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株式会社明治

チョコレート摂取による健康効果に関する実証研究 最終報告

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チョコレート摂取による健康効果に関する実証研究

日本初(アジア系人種でも初)の大規模調査!

今まで、チョコレートやココアに含まれるカカオポリフェノールは、活性酸素を抑える働きがあることが知られ、生活習慣病に有効であるとの多くの報告がありました。コレステロール値の改善、血圧低下および血管内皮機能の改善、心疾患リスクの低減、インスリン抵抗性の改善といった多岐にわたる臨床試験結果が得られていますが、日本人でのデータは限定的といわざるえない状態でした。

このような状況を踏まえて行われた今回の実証研究では、日本人を対象としたチョコレートを用いた初の大規模調査を行いました。

血圧低下、HDL(善玉)コレステロール値上昇などの効果に
加え、BDNF(脳由来神経栄養因子)の上昇や、炎症指標と酸化ストレス指標の低下を新たに確認しました。

研究内容

チョコレート摂取による
健康効果に関する実証研究

ここが再生エリアになります

愛知学院大学 大澤教授のインタビュー

蒲郡市内外の45~69歳までの347人(男性123人、女性224人)に、4週間、カカオポリフェノールを多く含むチョコレート*を毎日一定量(1日5gを5枚、約150 kcal)摂取していただき、摂取前後の血圧測定や血液検査などで身体の状態の変化を検証しました。この実証研究は、愛知県蒲郡市・愛知学院大学・株式会社 明治の産官学の共同で実施いたしました。検査は、蒲郡市民病院で行われ、チョコレートは、平成26年6月中旬から7月中旬に召し上がって頂きました。

※当実証研究ではカカオポリフェノールが多く含まれているチョコレートとして、カカオ分72%のチョコレートを使用

  • 最終報告
  • 中間報告

チョコレートの摂取により、アルツハイマー型認知症や記憶・学習などの認知機能と関連性が報告されているBDNFが増えることがわかりました。

脳細胞を増やすために必要とされているBDNFが上昇しました。

中間報告では、チョコレートの摂取により「精神的にも、肉体的にも活動的になる」(SF-36®)ことがわかりました。その結果に着目し、さらに追加分析を行ったところ、チョコレートの摂取前後で、脳細胞の増加に必要とされているBDNF(Brain-derived neurotrophic factor:脳由来神経栄養因子)も有意に上昇することがわかりました(図1)。ただし、BDNFの上昇と SF-36®の数値の上昇に相関性は認められませんでした。

図1 BDNFの測定結果

図1 BDNFの測定結果

チョコレートの摂取前後で被験者のBDNFが有意に上昇することがわかりました。

BDNFの特徴や機能とは?

BDNFは脳にとって重要な栄養分。
しかし、加齢とともに減っていく。

BDNFは、神経細胞の発生や成長、維持や再生を促進させる神経栄養因子(分泌性タンパク質)の一種で、 1982年に初めてブタの脳から精製されました。BDNFは海馬などの中枢神経系に多く存在しますが、血液の中にも存在しています。血液中のBDNFは、血液脳関門を通過するといわれています(※1)。

また、BDNFは、ニューロンの産生や神経突起の伸長促進、神経伝達物質の合成促進に関係するなど、脳にとって重要な栄養分と考えられています。一方、65歳以上では加齢とともに減少する(※2)ことも知られています(図2)。

図2 加齢とともに減少する血清中の BDNF

Sex and age differences in serum BDNF concentration. Mean and standard error of serum BDNF levels are shown for each 5-year increment in age. Serum BDNF decreased with aging in men (blue bars) and women (pink bars; P < 0.001) and women showed higher BDNF levels than men
※1 九州大学基幹教育院九州大学キャンパスライフ・健康支援センター熊谷秋三 ; 認知機能、抗うつ作用と脳由来神経栄養因子(BDNF)~運動効果から~ . FOOD STYLE Vol.17 No.4 / 2013
※2 Shimada H, Makizako H, Doi T, Yoshida D, Tsutsumimoto K, Anan Y, Uemura K, Lee S, Park H, Suzuki T: A large, cross-sectional observational study of serum BDNF, cognitive function, and mild cognitive impairment in the elderly.

