4次元嚥下シミュレータ「Swallow Vision(R)」と気流シミュレーションを用いて食品の窒息リスクを定量的に予測する世界初の方法を提案 ~9月9日 日本摂食嚥下リハビリテーション学会にて発表~

武蔵野赤十字病院(院長:泉 並木)と株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)は、4次元嚥下シミュレータ「Swallow Vision®」と気流シミュレーションを用いて、食品がに詰まった状態を可視化し、世界で初めて窒息リスクを定量的に評価して予測する方法を見出しました。

この研究成果について、2018年9月8日〜9日に開催された「第24回日本摂食嚥下リハビリテーション学会」で発表いたしました。

演題名:

食品の窒息リスクの事前予測法の検討 ─気流シミュレーションを使った吸入空気量の推計─

概要:

  1. (1).
    窒息リスクを予測する必要性

    食品による窒息事故は、摂食機能が未発達である乳幼児と、摂食機能が低下した高齢者に多いことが知られています。一方で窒息事故は、倫理上の問題から再現実験ができないため、メカニズムの解明には多くの制約があります。

    そのため食品による窒息事故の研究は、これまで事故が起きた食品の頻度と重篤度を調査し、当該食品の物理特性を分析する手法がとられてきました。

    しかし、この手法では、食品の窒息リスクを予測することは困難です。そこで武蔵野赤十字病院と当社は、食品の窒息リスクを定量的に評価して予測するために、共同開発した嚥下と誤嚥のメカニズム解明のための世界初の4次元嚥下コンピュータシミュレーションシステムであるSwallow Vision®と気流シミュレーションを用いて、食品の特性に応じて変化する窒息状態を可視化し、窒息リスクを定量的に評価して予測する方法を研究してきました。

  2. (2).
    発表した世界初の窒息リスクの予測方法
    1. Swallow Vision®による閉塞状態の可視化と、位置・形状データの抽出

      窒息に関わる食品側の特性としては、大きさや形、硬さ、摩擦係数などが指摘されています。今回の発表では大きさの異なる球形のモデル食品を用い、Swallow Vision®によって、食品の特性に応じて変化する閉塞の位置や、閉塞によって変形した生体と食品の状態を可視化し、そのデータを抽出しました。

    2. 気流シミュレーションによる吸気流量の推計

      Swallow Vision®によって得られた位置と形状のデータを基に、食品によって閉塞した気道を通して空気を吸入するシミュレーションを行います(図1)。これにより、図2のように閉塞状態における吸気流量を数値化して推計でき、吸気流量を基にした窒息リスクの定量評価と予測が可能となります。

武蔵野赤十字病院と当社は、本研究を通して得られる知見を基に、全てのお客さまにとってより安全な商品の提供、および食品による事故を未然に防ぐための情報提供に努めてまいります。

写真:図1.Swallow Vision®による閉塞状態の予測(上)と気流シミュレーションによる吸気流量推計(下)
グラフ:図2.模擬食品の大きさと閉塞時の吸気流量のグラフ画像