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カカオプロテインで便通改善 追加研究

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レポート2 新発見! カカオプロテインで便通改善

カカオ由来の新しい機能成分「カカオプロテイン」に注目!

カカオに含まれる成分のうち、ポリフェノールの健康効果に関する研究結果は数多くありました。一方、ポリフェノールと並ぶカカオの機能性成分であるカカオプロテインに関する効果は知られていませんでした。

平成26年に「チョコレート摂取による健康機能に関する実証研究」が行われた際、実験後のアンケートで十数名の被験者の方から「便通が改善した」という、カカオポリフェノールでは説明できない効果に関する報告がありました。

そこで今回、カカオ豆に含まれるタンパク質であるカカオプロテインに注目し、新たに「便通改善」効果を確認する研究を行いました。

研究内容

チョコレート摂取による
腸内環境改善効果の探索的研究

研究01カカオプロテインの研究
20歳以上50歳未満の便秘を自覚する女性を、カカオ分72%の高カカオチョコレート摂取グループ(16名)と、対照群としてホワイトチョコレート摂取グループ(15名)に分け、2週間、それぞれ1日当たり約25gのチョコレートを摂取して頂き、「排便回数」と「便色」「便量」などの便の状態の変化を検証しました。この研究は、帝京大学と株式会社 明治の産学共同で実施いたしました。チョコレートは平成27年6月から7月にかけて召し上がって頂きました。
研究02フィーカリバクテリウムの研究
前回の研究の追加分析として、次世代シークエンサーを用いたメタゲノム解析(16S rRNAシーケンス解析)を行い、チョコレート摂取前後の腸内フローラ全体の変化について検討しました。
  • 追加研究
  • 実証研究
  • 背景と考察

高カカオチョコレートの摂取により、腸内細菌「フィーカリバクテリウム」が増加しました。

今回の追加分析では、高カカオチョコレートを摂取したグループで、摂取開始から2週間で腸内フローラにおけるフィーカリバクテリウム属の占有率の有意な上昇が確認されました。その占有率が約2倍に達する一方、ホワイトチョコレートを食べたグループでは、摂取2週後においてもほとんど変化が見られませんでした(図1)。

今回の研究により、高カカオチョコレート摂取による便のかさ増し効果に加え、フィーカリバクテリウムのような有用菌を増やす可能性が示唆されました。

【図1 高カカオチョコレートの継続摂取でフィーカリバクテリウムが有意に増加】

【図1 高カカオチョコレートの継続摂取でフィーカリバクテリウムが有意に増加】

フィーカリバクテリウムの増加がもたらす効果。

フィーカリバクテリウムは、主に大腸上皮の粘液層に付着している有用菌です。腸内フローラでの占有率が高い最優占種の一つで、酪酸を多く産生することが知られています。酪酸には、大腸上皮細胞の主要エネルギー源となり、大腸の蠕動運動の活発化による「便通改善」、粘膜上皮細胞の異常増殖抑制による「大腸がんの抑制」、免疫応答を介したクローン病などの「炎症性腸疾患(IBD)の予防」、インスリンの分泌促進による「糖尿病予防」などの生理作用が知られています。そのため、酪酸を多く産生するフィーカリバクテリウムの増加により、これら健康に関する作用が向上することが期待されます。

また、フィーカリバクテリウムは健康な高齢者の腸内に多く存在することから長寿菌とも呼ばれ、ビフィズス菌、乳酸菌に続く新たな有用菌として近年注目を集めています。

高カカオチョコレートの摂取が求められる社会的背景。

男女とも20歳以上全年代で
食物繊維の摂取が不足

日本人の便秘有訴者は約470万人で、特に20代以降の増加が顕著です(※1)。便秘を引き起こす大きな原因は食物繊維の不足です。食物繊維の一日あたりの摂取目標量は18歳〜69歳の男性で20g以上、女性では18g以上とされています(※2)。しかし、男性、女性とも20歳以上の全年代で食物繊維の摂取量がこれを満たしていません。特に、20〜59歳まででその傾向が顕著で、男性で5〜7g、女性で3〜6gも不足しています(図2)。食物繊維の不足によって引き起こされた便秘は、様々な病気を発症する要因となります。そのうちの一つが「大腸がん」です。