BDNFを制限すると、記憶や学習能力が低下する。
うつ病やアルツハイマー型認知症との関連性も。

BDNFは、脳内で記憶形成を担う海馬に高濃度で存在しています(※3)。たとえば、脳内でBDNFの発現を約半分に減らしたノックアウトマウスの実験では、学習能力が低下することが示されています(※4)。また、脳内のBDNFに関するシグナル伝達系を不活性化すると、記憶や学習障害を引き起こすこともわかっています(※5)。これらの報告から、BDNFは海馬で行われる記憶や学習について密接な関係があると考えられます(※6)。さらに、いくつかの研究でうつ病(図3)やアルツハイマー型認知症(図4)と関連性があることもわかってきています。

図3 血清BDNF濃度とHAMD得点

うつ病評価尺度(HAMD)と血清BDNF濃度との間に有意な負の相関が認められています(※7)。

図4 認知機能検査の結果
BDNFと認知症を診断するテストのスコア(MMSEテスト)との間で正の相関があることが報告されています(※8)。

※3 Hofer M, Pagliusi SR, Hohn A, Leibrock J, Barde YA (1990): Regional distribution of brain-derived neurotrophic factor mRNA in the adult mouse brain. EMBO J, 9:2459-2464.など
※4 Linnarsson S, Björklund A, Ernfors P (1997): Learning deficit in BDNF mutant mice. Eur J Neurosci, 9:2581-2587.
※5 Mu JS, Li WP, Yao ZB, Zhou XF (1999): Deprivation of endogenous brain-derived neurotrophic factor results in impairment of spatial learning and memory in adult rats. Brain Res, 835:259-265.
※6 野藤悠 , 諏訪雅貴 , 佐々木悠 , 熊谷秋三 ; 脳由来神経栄養因子(BDNF)の役割と運動の影響 . 健康科 Vol.31, 2009年 3月
※7 吉村玲児 ,杉田篤子 ,堀輝 ,中野和歌子 ,林健司 ,香月あすか ,上田展久 ,中村純 ,リア,マ.,アストロサイト ; 神経栄養因子 BDNF仮説の検証 . 精神神經學雜誌 = Psychiatria et neurologia Japonica 2010, 112, 982-985.
*同論文によると、健常者(118例)と大うつ病性障害患者(136例)を対象に血清BDNF濃度を測定したところ、「大うつ病性障害患者では健常者と比較して有意に低下」していて、「抑うつ状態が強いほど、血清BDNF濃度は低値を示した」と報告しています。
※8 C. Laske, E. Stransky, T. Leyhe, G. W.Eschweiler, A. Wittorf, E. Richartz, M. Bartels, G. Buchkremer, and K. Schott; Stage-dependent BDNF serum concentrations in Alzheimer’s disease. Journal of Neural Transmission 2006, 113, 1217-24.
*同論文によると、アルツハイマー型認知症の「経過中に認められるBDNFの減少は、認知症の重症度と相関する。 BDNFの減少は、アミロイドβの蓄積増加と相まって、細胞への栄養補給の欠如を招き、結果として、アルツハイマー病脳の特定領域における変性の進行に寄与する可能性がある」と報告しています。

認知症予防の可能性から、
BDNFへの注目度が上昇中。

脳は、神経細胞のかたまりです。その神経細胞が毎日活動することによって、私たちは記憶を呼び戻したり、色々なことを判断したりすることができます。そうした脳の活動をさまざまな物質が支えていますが、その中でも代表的なものがBDNFです。
BDNFは特に、脳の中で記憶を司る海馬に多く含まれていて、記憶を司る神経細胞の活動を促進させていると考えられています。
このようにBDNFは、脳の活動を下支えする非常に重要な物質ですが、認知症を予防する可能性が多くの研究で示唆され、昨今、特に注目度が高まっているといってよいでしょう。

