新型コロナに次ぐ新興変異ウイルス出現に向け、腸内環境を介した新たな予防習慣の提唱をめざす 株式会社 明治が新たに参画し、「神奈川県産官学共同 新型コロナウイルス抗体価社会調査プロジェクト」がスタート~コロナに強い食生活と腸内環境を求めて~

地方独立行政法人 神奈川県立産業技術総合研究所(以下、KISTEC)が中心となって、公立大学法人 神奈川県立保健福祉大学、地方独立行政法人 神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター、株式会社 メタジェンと進めている新型コロナウイルス抗体保有者の生活習慣や腸内環境の調査に関する共同研究に、乳酸菌をはじめとする微生物が腸内環境や免疫機能にもたらす影響についての知見を有する株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也、以下、明治)が参画し、産官学連携による共同研究として「神奈川県 産官学共同 新型コロナウイルス抗体価社会調査プロジェクト」がスタートします。

今回、明治の参画を受け、対象者のワクチン抗体価と腸内環境や食習慣との関連のみならず、異物を攻撃する免疫細胞であるPBMC※1を評価し、ヨーグルト摂取などの食習慣との関連を分析してまいります。

図:共同プロジェクト各団体分析対象 KISTEC:抗COVIT-19ウイルス抗体量の評価など/公立大学法人 神奈川県立保健福祉大学:アンケート調査、試験、統計、解析など/明治:PBMC活性の評価/株式会社 メタジェン:腸内細菌叢メタゲノム解析、腸内代謝物質メタボローム解析など/地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立がんセンター:コホート研究の事務局運営、データ管理、被験者リクルート、アンケート調査など
【「神奈川県産官学共同 新型コロナウイルス抗体価社会調査プロジェクト」の概略】

多数の変異をもつオミクロン株級の新興ウイルスが今後も出現する可能性が示唆される中で、ワクチンや感染によって獲得した免疫機能をいかに維持・増強するかが「ウィズコロナ」下における社会活動の維持にとって重要な課題となっています。

特に新型コロナ感染症では、欧米ではその感染者数や死亡率が高く、アジアでは低いといった地域的な違いが指摘されており、その要因として遺伝子配列の違いやBCGワクチン接種率、食生活をはじめとした生活習慣の違いなどが挙げられています。

そこで、神奈川県みらい未病コホート研究※2の研究基盤を活用し、2020年度に県民約1,600人を対象に新型コロナウイルス抗体市中モニタリングを実施しました。追跡調査として、新型コロナウイルス抗体保有者の健康状態や腸内環境の特徴について、アンケート調査や、腸内環境の解析、免疫グロブリンA(IgA)※3の測定を実施し、特に不顕性感染者の腸内環境の特徴が明らかになりつつあります。さらに明治も参画し、PBMCの評価も合わせた統合解析を行ってまいります。

※1PBMCとは、末梢血単核球(Peripheral Blood Mononuclear Cells)の略称。PBMCには、T細胞(CD4+細胞/CD8+細胞)、B細胞、NK(ナチュラルキラー)細胞、樹状細胞などのリンパ球が含まれる※2健康な状態からゲノム情報を含めた網羅的な生活習慣、健診データをビッグデータ化し、疾患リスクを明らかにして、未病対策(疾病予防)に役立てることを目的とした、神奈川県が構築した大規模ゲノムコホート※3IgAは病原体が体外から体内へ侵入する際にブロックする役割を持つ抗体であり、一方、IgGは体内に侵入した病原体を攻撃・排除する役割を持つ抗体。感染症予防に重要な役割を担う

プロジェクト発足に際してのコメント

地方独立行政法人 神奈川県立産業技術総合研究所 腸内環境デザイングループ グループリーダー 福田真嗣

写真:福田真嗣

腸内フローラが人の免疫機能に大きな影響を与えることが、近年の研究で次々に明らかになっています。腸内フローラを構成する腸内細菌の種類やバランスは人によって異なりますが、それが生活習慣、特に食習慣に依存することもわかってきました。ワクチン接種によって誘導される抗体価やその持続性も人によって異なることから、これらが個々人の食習慣や腸内フローラとどの様に関連するのかについて、本プロジェクトの推進により明らかにしたいと考えています。

今回新たに株式会社 明治様にご参画いただき、基礎的な調査研究から社会実装までを一気通貫に実施できる産官学連携体制が整いましたので、将来来たる新興感染症に対する「食−腸内環境―免疫」アプローチを構築し、誰もが健康で幸せな社会の実現にむけて全力で取り組みます。

株式会社 明治 研究本部長 市原淑立

写真:市原淑立

乳酸菌をはじめとする微生物が腸内環境や免疫にもたらす効果について、長年にわたり研究を進め、免疫細胞やサイトカイン(生体内で情報伝達を担うタンパク質)が関与する「細胞性免疫」の評価技術を向上させてまいりました。

新型コロナウイルス感染の抑制における「液性免疫(抗体産生)」の寄与は知られていますが、「細胞性免疫」についての知見は十分とは言えません。本プロジェクトでは、各参画機関が持つ評価・解析技術、大規模追跡調査データベースに加え、当社が持つ細胞性免疫の評価技術を融合させることで、新型コロナウイルスへの免疫応答に関与する様々な要因、例えば、食生活や腸内環境などについて、有用な知見が取得できるものと確信しております。

研究概要

研究デザインと期間

2020年度:基盤となるコホート研究を実施(ベースライン調査)
2021年度:1年後の追跡調査
2022年度~24年度:新型コロナウイルス抗体価と腸内環境やPBMC評価(本研究)

研究参加者

  1. 地方独立行政法人 神奈川県立産業技術総合研究所(神奈川県海老名市、理事長:鈴木邦雄)
  2. 地方独立行政法人 神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(神奈川県横浜市、総長:古瀬純司)
  3. 公立大学法人 神奈川県立保健福祉大学(神奈川県横須賀市、理事長:大谷泰夫)
  4. 株式会社 メタジェン(本社:山形県鶴岡市、代表取締役社長CEO:福田真嗣)
  5. 株式会社 明治(本社:東京都中央区、代表取締役社長:松田克也)