OLL1073R-1株とOLS3059株で発酵したヨーグルトの継続摂取者は、口腔内の抗菌物質が多く、大腸がんとの関連が知られる病原菌が少なく、風邪罹患リスクが低いことを確認 ~第68回秋季日本歯周病学会学術大会で発表~
株式会社 明治(代表取締役社長:八尾 文二郎)と神奈川歯科大学副学長環境病理学 槻木 恵一教授および神奈川歯科大学短期大学部歯科衛生学科 山本 裕子准教授は、高齢者施設の職員を対象とした観察研究において、乳酸菌Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus OLL1073R-1(以下、OLL1073R-1株)とStreptococcus thermophilus OLS3059(以下、OLS3059株)で発酵したヨーグルトの継続摂取者は、非摂取者より唾液中の抗菌物質が多く、大腸がんとの関連が知られるFusobacterium nucleatum ssp. animalis※1の舌苔※2中の割合が低く、風邪症候群への罹患回数が少ないことを確認しました。
本研究成果は2025年10月17日に第68回秋季日本歯周病学会学術大会にて発表しました。
研究成果の概要
高齢者施設の職員を対象とした観察研究において、
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               OLL1073R-1株とOLS3059株で発酵したヨーグルトの継続摂取者は非摂取者と比べて、唾液中のβ-defensin-2※3、β-defensin-3※3の分泌量が多く、大腸がんとの関連が知られるF. nucleatum ssp. animalisの舌苔中の割合が低いことを確認しました。
 - ② 
               OLL1073R-1株とOLS3059株で発酵したヨーグルトの継続摂取者は非摂取者と比べて、1年間の風邪症候群への罹患回数が少ないことを確認しました。
 - ③ 
               ベイジアンネットワーク※4を用いた解析により、OLL1073R-1株とOLS3059株で発酵したヨーグルトの継続摂取は、唾液中のβ-defensin-2およびβ-defensin-3分泌量の増加、風邪症候群への罹患回数の減少に寄与することが示唆されました。
 
研究成果の活用
口腔は外界と直接接触するため、口腔の免疫機能は感染予防にとって非常に重要です。また、口腔環境は口腔のみならず全身の健康に影響することが知られています※5。本研究成果により、OLL1073R-1株とOLS3059株で発酵したヨーグルトの継続摂取は口腔内の抗菌物質を増やし、呼吸器感染のリスクを低減することが示唆されました。また、F. nucleatum ssp. animalisを減少させるなど口腔環境を改善し、全身の健康維持に寄与する可能性が示唆されました。本ヨーグルトについて、これまでに多くの免疫調節作用が明らかとなっており※6-8、体調管理に有効な食品として今後もさらに研究を深耕してまいります。
研究の目的
当社はこれまでに、OLL1073R-1株とOLS3059株で発酵したヨーグルトがさまざまな免疫調節作用を示すことを確認しています。一方、全身の健康と密接に関連する口腔環境への影響については、充分には分かっていませんでした。そこで、OLL1073R-1株とOLS3059株で発酵したヨーグルトの継続摂取が口腔環境および全身の健康に与える影響を解明することを目的に、本研究に取り組みました。
※1Fusobacterium nucleatum:口腔内に常在する歯周病関連菌で、大腸がんとの関連が知られています(Shimomura Y, et al. Microbiol Spectr. 2023; 11(6): e0512322.)。なかでも、F. nucleatum ssp. animalisは大腸がん組織から高頻度で検出されることが報告されています(Ye X, et al. Cancer Prev Res (Phila). 2017; 10(7): 398-409.)。
※2舌苔:舌の表面に付着する白い苔状のもので、細菌や食べかすなどで構成されます。
※3β-defensin:抗菌、抗ウイルス作用をもつ物質で、生体防御にとって重要な役割を担います。
※4ベイジアンネットワーク:データの因果関係を分析する手法の1つです。
※5出典:Rajasekaran JJ, et al. Microorganisms. 2024; 12(9): 1797.
※6出典:Makino S, et al. Br J Nutr. 2010; 104(7): 998-1006.
※7出典:Yamamoto Y, et al. Acta Odontol Scand. 2019; 77(7): 517-524.
※8出典:Hemmi J, et al. Biosci Microbiota Food Health. 2023; 42(1): 73-80.
発表内容
タイトル
ヨーグルト摂取が唾液中抗菌物質に与える影響の解析
方法
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               高齢者施設の職員を対象とした観察研究を実施しました。
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               OLL1073R-1株とOLS3059株で発酵したヨーグルトを毎日1本(112g)、1年以上摂取している方40名(ヨーグルト群)と、摂取していない方13名(対照群)を対象としました。
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               唾液と舌苔を採取し、唾液中の抗菌物質の分泌速度※9および舌苔細菌叢を解析しました。また、過去1年間の風邪症候群への罹患回数を調査しました。
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               ベイジアンネットワークを用いた解析で、各データの因果関係を推定しました。
 
結果
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               ヨーグルト群は対照群と比べて唾液中のβ-defensin-2、β-defensin-3の分泌速度が有意に高値でした(図1)。また、舌苔中の F. nucleatum ssp. animalisの割合が有意に低値でした(図2)。
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               ヨーグルト群は対照群と比べて1年間の風邪症候群への罹患回数が有意に低値でした(図3)。
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               ベイジアンネットワークを用いた解析の結果、OLL1073R-1株とOLS3059株で発酵したヨーグルトの継続摂取は、唾液中のβ-defensin-2およびβ-defensin-3分泌速度の増加、風邪症候群への罹患回数の減少に寄与すると推定されました。
 
結論
OLL1073R-1株とOLS3059株で発酵したヨーグルトの継続摂取は口腔内の抗菌物質を増やし、呼吸器感染症を減らすと共に、口腔環境を改善することで全身の健康維持に寄与する可能性が示唆されました。
              ※9分泌速度:β-defensinの唾液中濃度(pg/mL)に唾液分泌速度(mL/分)を乗じた値(pg/分)です。
※10p値:0.05よりも小さいと統計的に有意であると判断しました。Mann-WhitneyのU検定で解析しました。