桜美林大学加齢・発達研究所長 大学院教授(老年学) 鈴木隆雄氏

うつ病や認知症で病院にかかる人が大幅に増えている。
10年後には、約5人に1人が認知症になるとのデータも。

厚生労働省によれば、精神疾患で医療機関にかかっている患者数は近年大幅に増加し、2011(平成23)年にはその数が320万人にものぼりました(図5)。最も多いのはうつ病で、続いて統合失調症、不安障害、認知症の順となっています。特に、うつ病や認知症は近年著しく増えています。
また、認知症の人の数全体では、2012(平成24)年で約 462万人となっており、65歳以上高齢者の約7人に1人と推計されます(※9)。その数は10年後には700万人前後に達し、65歳以上の約5人に1人にまで上昇する見込みです。また、18歳以上、65歳未満で発症する若年性認知症も、全国で3万7千800人と推計され、その内25.4%がアルツハイマー型認知症とされています(※10)。

図5 精神疾患の患者数(医療機関に受診する患者の疾病別内訳)

出典:厚生労働省ホームページ http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/data.html

※9 認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)
※10 若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要」(平成 21年)
参考:厚生労働省ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000072246.html
http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=146269&name=2r98520000033t9f_1.pdf
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12304500-Roukenkyoku-Ninchishougyakutaiboushitaisakusuishinshitsu/02_1.pdf

BDNFを増やすためには?

BDNFは運動によって上昇する。
抗酸化物質にも
脳内BDNFを上昇させる可能性あり。

認知症予防が期待される、脳の栄養分ともいわれるBDNFを増やすことはできるのでしょうか。いくつかの臨床試験の結果、適度な運動はBDNFを有意に増加させるとともに、記憶や学習などのパフォーマンスを高めることがわかりました(※11)。また、ラットを用いた実験(図6)では、抗酸化物質を投与後に運動負荷をかけたところ、運動で生じる酸化ストレスが低減され、海馬でのBDNF発現を促進する環境を構築できる可能性があることもわかっています(※12)。

図6 高強度運動時に抗酸化物質(PBN)を投与すると、
BDNFの発現が上昇酸化状態とBDNF発現量には、負の相関性がある

※11 Szuhany, K. L.; Bugatti, M.; Otto, M. W., A meta-analytic review of the effects of exercise on brain-derived neurotrophic factor. J Psychiatr Res 2015, 60, 56-64.
※12 饗場千夏 , 韓宝宝 , 木内政孝 , 安藤大輔 , 山北満哉 , 小山勝弘 ; 高強度運動時における抗酸化物質投与が海馬脳由来神経栄養因子(BDNF)発現に及ぼす影響 . 体力科学第 61巻第 1号 111-117(2012)

チョコレートの摂取で、脳血流量が増える。

チョコレートなどのカカオポリフェノールを多く含むカカオ製品を摂取すると、脳血流量が上昇することもわかっています。また、脳血流量の上昇により、認知機能テストのスコアが上昇することも報告されています(※13)。これらの調査からは、カカオ製品の摂取によって認知機能を維持できる可能性がみてとれます。実際、チョコレートを多く摂取している人は、認知機能テストの結果がよいという報告もあがっています(※14)。

※13 Brickman, A. M.; Khan, U. A.; Provenzano, F. A.; Yeung, L. K.; Suzuki, W.; Schroeter, H.; Wall, M.; Sloan, R. P.; Small,
S. A., Enhancing dentate gyrus function with dietary flavanols improves cognition in older adults. Nat Neurosci 2014, 17, 1798-803.
※14 Nurk, E.; Refsum, H.; Drevon, C. A.; Tell, G. S.; Nygaard, H. A.; Engedal, K.; Smith, A. D., Intake of flavonoid-rich wine, tea, and chocolate by elderly men and women is associated with better cognitive test performance. J Nutr 139, 120-7, (2009).

