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ココアバターとはカカオ豆に含まれた油脂。チョコレートへの役割や成分も解説

2022/12/22

ココアバターとはカカオ豆に含まれた油脂。チョコレートへの役割や成分も解説

ココアバターとは、カカオ豆の油脂のことです。ココアバターが加わることによって、口どけの良いチョコレートになります。ココアバターについて聞いたことはあっても良く知らない、という人もいるかもしれません。この記事では、ココアバターの概要や役割、成分を解説します。

ココアバターとは?

まずはココアバターを知る第一歩として、ココアバターとはどのようなものか、その概要や性質について解説します。

カカオニブの半分以上を占めている

カカオニブ(カカオ豆から種皮等を取り除いたもの)には、一般的に50~57%程度(標準的な含有量は約55%)のココアバターが含まれます。つまり、カカオ豆の約半分以上が油脂で構成されているのです。残りは非脂肪カカオ分のほか、ローストしたカカオニブなら水分が1~2%含まれています。

カカオ豆に含有する油脂を指す

カカオ豆に含まれている油脂がココアバターです。カカオ豆から種皮等を除いたカカオニブをすりつぶすと、ドロドロのペースト状のカカオマスと呼ばれるものになります。油脂の多いゴマやナッツをすりつぶすとペースト状になるのを思い浮かべるとイメージしやすいかと思います。カカオ豆にも油脂が多く含まれるため、その働きにより、すりつぶすことでペースト状にすることができます。

冷やすと固まる性質をもつ

チョコレートの製造において、冷却して固める工程があります。お店に並んでいる板チョコレートは固まっていますが、冷やすと固形になるのはココアバターの性質によるものです。ココアバターはⅠ~Ⅵ型まで6種の結晶型があり、最も安定するⅤ型の結晶で固まると、ツヤがあり口どけの良いチョコレートになります。

体温近くでとける独特な性質をもつ

ココアバターは常温では固まっていますが、25℃くらいから急速にとけ始め、32~33℃近辺でほぼ完全にとけてしまう性質があります。ココアバターの融点は産地により多少差はありますが、一般的には33.8℃で、体温よりやや低い温度で急速にとけだすことになります。他の植物性油脂と比較しても、体温近くで一気にとけるものはなく、ココアバター独特の性質といえます。

ココアバターがチョコレートに果たす役割

ココアバターは、チョコレートが固まる性質のほか、チョコレート独特の口どけの良さなどチョコレートのおいしさにとって重要な役割を果たしています。ここでは、ココアバターの重要性、役割について解説します。

チョコレートを固める

1847年にイギリス人の菓子職人ジョセフ・フライが発明した「イーティングチョコレート」はチョコレートの歴史上、重要な発明のひとつ。その前に発明されたココアパウダーの製造時にはココアバターが余るため、そのココアバターの性質をいかして、飲み物だったチョコレートを固形にしたのです。
砂糖とカカオニブをすりつぶしたものにココアバターを加え、固めたのが食べるチョコレート。熱帯雨林地方であるカカオ産地では固まりませんが、カカオ豆が気温の低いヨーロッパに持ち込まれたことで、ココアバターを固めることが可能になりました。

チョコレートの口どけを良くする

口の中に入れるとゆっくりととけ出し、豊かな風味が広がるのはチョコレートならではの魅力。これは、ココアバターが体温よりやや低い温度でとける性質によるものです。ココアバターは25℃までは油脂中の80%以上が固体ですが、25℃を超えると急速にとけ始め、32~33℃辺りでほぼ完全にとけて液体になります。つまり、狭い範囲の温度帯で速やかにとける性質が、チョコレートの口どけの良さに繋がっているのです。

ココアバターがとけることで、香気成分でチョコレートが華やかに香る

豊かな香りが魅力のチョコレート。カカオ豆の発酵時に発生した、糖やアミノ酸などの前駆体にロースト工程で熱が加わり、チョコレート特有の香り成分を発生させます。チョコレートを食べると、ココアバターに閉じ込められていた味や香りの成分が解放されて口中に広がります。これも、ココアバターが体温より少し低い温度でとける性質によるものです。

ココアバターに含まれる成分

ココアバターには様々な成分が含まれていますが、それらについての誤解や心配もあるようです。その誤解を解くと共に、ココアバターに含まれる成分についても詳しく紹介します。

「体に悪い」と心配されるトランス脂肪酸は少ない

脂肪酸には大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。不飽和脂肪酸の大部分はシス型ですが、ごく一部がトランス型の形状をしており、健康に影響があるといわれています。食品安全委員会の調査(平成18年度)によると、チョコレート100g当たりのトランス脂肪酸は平均0.148㎎(1)(2)、ビスケットやケーキ、スナック類など他の菓子よりもトランス脂肪酸含有量が少ないという結果が公表されています。
(1)出典:食品安全委員会「食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価」
(2)出典:農林水産省 食品安全に関するリスクプロファイルシート2017年3月24日

ココアバターに含まれる脂肪酸の特徴

ココアバターは、飽和脂肪酸を多く含むのが特徴で、飽和と不飽和の比率はおよそ2:1となっています。飽和脂肪酸は「体に悪い」と思われがちですが、日本人の場合はむしろ飽和脂肪酸の摂取量が少なすぎて健康に影響が出るリスクがあるという指摘もされ始めています(1)。また、飽和脂肪酸には血液中のコレステロール濃度を上げる性質がありますが、ココアバターに含まれている飽和脂肪酸の半分は、コレステロールに影響しないステアリン酸という脂肪酸です。高カカオポリフェノールを毎日食べた試験では、総コレステロールや悪玉コレステロールには変化がなく、善玉コレステロールが高まったという結果も出ています(2)。
尚、ラットを用いた研究ではココアバターは消化されにくく、吸収されにくいという結果が出ていますが、ヒトでの吸収率は良いという結果が出ています(3)。飽和脂肪酸の摂取限としてココアバターも選択肢の一つになると言えるでしょう。

(1)出典:Muto M. High Dietary Saturated Fat is Associated with a Low Risk of Intracerebral Hemorrhage and Ischemic Stroke in Japanese but not in Non-Japanese: A Review and Meta-Analysis of Prospective Cohort Studies. J Atheroscler Thromb.25.375-392.2018

(2)出典:Natsume M. Effects of dark chocolate Intake on Physical Functions in Japanese Subjects. Adv Clin Transl Res.2.100012.2018

(3)出典:Kris-Etherton PM. Dietary Stearic Acid and Risk of Cardiovascular Disease: Intake, Sources, Digestion, and Absorption. Lipeds.40.1193-1200.2005

酸化しにくくさせる

ココアバターは天然の抗酸化物質を含んでいるため、他の油脂とは異なり酸化しにくいという優れた性質があります。そのためチョコレートのおいしさが長く保たれます。

<まとめ>ココアバターとは何かを理解してチョコレートを楽しもう

ココアバターは、歴史的にはイーティングチョコレート誕生のきっかけを作った立役者という一面を持っていますが、私たちに馴染みのあるチョコレートとしては、独特のなめらかな口どけや品質を保つなど重要な役割を担う成分です。ぜひ、そうした重要なココアバターの性質を理解して、チョコレートを味わってみてください。