からだにいいこと
食物繊維の多い食べ物は?効果的に摂取してお腹の調子を整えよう
2022/05/12
食物繊維はダイエット中の人に役立つだけ、と思っていませんか?便通を整える働きはよく知られていますが、血糖値や血中コレステロール値のコントロールにも力を発揮することがわかってきました。本記事では、健康のために積極的に摂りたい食物繊維の種類や効果的な摂り方、豊富に含まれる食品をご紹介します。
食物繊維とは
主に植物性の食品に含まれ、3大栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質)や、ミネラル類、ビタミン類などの栄養素と同じように扱われることもある食物繊維(※1)の、なりにくいもの(※1、2)などさまざまに分類されます。
(※1)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
(※2)食品表示基準について(令和3年9月15日消食表第389号)
食物繊維とは消化酵素で消化されない食品成分
食物繊維は、国際的にヒトの消化酵素で分解されない炭水化物(リグニンなども含む)と定義されています(※1)。たんぱく質や糖質などの栄養素は小腸で消化・吸収されますが、食物繊維は小腸を通過して大腸まで届きます。整腸作用や血糖上昇の抑制など、さまざまな働きが明らかになっており、重要な栄養成分のひとつとして注目されているのです。
(※1) CODEX (2009) ALINORM 09/32/26
水に溶ける「水溶性食物繊維」
水溶性食物繊維は、水に溶けてドロドロになります。胃や小腸、大腸の中で一緒に食べた物の粘性を高めるため、栄養素の消化・吸収を緩やかにし、食後の血糖の上昇を抑えると考えられています(※1)。代表的なものに、果物や野菜に含まれるペクチンがあげられます。
(※1)Brown L. Am J Clin Nutr.69.30-42. 1999
水に溶けない「不溶性食物繊維」
不溶性食物繊維は水に溶けませんが、水分を保持します。不溶性食物繊維は一般的に、大腸の中で水分を吸収して膨らむことで便のカサを増やし、大腸を刺激してぜんどう運動を活発化して、便通を整えると言われています。主なものに、野菜や果物、穀類に含まれるセルロースやヘミセルロース、甲殻類の殻やキノコに含まれるキチン・キトサンなどがあります。
食物繊維の効果
食物繊維はお腹の調子を整えるだけではなく、血糖値や血中コレステロール濃度を抑えることで健康づくりに役立つこともわかってきています。どのように効果を発揮するのか、みていきましょう。
腸内環境を整える
腸内にはおよそ1,000種類・数10兆個もの細菌がすんでいて、それらは「善玉菌」「悪玉菌」、そしてどちらにもなり得る「日和見菌」に分類されます。良好な腸内環境とは、善玉菌を優位に保つこと。食物繊維の中には、小腸では消化・吸収されずに大腸に届き、善玉菌のエサとなってその数を増やすものがあります。ちなみにエサになるのは、ヘミセルロースやペクチン。ほとんどエサにならないのは、野菜や果物に多いセルロースや海藻に含まれる水溶性食物繊維のアルギン酸塩があげられます(※1)。腸内細菌のエサとならない食物繊維も、腸を刺激して便通を促したり、さまざまな健康リスクを下げる可能性があるとされています(※2)。
(※1)食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)
(※2)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
血糖値の上昇を抑制する
血糖値とは、血液中のぶどう糖の濃度のこと。低すぎてもよくないのですが、現代人にとって問題なのは高血糖。高すぎる状態が続くと、動脈硬化や糖尿病などに進行するリスクがあるのです。白米や白パンなど血糖値の上がりやすい食品も、食物繊維が豊富なものと一緒に摂ることで上昇のカーブは緩やかになることがわかっています。この作用は、いくつかの種類の食物繊維(水溶性、不溶性ともに)で確認されています(※1)。
