当社マーガリン製品リニューアルの趣旨
背景としてのトランス脂肪酸問題について

*本資料は、今回のマーガリン類リニューアルに際しまして、その背景となるトランス脂肪酸の問題の概況と、トランス脂肪酸についての基本情報を整理したものです。

【はじめに】
トランス脂肪酸に関する当社の取り組みについて

トランス脂肪酸問題・家庭用マーガリン類リニューアルの背景

 多様な食品に含まれているトランス脂肪酸について、欧米諸国を中心に、人の健康に影響を及ぼすリスクが大きいという論調が徐々に高まり、10年ほど前から、摂取に関する勧告や表示の義務付けなどの公的な規制が始まり、この動きは日本にも波及しました。

 そして、国内でも、トランス脂肪酸について、2011年2月には消費者庁より「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」が公表され、翌年3月には内閣府食品安全委員会(以下、食品安全委員会)により食品中のトランス脂肪酸に係る食品健康影響評価結果が取りまとめられるなど、様々な対応がなされてきています。

 食生活全般に言えることですが、脂質に関しても摂り過ぎに注意し、動物、植物、魚由来の脂質をバランスよく摂取することが大切です。また、脂肪の多い食品を多く摂るなど食事が偏っている場合には、トランス脂肪酸に限らず脂質の摂取が多くなり、健康を害するリスクが高いということになります。

 食品安全委員会による調査結果において、日本人の平均的なトランス脂肪酸の摂取量は、諸外国人と比較して少ない傾向にあることがわかっています。つまり、日本で標準的な食生活をしている場合は、トランス脂肪酸の摂取による健康への影響は小さいということです。

 ところが、健康志向とともに食品のリスクへの関心が高まる日本で、トランス脂肪酸のリスクや諸外国の動きは大きく報道され、なかには偏った報道もなされるようになりました。例えば、2018年に米国のFDA(米国食品医薬品局)がGRAS(Generally Recognized As Safe:一般的に安全と認められる)の対象から除外すると決定したのは、「トランス脂肪酸を含む部分水素添加油脂」(4頁参照)ですが、日本では、「トランス脂肪酸」がGRASの対象から除外され、使用を禁止されるかのように伝わっています。

お客様の安心感に配慮し「部分水素添加油脂不使用」へ

 こうしたなか、トランス脂肪酸を含む食品の代表格として例に挙げられるマーガリンは、トランス脂肪酸の含有量や一般的に人が摂取する量の多少を問わずに、無条件で危険な食品であるかのようなダメージを受けました。

 当然ながら当社にも、多くのお客様から直接、不安の声やお問合せが多数、寄せられてきています。お問合せに対して、ウェブサイト等を通じて、標準的な摂取量であれば健康リスクは問題ないこと、当社家庭用マーガリン類のトランス脂肪酸の含有量などの情報を開示するとともに、商品に含まれるトランス脂肪酸を低減するための技術開発を進めてきました。一方で、今回の問題を大きな契機として、毎日当たり前のように使い続ける商品に必要なことは何かを見直し、「おいしさ」や「使いやすさ」を改めて追求して、お客様に選んでいただける商品づくりに取り組んできました。

 そして、この度、新たな「おいしさ」と、毎日の食卓で使う商品だからこその「安心感」に配慮して、家庭用マーガリン類の対象10商品にて、部分水素添加油脂の使用をやめ、「部分水素添加油脂不使用」マークを商品パッケージに記載し、リニューアル展開いたします。

バランスのよい食生活に貢献するために

 脂質は、タンパク質、炭水化物とあわせて三大栄養素の一つです。脂質は、体を動かすエネルギー源として、また、体の中で神経組織、細胞膜、ホルモンなどを作るために欠かせない成分です。但し、トランス脂肪酸に限らず、飽和脂肪酸も含めた脂質の摂りすぎ、コレステロールの多量の摂取も心臓病のリスクを高めるため、食生活において脂質全体の摂取に注意する必要があります。

 健やかな食生活を送るためには、トランス脂肪酸をはじめ食品中の一成分だけに着目するのではなく、現状、日本人が摂りすぎの傾向にあって、生活習慣病のリスクを高めることが指摘されている脂質全体や塩分などを控えることが重要とされています。

 一方では、ダイエットなどの目的で、脂質や糖質など特定の成分を排除するなど、偏った食生活になることも懸念されています。「バランスのよい食生活」を推進するために、農林水産省、厚生労働省などが「食事バランスガイド」を設定しています。

