乳酸菌により発酵させた乳由来の調味料が野菜由来の機能性成分であるカロテノイドの吸収を促進することを日本栄養・食糧学会大会にて発表

株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)は、乳酸菌により発酵させた乳由来の調味料(以下、乳由来発酵調味料)が野菜由来の機能性成分であるカロテノイドの吸収を促進することを明らかにし、その研究成果を栄養学ならびに食糧科学分野の学術集会である第77回日本栄養・食糧学会大会(公益社団法人日本栄養・食糧学会主催、開催期間:5月12日〜14日)において発表しました。

研究成果概要
  1. 1.
    発酵乳が野菜に含まれるカロテノイドの吸収を促進する知見にもとづき、カロテノイドの吸収を高めるためのドレッシング様の新たな乳由来発酵調味料を作製しました。
  2. 2.
    ヒト対象試験で、本発酵調味料によるカロテノイドの吸収促進効果を確認したところ、乳由来発酵調味料と野菜を一緒に摂取すると、野菜のみの摂取より、カロテノイドのひとつであるβ-カロテンが約2.1倍吸収されることが分かりました。

研究背景と今後の活用

野菜には多くのカロテノイド(β-カロテン、α-カロテン、リコピン、ルテインなど)が含まれており、ヒトの健康に有益な効果をもたらすことが知られています。例えば、β-カロテンはニンジンなどに含まれ、夜間の視力の維持、皮膚や粘膜の健康維持を助ける機能、リコピンはトマトなどに含まれ、血中高密度リポタンパク質(high-density lipoprotein、HDL)コレステロールを増やし、血圧を低下させる機能、ルテインはホウレンソウなどに含まれ、目の疲労感を和らげる機能がそれぞれあり、栄養補助食品や、機能性表示食品の関与成分として知られています。しかし、カロテノイドの吸収率は低く、いかにその吸収性を高めるかが重要です。

今回、乳由来発酵調味料と野菜の同時摂取は、野菜のみ摂取したときと比べ、カロテノイドの血漿濃度が高値となり、野菜に含まれるカロテノイドの吸収を促進させることを明らかにしました。本研究結果を活かし、今後も健康に貢献する商品開発に取り組んでまいります。

健康に有益な栄養素「カロテノイド」例えば人参に含まれるβ-カロテンの場合、生で食べるとわずか10%しか吸収されない

発表の内容

タイトル

「健常人において乳由来発酵調味料は野菜に含まれるカロテノイドの吸収を促進させる」

発表者

  • 株式会社 明治 研究本部
    森藤 雅史、市川 聡美、高橋 沙織、宮山(北出) 晶美、田邊 真志、狩野 宏

背景

これまでに、当社は発酵乳が野菜に含まれるカロテノイドの吸収を促進することを報告しています。本知見にもとづき、カロテノイドの吸収を高めるためのドレッシング様の新たな乳由来発酵調味料を作製し、本発酵調味料によるカロテノイドの吸収促進効果を確認すること、その必要用量を明らかにすることを目的として、本研究に取り組みました。

方法

ヒトを対象とした3群3期ランダム化クロスオーバー試験※1を実施しました。健常男性(16名)に、野菜 (235g)のみ、または野菜と乳由来発酵調味料(7.5g、15g)を同時に摂取させました。乳由来発酵調味料は、原材料である乳製品、植物油脂などを混合後、乳酸菌スターター(L. delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1251、S. thermophilus OLS3290)を添加し発酵させ、加熱殺菌したものを用いました。そして、試験食品の摂取前、摂取2、4、6、8時間後に採血を行い、血漿中の全画分、トリアシルグリセロールリッチリポ蛋白(TRL)画分※2のカロテノイド濃度を測定しました。

結果

  1. TRL画分血漿α-カロテン、β-カロテン、リコピンの上昇曲線下面積(iAUC)は、野菜のみの摂取と比べ、野菜と乳由来発酵調味料の摂取により、低・高用量ともに有意に高値となりました。(図1、図2)
  2. 全画分血漿ルテインのiAUCは、野菜のみの摂取と比べ、野菜と高用量の乳由来発酵調味料の摂取により有意に高値となりました。(図2)

考察

乳由来発酵調味料と野菜の同時摂取は、野菜のみ摂取したときと比べ、カロテノイドの血漿濃度が高値となり、野菜に含まれるカロテノイドの吸収を促進させることを明らかにしました。カロテノイドの吸収促進効果は、カロテノイドの健康機能を発揮するために重要な役割を果たし、ヒトの健康の維持や増進に寄与することが期待されます。

  • ※13群3期ランダム化クロスオーバー試験:試験参加者をランダムに3群に分け、それぞれの群に被験食品(低用量、高用量)と対照食品を、順番を決めて摂取させる方法。

  • ※2トリアシルグリセロールリッチリポ蛋白(TRL)画分:トリアシルグリセロール(中性脂肪)を多く含む超低比重の血漿画分。本画分のカロテノイド濃度(ルテインなどのキサントフィルは除く)は、食事由来の濃度を反映するといわれています。

図1 TRL画分の血漿β-カロテン濃度の経時変化とiAUC
出典: 森藤ら 日本栄養・食糧学会誌 2022;75:103–112の図4を改変
図2 血漿α-カロテン、リコピン、ルテインのiAUC
出典: 森藤ら 日本栄養・食糧学会誌 2022;75:103–112の表2より作図