食品の飲み込みやすさを初めて指標化 口腔から咽頭(のど)の摩擦と潤滑を考慮した新しい計測装置「F-bology Analyzer(R)」を開発 ~9月8日 日本摂食嚥下リハビリテーション学会にて発表~

武蔵野赤十字病院(院長:泉 並木)と株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)は、口腔から咽頭の「摩擦と潤滑(以下、トライボロジー特性)」を考慮した新しい計測装置「F-bology Analyzer®」を開発し、食品の計測値(物理量)と、実際に飲み込んだときの官能評価値との間に相関を確認しました。この装置の活用により、食品の飲み込みやすさなどを指標化するとともに、より付加価値が高い食品の設計と開発などをしていく予定です。

この研究成果を、2018年9月8日〜9日に開催された「第24回日本摂食嚥下リハビリテーション学会」で発表いたしました。

【内容】

演題名:

官能評価の物理表現 ─F-bology Analyzer®の計測値と官能評価の関係─

概要:

  1. 1.

    新しい物理量計測装置「F-bology Analyzer®」の開発
    食品は、咀嚼から嚥下に至る過程で、粉砕され唾液と混和されて物性が変わります。刻一刻と変化する食品の物性は、口腔から咽頭の粘膜で知覚され感覚情報として大脳に伝えられていることが知られています。すなわち、食品の飲み込みやすさには、食品の物性だけでなく、口腔から咽頭のトライボロジー特性が関係しています。しかし、これまで嚥下時のトライボロジー特性を考慮した食品物性の計測装置は開発されておらず、トライボロジー特性を考慮した食品の計測値(物理量)と官能評価値との関係を明らかにした研究はありませんでした。

    新たに開発した「F-bology Analyzer®」は、各種センサーと高速度カメラを用いて、模擬粘膜シート上に流した流動性を有する食品の「広がり度合い」「流れる速さ」「厚み」などさまざまな動的特性を計測することができます。模擬シートの表面性状は、口腔や咽頭の摩擦や潤滑度(乾燥度)に応じて可変可能であり、「口が渇いた状態」も再現できるようになっています。

    図:物理量計測装置「F-bology Analyzer®」の仕組み
  2. 2.

    官能評価との関連性
    ドリンクヨーグルト嚥下時の官能評価値を、F-bology Analyzer®の計測値(物理量)と比較したところ、以下の図の通り、「広がり度合い」「流れる速さ」「厚み」などのF-bology Analyzer®計測値と相関する傾向が見られました。このことから、F-bolog Analyzer®の計測値は、飲み込みやすさについての新しい評価指標となりうることが示唆されました。

    グラフ:官能評価値結果とF-bology Analyzer®の計測値(物理量)を比較したグラフ画像
  3. 3.

    今後の展開
    当社では、この独自に開発した装置を活用して、飲みやすい食感、心地よい食感などを評価するための新しい指標(物理量)を提案するとともに、より価値が高い食品の設計と開発、またさまざまな食シーンや個々のお客さまに合わせたテーラーメイド食品の開発を実現したいと考えています。