 生活者の皆さまのバランスよい食生活に貢献できるよう、当社でも、今後も学術情報や国内外の動向を踏まえつつ、生活者の皆さまが健康的でおいしい食事を安心して召し上がっていただけるよう、より付加価値の高い商品づくりをめざしていきたいと考えています。

【トランス脂肪酸に関する参考情報】
1.トランス脂肪酸をめぐる問題

(1) トランス脂肪酸問題の概況

 生活習慣病予防のため、先進国の多くが、多様な食品に含まれるトランス脂肪酸のほか飽和脂肪酸を含めた脂質の摂りすぎについて注意喚起を行っており、バランスのとれた健康的な生活を推奨しています。

 トランス脂肪酸については、WHO(世界保健機関)が、心血管系疾患リスクを低減し健康を増進するための勧告(目標)基準として、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるよう提示しています。

 トランス脂肪酸を摂る量が多く、生活習慣病が社会問題となっている国では、加工食品に飽和脂肪酸やトランス脂肪酸などの含有量の表示義務付けや、部分水素添加油脂の食品への使用規制(※1)、食用油脂に含まれるトランス脂肪酸の上限値の設定をしているところがあります。トランス脂肪酸には多数種類があり、そのすべての合計量を測定するのは難しいため、国によって、表示義務や規制の対象とするトランス脂肪酸の範囲が指定されています。

 トランス脂肪酸の摂取量が少ない国々では、トランス脂肪酸について表示の義務づけや上限値の設定は行わず、飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の総量を自主的に低減するように事業者に求めています。

(※1) 米国の規制に関して、「トランス脂肪酸がFDA(米国食品医薬品局)よりGRAS(Generally Recognized as Safe:安全であると一般的に認められる)の対象から除外された」、あるいは「食品へのトランス脂肪酸の添加が禁止された」といった報道が日本で見受けられました。実際には、GRASの対象から除外されたのは、トランス脂肪酸ではなく、トランス脂肪酸を含む「部分水素添加油脂」です。なお、FDAは「部分水素添加油脂」を、ヨウ素価4超(ISO3961又はこれと同等の分析法で分析する必要)の、水素が添加された油脂と定義し、完全水素添加油脂やほぼ完全に水素添加された油脂は対象外としています。

トランス脂肪酸と部分水素添加油脂の関係について

 トランス脂肪酸とは、油脂の構成要素である脂肪酸の一種です。脂肪酸には炭素の二重結合のない飽和脂肪酸と、二重結合がある不飽和脂肪酸がありますが、不飽和脂肪酸のうち、水素原子が炭素の二重結合をはさんで反対側についているものをトランス脂肪酸と呼んでいます。

 不飽和脂肪酸の割合が高い食用油脂(菜種油、コーン油など)は融点が低く、液体で存在します。この不飽和脂肪酸にある炭素の二重結合の一部に水素を付加(これを部分水素添加といいます)して二重結合の数を減らし、融点の高い飽和脂肪酸の割合を増やし、固体や半固体の油脂をつくる方法があります。これを硬化処理といい、この方法で製造された油脂を一括して硬化油、または部分水素添加油脂といいます。

 硬化処理の度合いを調整することによって、酸化による品質劣化がしにくい油脂や、低温・高温でも硬さが変わらない油脂、目的とする温度で融ける油脂等の様々な特徴を持つ油脂を作ることができるため、部分水素添加油脂は、様々な食品の原材料として利用されてきました。一方で、部分水素添加油脂を製造する過程でトランス脂肪酸が生成されることが知られています。

〔部分水素添加油脂が使われている加工食品例〕

(以上、下記より抜粋引用)

トランス脂肪酸に関する各国の対応の一例

◇米国
 2015年6月、FDAが「トランス脂肪酸が多く含まれている部分水素添加油脂をGRASの対象からはずす」ことを発表し、規制は2018年6月18日から開始されます。

◇カナダ
 2005年12月から、栄養成分表示でトランス脂肪酸を表示対象としています(食品1回の使用量が0.2g以上含まれる場合)。その後、食品中のトランス脂肪酸の含有量の低減達成目標を定め、2018年9月15日からは、部分水素添加油脂の食品への使用を禁止します。

◇デンマーク
 2004年1月から、消費者向けに販売・供給される食品の油脂に含まれるトランス脂肪酸について、最終製品に含まれる油脂100g当たり2gを超えてはならないとする規制を設けています(天然由来を除く)。

