒素(NO)の産生を促すことで血管の拡張を助ける働きも知られています。(※4)つまり、カカオポリフェノールは単に酸化を抑えるだけでなく、血管を柔軟にし、動脈硬化のリスクを多方面から低減するのです。

これまでの研究でも、カカオポリフェノールの摂取によって血液中のLDL酸化が抑えられ、血管機能が改善することが確認されています。このことから、日常的に高カカオチョコレートを取り入れることは、動脈硬化を防ぐ上で非常に有効な習慣だといえます。

※2 西堀すき江ら, 日本ヘモレオロジー学会誌 5, 75-78, (2002).
※3 Engler, M. B., et al., J Am Coll Nutr 23, 197-204, (2004).
※4 Grassi, D.; Desideri, G.; Necozione, S.; Lippi, C.; Casale, R.; Properzi, G.; Blumberg, J. B.; Ferri, C.,Blood pressure is reduced and insulin sensitivity increased in glucose-intolerant, hypertensive subjects after 15 days of consuming high-polyphenol dark chocolate.J Nutr. 2008;138(9):1671–1676.

カカオポリフェノールには美容に効果がある

年齢を重ねるとともに気になってくるのが「肌の老化」。肌は外見年齢を大きく左右する要素で、悩む方も多いのではないでしょうか。

老化の大きな原因のひとつが活性酸素です。私たちは呼吸によって酸素を取り込みますが、その一部は体内で酸化し活性酸素に変化します。さらに、紫外線、ストレス、喫煙、過度の飲酒などによっても活性酸素は大量に発生します。過剰に増えた活性酸素は、細胞を酸化ストレスにさらし、コラーゲンの分解や角層の水分保持力低下を招くことで、しわやたるみ、シミといった肌トラブルの原因となります。

ここで役立つのが、抗酸化作用に優れたカカオポリフェノールです。カカオポリフェノールは活性酸素を取り除き、皮膚の細胞を酸化ストレスから守る働きをします。その結果、肌の老化を緩やかにし、美しい肌を維持する助けとなります。

研究によると、カカオポリフェノールを豊富に含むカカオ製品を12週間摂取した女性では、皮膚の角層水分量の低下が抑えられたことが報告されています。また、紫外線を照射した際に生じる肌の赤み(紅斑形成)も抑制されることが確認されました。(※5)

つまり、カカオポリフェノールはからだの内側から働きかけて、肌の乾燥や紫外線ダメージを防ぐ、食べるスキンケアとしての役割を果たしてくれるのです。チョコレートを日常的に少量取り入れることは、外側からのスキンケアだけでなく、内側からの美容対策としても理にかなった習慣といえるでしょう。

※5 Heinrich, U.; Neukam, K.; Tronnier, H.; Sies, H.; Stahl, W., Long-term ingestion of high flavanol cocoa provides photoprotection against UV-induced erythema and improves skin condition in women. J Nutr 2006, 136, 1565-9.

カカオポリフェノールはアレルギーを改善する

花粉症やハウスダスト、食物アレルギーなど、アレルギーに悩む人は年々増加しています。アレルギーは本来、体を守るはずの免疫システムが過剰に反応することで起こります。

たとえば、花粉やハウスダストなど本来は無害な物質を「敵」と認識してしまうと、免疫細胞がIgE抗体を作り出します。この抗体が肥満細胞と結合し、そこに再びアレルゲンが入ってくるとヒスタミンなどの化学物質を放出します。これが、くしゃみ・鼻水・目のかゆみといった症状を引き起こすメカニズムです。

さらに、好酸球という免疫細胞が活性化すると炎症が悪化し、慢性的なアレルギー症状を引き起こすことになります。つまりアレルギーは、「感作(抗体が作られる段階)」「発症(症状が出る段階)」「悪化(症状が続く・強まる段階)」という3つのステップで進んでいくのです。

ここで注目されるのが、カカオポリフェノールの抗酸化作用です。研究によると、カカオポリフェノールにはアレルギーに関連する複数の因子を抑える働きがあることが分かっています。具体的には、

・IgE抗体が過剰に作られるのを防ぐ(※6)
・肥満細胞からのヒスタミン放出を抑える(※7)
・好酸球の脱顆粒を防ぎ、炎症の悪化を抑える(※8)
・T細胞・B細胞などのリンパ球の過剰な作用を抑制し、免疫反応の暴走を防ぐ(※8)