※1 厚生労働省「平成25年 国民生活基礎調査」より
※2 厚生労働省「2015年版 日本人の食事摂取基準」より

【図2 1日あたりの食物繊維の摂取量】

【図2 食物繊維の摂取量】

グラフ:厚生労働省「平成26年 国民健康・栄養調査」より作成

日本国内のがん罹患者の
部位別トップは大腸がん。

現在、日本のがん罹患者の中で最も多いのが大腸がんです(図3)。2016年には大腸がん罹患者数が約147,200人に増加すると予測されています。2015年では肺がんが罹患者数約135,800人で1位でしたが(※3)、2016年には大腸がんが急増し、罹患者数がトップとなりました。罹患予測数は、1位の大腸がん(約147,200人)に続き、2位が胃がん(約133,900人)、3位が肺がん(約133,800人)となっています。

※3 国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター「2015年のがん罹患と死亡予測結果」より

【図3 がん罹患数予測(2016年・男女計)】

【図3 がん罹患数予測(2016年・男女計)】

グラフ:国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター「2016年のがん統計予測」より作成
http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/short_pred.html

日本人の死因トップはがんで、2015年の死者数は
約370,000人にのぼりました【がんセンター調べ】。

死因2位の心疾患や3位の肺炎による死者数は緩やかな上下を繰り返しているのに対し、がんの死亡率は調査を開始した1947年以降、増加の一途を辿り、過去35年間トップとなっています(図4)。

【図4 主な死因別にみた死亡率の年次推移(2014年・男女計)】

【図4 主な死因別にみた死亡率の年次推移(2014年・男女計)】

グラフ:厚生労働省「平成26年人口動態統計」より作成
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai14/dl/gaikyou26.pdf

  • 注 : 1) 平成6・7年の心疾患の低下は、死亡診断書(死体検案書)(平成7年1月施行)において「死亡の原因欄には、疾患の終末期の状態としての心不全、呼吸不全等は書かないでください」という注意書きの施行前からの周知の影響によるものと考えられる。
  •   : 2) 平成7年の脳血管疾患の上昇の主な要因は、ICD-10(平成7年1月適用)による原死選択ルールの明確化によるものと考えられる。

急な腹痛・下痢を伴う難病
「炎症性腸疾患(IBD)」が急増。

消化管粘膜に炎症・潰瘍が生じることによって引き起こされる、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)が近年急増し、2013年にはIBDの有病者は合わせて200,000人を超えています(図5)。IBDの症状としては、反復性の粘血便、下痢、腹痛、発熱、貧血などがあげられます。炎症性腸疾患には、腸内フローラの状態や便秘、自己免疫反応の異常、食生活の変化が大きく関係していると考えられています。

【図5 潰瘍性大腸炎(左)とクローン病(右)の有病者の推移】

【図5 潰瘍性大腸炎(左)とクローン病(右)の有病者の推移】

グラフ:公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センターWebサイトより作成
潰瘍性大腸炎・http://www.nanbyou.or.jp/entry/62
クローン病・http://www.nanbyou.or.jp/entry/81

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高カカオチョコレートの継続的摂取による
酪酸産生菌の増加に期待

腸内フローラは主に食事、運動、精神状態に大きく左右されます。食物繊維の少ない食事は腸内フローラのバランスを崩す原因となり、逆に過度のダイエットで食が細ると便の量が減って便秘がちになります。また、運動不足は腸の動きを鈍くし、ストレスがかかると腸が痙攣して過敏性腸症候群(IBS)の原因にもなります。そしてこれらの多くは現代人にあてはまることばかりです。大腸は"時代を映す鏡"であり、現代は腸内フローラを良好に保つには"受難の時代"といえます。

今回の研究では、フィーカリバクテリウムが高カカオチョコレートの摂取によって増加することが日本で初めて実証されました。培養が難しいことから研究対象として扱われてこなかった、フィーカリバクテリウムの新しい性質を発見したことは非常に大きな進歩です。食物繊維を普段の食事であまり摂取できない現代人にとって、高カカオチョコレートでフィーカリバクテリウムの増加を促進することは有効な手段の一つだといえます。私が行った研究では、長寿の人の腸内細菌にはフィーカリバクテリウムなどの酪酸産生菌が非常に多いことがわかっています。高齢化が進む現代において、フィーカリバクテリウムの重要性はますます高まっていくと考えられるでしょう。

国立研究開発法人 理化学研究所 農学博士 辨野義己氏

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 理化学研究所
 農学博士 辨野義己氏

  • 【実証研究】共同研究結果報告はこちら
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