(※1)Behall KM. Consumption of both resistant starch and β-glucan improves postprandial plasma glucose and insulin in women. Diabetes Care.29.976-981.2006
血中コレステロール濃度の低下を促す
血中のコレステロール(LDL)の濃度が高いと、動脈硬化が進んで血管の重大な病気になるリスクが高まります。いくつかの種類の食物繊維(水溶性、不溶性ともに)で、血中の悪玉コレステロール濃度の低下を促す作用が確認されています。一方、血中の善玉コレステロール(HDL)濃度を高める可能性が示されている食物繊維もあり、その代表的なものがカカオに含まれるリグニンです(※1)。
(※1) Natsume M. 2018
食物繊維の効果的な摂取方法
食物繊維を効率よく摂取するには、いくつかのコツがあります。ご自身の食生活を見直して、上手に取り入れてみてください。
食物繊維の摂取量の目安を意識する
『日本人の食事摂取基準(2020年版)』で設定されている食物繊維の摂取目標量は、1日で18〜64歳の男性は21g以上、女性は18g以上。でも、平均摂取量は男性19.4g、女性は17.5gと、男女ともに目標量を摂れていません(※1)。不足しがちのため必要以上に摂ってしまうことはあまり考えられませんが、食物繊維を摂りすぎると下痢を起こしやすくなる(水溶性)、便秘が悪化する(不溶性)などのデメリットもあります。
(※1)厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」
水溶性・不溶性など多種類をまんべんなく
食物繊維水溶性・不溶性、腸内環境のエサになりやすい・なりにくいなど、さまざまな性質や構造のものがあり、働きもそれぞれ異なります。また、一つの食材に一種類の食物繊維が含まれているわけではありません。現代の日本人は、食物繊維の総摂取量が不足しています。特定の食材や食物繊維の種類にこだわらず、いろいろな食品から多種類の食物繊維を摂るよう意識しましょう。
<主に水溶性食物繊維が豊富な食品(※1)>
キャベツや大根などの野菜、果物、大豆、いも類、海藻、ナッツ類 など
<主に不溶性食物繊維が豊富な食材>
大豆、ごぼう、パセリ、穀類、小麦ふすま、甲殻類の殻、キノコ、チョコレート など
水溶性・不溶性どちらの食物繊維も含む食品はたくさんあり、こちらでは多い方をご紹介しています。
(※1)香川明夫監修「八訂 食品成分表 2021」女子栄養大学出版部、2021年
加熱して摂取する
野菜は、生のままで量を摂るのはなかなか大変です。茹でる・煮るなど加熱することで一度にたくさん食べられ、食物繊維を多く摂ることができます。また、野菜の細胞を覆っている細胞膜が壊れるので、閉じ込められていた栄養素も吸収しやすくなります。一方で、葉酸やビタミンCなどは熱で壊れてしまいますので、生もうまく組み合わせましょう。
手軽に補える食品を見つける
食物繊維は、毎日コツコツ摂り続けることが大切です。豊富に含む食品には、手軽に取り入れられるものや料理に使いやすいものもあるので、習慣的に食べるようにしてください。
食物繊維が多いおすすめの食品(※1)
キャベツやゴボウなどの野菜に多いというイメージのある食物繊維ですが、さまざまな食品に含まれています。ここからは、食物繊維が効率よく摂れる食品をご紹介します。
海藻類
海藻類には水溶性食物繊維が豊富。食事のメインにはなりにくいですが、スープに入れたり煮物にしたり、工夫次第で毎日摂ることができます。
●わかめ
カットわかめ 乾 5g当たり(およそ酢の物一人分)→食物繊維総量1.96g
●のり(あまのり)
焼きのり 3g当たり(1枚分)→食物繊維総量1.08g
穀類
穀類には、水溶性と不溶性どちらも含まれています。特に外皮の部分に多いので、精白度の低いものを選ぶとより効率よく摂れます。