といった複数の段階に作用することが報告されています。

つまりカカオポリフェノールは、アレルギー反応の一部分だけでなく、発症から悪化までのさまざまなプロセスを食い止める多面的な働きを持っているのです。
そのため、日常的に高カカオチョコレートを少量摂ることは、アレルギー症状に悩む人にとって、「おいしい予防習慣」になり得ると考えられます。

※6 Saito, M. et al.,Procyanidin-rich extract from cacao inhibits antigen-specific IgE production and systemic anaphylaxis in mice.J Nutr. 2003;133(10):3120–3125.
※7 Kanda, T. et al.,Inhibition of antigen-induced degranulation of RBL-2H3 cells by cocoa polyphenol extract.Biol Pharm Bull. 1998;21(9):1050–1052.
※8 鈴木、第4回 チョコレートココアシンポジウム、(1998)

カカオポリフェノールは脳を活性化する

年齢を重ねるにつれて「物忘れが増えた」「集中力が続かない」と感じる方は少なくありません。これは自然な加齢現象の一つであり、脳の神経細胞の働きが少しずつ衰えることが背景にあります。それは、神経細胞の成長や修復を促す因子である BDNF(脳由来神経栄養因子) の減少が一因です。BDNFは「脳の栄養素」とも呼ばれ、記憶や学習などの認知機能を支える役割を果たしています。しかし加齢や生活習慣の乱れによってBDNFが減ると、脳の働きが低下し、認知機能の衰えにつながるのです。

この認知機能低下に対し、カカオポリフェノールは有効に働く可能性があります。研究では、カカオポリフェノールの摂取によって 脳の血流が改善されることが確認されており(※9)、酸素や栄養素が脳に行き届きやすくなることで思考力や集中力をサポートすると考えられています。さらに、カカオポリフェノールはBDNFの産生を増やす作用を持ち、神経細胞の保護や再生を助けることが示唆されています。(※10)

つまり、カカオポリフェノールは 「血流改善」と「神経栄養因子の増加」 という二方向から脳をサポートする成分なのです。これにより、加齢とともに低下しがちな記憶力・学習能力を維持し、認知機能全般を底上げする効果が期待できます。

※9 Francis, S. T., Head, K., Morris, P. G., & Macdonald, I. A.The effect of flavanol-rich cocoa on the fMRI response to a cognitive task in healthy young people.Physiol Behav. 2006;87(5):841–847.
※10 Sokolov, A. N., Pavlova, M. A., Klosterhalfen, S., & Enck, P.Chocolate and the brain: neurobiological impact of cocoa flavanols on cognition and behavior.Neurosci Biobehav Rev. 2013;37(10 Pt 2):2445–2453.

なぜカカオポリフェノールがチョコレートから効率的に摂れるのか

ポリフェノールはさまざまな食品に含まれていますが、実は「体に取り入れる」にはいくつかの課題があります。たとえば赤ワインやブルーベリーはポリフェノールが豊富ですが、毎日欠かさず一定量を摂り続けるのは現実的に難しいものです。

その点、チョコレートやココアはカカオ豆を丸ごと利用した食品であり、カカオポリフェノールを効率よく摂取できます。さらにチョコレートは保存性も高く、1日あたり25g程度を目安に少量ずつ続けやすいのも大きな利点です。

また、「高カカオチョコレート」と呼ばれるカカオ分70%以上の製品は、一般的なミルクチョコレートに比べて糖分を抑えつつ、効率よくカカオポリフェノールを摂取できることが研究で示されています。
つまり、カカオポリフェノールを効率的に、かつ美味しく続けるためには、日々の生活の中に少量の高カカオチョコレートを取り入れることが最適な方法だといえるのです。

カカオポリフェノールの効果まとめ

チョコレートに含まれるカカオポリフェノールは、血圧を下げ、動脈硬化を予防し、美容やアレルギー、脳の健康にまで働きかける可能性があることが分かってきました。
「おいしくて健康にいい」。そんな理想を叶えてくれるカカオポリフェノール。ぜひ、日々の食生活の中に取り入れて、からだの内側から健やかな毎日を目指してみてください。