今回はじめて、チョコレートに認知症予防の
可能性が認められた。

これまで、運動したり、難しいことを考えたりするとBDNFが増えるのではないかといわれてきました。しかし、今回の実証研究では、チョコレートに含まれるカカオの成分であるポリフェノールにBDNFを増やす可能性があることが初めて分かりました。これは、最終的には認知症を予防できる可能性があることを示すもので、とても大きな期待が持てます。

桜美林大学加齢・発達研究所長 大学院教授(老年学) 鈴木隆雄氏

【まとめ】BDNFとは
BDNF(脳由来神経栄養因子)について、これまでの研究によって報告されていること

チョコレートに含まれる
カカオポリフェノールにより、動脈硬化につながる、炎症や酸化ストレスが低下しました。

動脈硬化のリスクを下げる効果が認められました。

今回の実証研究では、動脈硬化などの検査で指標とされる炎症指標(hs-CRP)と酸化ストレス指標(8-OHdG)の測定も行われました(図7)。その結果、被験者のうち同指標の値が大きい順に上から4分の1までの人において、チョコレートの摂取前後に炎症指標と酸化ストレス指標が有意に低下することを確認しました。なお、被験者全員では有意差は確認されませんでした。
 
血管内皮機能の低下は、動脈硬化を引き起こす要因と考えられています。今回の実証研究では、血管内皮機能の低下リスクが高いと思われる上位4分の1の人々において、チョコレートに含まれる抗酸化物質、カカオポリフェノールに動脈硬化のリスクを低減させる効果があることがわかりました。

図7 炎症指標 (hs-CRP)と酸化ストレス指標 (8-OHdG) の測定・分析結果

8-OHdG n=86、hs-CRP n=87, a)wilcoxonの符号付順位検定 8-OHdGは、尿中のクレアチニン量で補正した値を示している。

炎症指標(hs-CRP)、酸化ストレス指標(8-OHdG)とは

CRPとは、体の組織で炎症が起こると血液中に放出されるタンパク質です。健康診断でも指標として活用され、怪我や風邪、感染症をはじめ、さまざまな炎症性疾患で高くなることが知られています。動脈硬化では、血管内で慢性的な炎症が起こっていると考えられ、血中のCRPも増加することがわかっています。なお、動脈硬化でのCRPの増加は微量であるため、それを測定する場合は、一般的にhs-CRP(高感度CRP)が指標として用いられています。

8-OHdG(8-hydroxy-2’-deoxyguanosine:8-ヒドロキシ -2’-デオキシグアノシン)は、DNAを構成する塩基の一つデオキシグアノシン(dG)が活性酸素などによって酸化された際に生じる物質です。8-OHdGは、代謝されずに血液を経て尿中に排泄されるため、DNAの酸化による損傷度合いを知ることができます。

中間報告以降にわかったこと

BDNFの上昇が確認されたのは画期的なこと。今回の大規模研究は
“期待すべき第一歩”になるでしょう。

BDNFとは、脳神経の産生に関係したとても重要なタンパク質で、「脳の栄養」とも言われています。うつ病やアルツハイマー型認知症の患者では、BDNFが不足することが知られています。また、記憶や学習などの認知機能を促進させるという報告もあります。

今回の大規模調査では、最終分析の結果、チョコレートの摂取によって、このBDNFが増加することが確認されました。チョコレートで確認されたのは初めてのことであり、しかも、このような身近な食べものでBDNFが上昇することがわかったのは、高ストレス社会あるいは超高齢社会にあって非常に画期的なことです。

愛知学院大学 心身科学部 教授 大澤俊彦氏

今後日本では、高齢社会が進行するにつれて、認知症の人がますます増加していくと考えらえています。その認知症を予防するためには、さまざまな対策が必要ですが、なかでも一般の人が日常的にできて、しかも重要なことは、よく運動し、認知症になりにくいと考えられている食べ物をとることです。今回、チョコレートの摂取で認知症を予防する可能性が示唆されましたが、それによって、食べ物の選択肢が広がり、しかも食べやすいものですので、とても好ましい結果といえます。

今回の実証研究は、300人以上の一般市民を対象としたものでしたが、このような大規模研究が産官学で行われた点は評価できます。また、高濃度のカカオポリフェノールを摂取した結果、血清中のBDNF濃度が上昇したり、認知機能が高まったりするという「前向き研究」である点も評価できます。通常、このような研究が行われ、論文が発表されると、さらにそのメカニズムを解明する研究が追随して行われ科学的根拠が構築されていくものです。そういう意味でも、今回の大規模研究は、“期待すべき第一歩”といえましょう。

桜美林大学加齢・発達研究所長 大学院教授(老年学) 鈴木隆雄氏

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