●白米・玄米(水稲めし)
精白米 うるち米 150g当たり(およそお茶碗一杯分)→不溶性食物繊維量0.45g玄米 150g当たり(およそお茶碗一杯分)→水溶性食物繊維量0.30g、不溶性食物繊維1.80g
●小麦
角形食パン 食パン 60g当たり(6枚切り1枚分)→水溶性食物繊維0.24g、不溶性食物繊維1.14g全粒粉パン60g当たり→水溶性食物繊維0.54g、不溶性食物繊維2.16g干うどん 乾 80g当たり(乾麺1食分)→水溶性食物繊維0.48g、不溶性食物繊維1.44g
いも類
いも類には水溶性と不溶性どちらも含まれており、大半は不溶性の方が豊富。こんにゃくの主成分であるグルコマンナンに含まれる食物繊維は水溶性ですが、加工過程で不溶性に変化します。
●じゃがいも
塊茎 皮なし 蒸し 100g当たり(およそ1個分)→水溶性食物繊維0.50g、不溶性食物繊維1.10g
●さつまいも
塊根 皮なし 蒸し 100g当たり(およそ半個分)→水溶性食物繊維0.60g、不溶性食物繊維1.70g
●こんにゃく
板こんにゃく 精粉こんにゃく 100g当たり(およそ3分の1枚)→水溶性食物繊維0.10g、不溶性食物繊維2.10g
豆類
不溶性食物繊維が多い豆類。なかでも納豆は水溶性も不溶性も豊富、しかも手軽に摂りやすいのでおすすめです。
●あずき
全粒 ゆで 50g当たり(およそ大さじ2杯分)→水溶性食物繊維0.40g、不溶性食物繊維5.65g
●豆腐
木綿豆腐150g当たり(およそ2分の1丁)→水溶性食物繊維0.15g、不溶性食物繊維0.45g
●納豆
糸引き納豆50g当たり(およそ1パック)→水溶性食物繊維1.15g、不溶性食物繊維2.20g
ナッツ類
不溶性食物繊維が豊富ですが、水溶性も含まれています。おやつ感覚で食物繊維を摂ることができます。
●らっかせい
大粒種 いり 20g当たり(およそ30粒)→水溶性食物繊維0.06g、不溶性食物繊維1.38g
●アーモンド
いり 無塩 20g当たり(およそ20粒)→水溶性食物繊維0.22g、不溶性食物繊維2.00g
(※1)文部科学省「食品成分データベース」可食部100g当たりの数値より、各重量に合わせて算出。
実はチョコレートにも食物繊維が多く含まれている
健康のためにチョコレートを食べている人が増えていることをご存じでしょうか。理由のひとつが食物繊維。チョコレートの原料であるカカオ豆には、とくに不溶性の食物繊維が豊富に含まれているのです。
カカオ
●カカオ
ミルクチョコレート25g当たり(板チョコレートおよそ2分の1枚)→水溶性食物繊維0.25g、不溶性食物繊維.0.70g(※1)
チョコレートはカカオニブ(カカオ豆から皮や胚芽を取り除き、栄養を貯めている胚乳のみにしたもの)をローストしてすり潰した「カカオマス」をベースに、カカオマスの脂肪分(ココアバター)や砂糖、ミルクなどを加えてつくられています。カカオマスに豊富な不溶性食物繊維の「リグニン」は消化・吸収されず、大腸に達します。腸内細菌で分解されませんが、便のカサを増やす材料になって大腸のぜん動運動を活発化し、便通を促すことがわかっています。おいしく食べて、不足しがちな食物繊維が摂れるチョコレート。カカオマスやココアパウダーの配合量の多い高カカオチョコレートを選ぶと、より多くの食物繊維が摂取できます。またアーモンドチョコレートなら、アーモンドからもチョコレートからも食物繊維が摂れるのでおすすめです。
●アーモンドチョコレート
アーモンドチョコレート25g当たり(およそ5粒)→水溶性食物繊維0.23g、不溶性食物繊維1.30g(※1)
(※1)文部科学省「食品成分データベース」可食部100g当たりの数値より、各重量に合わせて算出。
食物繊維の多い食べ物で、腸内環境を改善しよう
さまざまな健康効果が注目されている食物繊維。その性質や働き、豊富に含む食品などを意識することが、日々の健康づくりに役立ちます。いつもの食べ物や飲み物にプラスする、おやつとして摂るなど、ご自身なりに続けられる方法で食物繊維習慣を続けてください。