からだにいいこと
カカオプロテインとは?その効果は?
2025/10/10

便秘や腸内環境の乱れが気になる方に朗報です。実は、チョコレートに含まれる「カカオプロテイン」という成分が、便秘解消・便通改善に役立つことが最新の研究で明らかになっています。 カカオといえば、カカオポリフェノールの抗酸化作用が広く知られていますが、それだけではありません。カカオに含まれる難消化性タンパク質、カカオプロテインが、腸に届いて働き、便のかさを増やし、腸内細菌「フィーカリバクテリウム」を増やすことで、お腹の調子を整える可能性があるのです。 本記事では、カカオプロテインとは何か、その健康効果や腸内環境への影響について、最新の研究に基づいて詳しく解説します。
目 次
カカオプロテインとは?
カカオプロテインは、その名の通り、チョコレートの原料であるカカオに含まれるタンパク質の一種です。特長は「難消化性」という点。これは、小腸でほとんど消化されず、大腸まで届くという意味です。
普通のタンパク質は、小腸でアミノ酸に分解されて吸収されますが、カカオプロテインは消化されにくく、そのまま大腸まで届きます。そこで便の材料になったり、腸内細菌のエサになったりして、腸の働きをサポートするのです。
このカカオプロテイン、実は世界で初めての抽出に成功したのは、帝京大学と株式会社明治の共同研究チーム。アルカリ水溶液を使った方法で、カカオから取り出すことに成功しました。
発見のきっかけは、大規模チョコレート研究から
カカオプロテイン発見のきっかけは、2014年(平成26年)に行われた大規模なチョコレート摂取研究です。愛知県蒲郡市・愛知学院大学・株式会社明治の共同で行われたこの試験では、カカオポリフェノールが多い高カカオチョコレートを4週間摂取して、血圧の変化を確認しました。その結果、高カカオチョコレートの摂取には血圧を下げたり、HDL(善玉)コレステロールを上げる効果が確認されました。
さらに、試験後、被験者から「便通が良くなった」という声が多く寄せられたのです。
これは、カカオポリフェノールの既知の健康効果だけでは説明できません。そして、新たに「カカオプロテイン」という機能性成分が存在し、腸に働きかけている可能性が浮かび上がったのです。(※1)
※1 Ito H, et al. 2025. T. Biosci Microbiota Food Health 44: 196-204(帝京大学、株式会社 明治により、平成27年に行われた便通改善に関する共同研究「チョコレート摂取による腸内環境改善の探索的研究」)
カカオプロテインの健康効果とは
カカオプロテインに期待される主な健康機能としては便通の改善があり、排便回数の増加、便量の増加、腸内フローラが変化し腸内環境を整える作用をもたらすと考えられています。

カカオプロテインによる便通改善とは
腸内細菌の作用によって腸の動き(ぜん動運動)が促されることで、便通が改善することはよく知られていました。
2015年(平成27年)に実施した帝京大学と明治の共同研究では、高カカオチョコレートとホワイトチョコレートを摂取した際の排便量を比べたところ、高カカオチョコレートを摂取したグループにおいて、摂取2週後には摂取前の2倍以上に排便量が増加する傾向が見られました。
また、人工消化実験において、牛乳のタンパク質「カゼイン」の消化率が100%であるのに対し、「大豆たんぱく質」が51.2%、「カカオプロテイン」が33.3%という結果が出ました。この結果により、カカオプロテインの一部が難消化性の性質を持っていることが分かりました。
小腸で消化吸収されなかったカカオプロテインは、大腸まで届き、便のもととなり、便のかさを増やしたと考えられます。腸の動きが促されることだけではなく、便のかさが増すことで便通が改善することも分かってきました。
これらの結果から、カカオプロテインの消化されにくい性質(難消化性)には便通改善の働きが期待されます。高カカオチョコレートを摂取することで便秘が解消できれば、手軽に取り組むことができるのでうれしいですね。
カカオプロテインは腸内環境を整える「長寿菌」を増やす
さらに嬉しいのが、カカオプロテインが腸内細菌のバランスにも良い影響を与えること。
特に増えるのが「フィーカリバクテリウム」という菌です。
高カカオチョコレートを摂取したグループでは、摂取開始から2週間で腸内フローラにおけるフィーカリバクテリウム属の占有率が有意に上昇することが確認されました。その占有率が約2倍に達する一方、ホワイトチョコレートを食べたグループでは、摂取2週後においてもほとんど変化が見られませんでした。
【高カカオチョコレートの継続摂取でフィーカリバクテリウムが有意に増加】

フィーカリバクテリウムは酪酸をたくさん作り出すことで知られています。酪酸は大腸のエネルギー源になり、腸のぜん動運動を活発にすることで便通を改善するだけでなく、大腸がんの抑制、炎症性腸疾患の予防、糖尿病予防など、多方面での健康効果が期待されています。
フィーカリバクテリウムは、健康な高齢者の腸内に多く存在することから「長寿菌」とも呼ばれています。つまりカカオプロテインを摂ることは、腸だけでなく全身の健康にもつながる可能性があるのです。
日常にどう取り入れる?
カカオプロテインはカカオ由来の成分なので、高カカオチョコレートが手軽な摂取方法です。共同研究においては、カカオ分72%の高カカオチョコレートを1日25g摂取して検証しました。
例えば、高カカオチョコをおやつにしたり、仕事の合間のブレイクタイムにコーヒーと一緒に楽しみながら摂取する方法もありますね。
ちなみに、ホワイトチョコにはカカオプロテインは含まれておらず、ミルクチョコレートもカカオプロテインは少ないため、カカオの割合が高い、高カカオチョコレートを選びましょう。

まとめ
チョコレートに含まれるカカオプロテインは、“腸活”に大きな可能性を秘めた成分です。
難消化性という特性を活かし、便のかさを増やして自然な排便を促すほか、長寿菌とも呼ばれるフィーカリバクテリウムの増加を通じて、腸内フローラを整える働きも注目されています。
高カカオチョコレートを美味しく楽しみながら、腸内から健康を目指す──そんな新しいライフスタイルを、今日から始めてみませんか?