◇オーストラリア、ニュージーランド
 トランス脂肪酸とはランス脂肪酸の摂取量が比較的少ないことから、トランス脂肪酸の含有量には規制は設けず、自主的な取組により低減を進めていくとしています。

(2)トランス脂肪酸の身体への影響について

トランス脂肪酸を摂取する量が多いと、血液中で悪玉コレステロールといわれているLDLコレステロールが増加し、善玉コレステロールといわれているHDLコレステロールが減少することが報告されています。日常的にトランス脂肪酸を多く摂っていると、動脈硬化などによる心臓病のリスクを高めることが分かっています。

トランス脂肪酸は、バランスのよい食生活で摂取している範囲では身体への悪影響はほとんどありません。しかし、摂ることでのメリットがないとされるために、健康志向とともに少しでもリスクのあるものを避けたいという傾向が高まり、摂りすぎた場合のリスクについて懸念が集中しています。

WHOと国際連合食料農業機関(FAO)合同専門家会議の報告書では、トランス脂肪酸の摂取量を1日当たりの総エネルギー摂取量の1%未満(2グラム程度)とするように勧告しています。

<表1: 欧米と日本でのトランス脂肪酸の摂取状況>
*一日あたりの平均摂取量
トランス脂肪酸摂取量(グラム) エネルギー比(%)
日本 0.7 0.3
米国 5.8 2.6
EU 1.2~6.7 0.5~2.1
オーストラリア 1.4 0.6
ニュージーランド 1.7 0.7
備考:内閣府食品安全委員会 平成18年度食品安全確保総合調査
「食品に含まれるトランス脂肪酸の評価基礎資料調査報告書 2007」に基づき作成

(3) 日本での状況

 現在、日本人の、トランス脂肪酸の1日あたりの平均摂取量は、エネルギー比の0.3~0.6%程度と、WHOの目標や欧米諸国の数値と比較すると低い状況です。2012年3月8日、内閣府食品安全委員会が公表した「食品に含まれるトランス脂肪酸に関する食品健康影響評価」でも、「通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられる」とされています。

 日本では、現時点では、食品中のトランス脂肪酸について、表示の義務や含有量に関する基準値はなく、不飽和脂肪酸や飽和脂肪酸、コレステロールなど、他の脂質についても表示の義務や基準値はありません。厚生労働省では、国民の健康維持・増進、生活習慣病の予防を目的に定めている「日本人の食事摂取基準(2015)」では、脂質に関しては、総脂質と飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸について目標量や目安量の基準を定めています。トランス脂肪酸については、目標量の基準は定められていません。内閣府食品安全委員会は、「今後も日本人のトランス脂肪酸の摂取量について注視し、引き続き疾病罹患リスク等にかかわる知見を収集し、適切な情報を提供することが必要」としています。

2.トランス脂肪酸についての基本情報

(1) トランス脂肪酸とは

 トランス脂肪酸とは、油脂の構成要素である脂肪酸の一種であり、トランス型の二重結合を有する不飽和脂肪酸です。マーガリンやショートニングなど加工油脂やこれらを原料として製造される食品、乳、乳製品、反芻(すう)動物の肉や精製植物油などに含まれることが知られています。

 あぶらには、常温で液体のあぶら(油)と固体のあぶら(脂)があり、これをまとめて、油脂と呼んでいます。この油脂は、脂肪酸とグリセリンという分子からできています。この油脂や脂肪酸、グリセリン、コレステロールなどをあわせて脂質と呼んでいます

その油脂の構成成分である脂肪酸は、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)で構成され、水素原子の結合した炭素原子が鎖状につながった一方の端がカルボキシル基(-COOH)になっているものです。脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類され、炭素と炭素が2つの手で結び付いた二重結合(不飽和)を一つ以上有するものが不飽和脂肪酸と呼ばれます。

 さらに、不飽和脂肪酸は、二重結合の炭素に結び付く水素の向きでトランス型とシス型の2種類に分かれます。水素の結び付き方が互い違いになっている方をトランス型といい、同じ向きになっている方をシス型といいます。天然の不飽和脂肪酸のほとんどはシス型で存在しています。

 なお、トランス型の二重結合であっても、それが共役二重結合(炭素原子鎖が単結合と二重結合を交互に有する結合)のみとなっている脂肪酸は、国際食品規格を作成しているコーデックス委員会においてはトランス脂肪酸には含めないと定義されています。

(以上、下記より抜粋引用)

(2) トランス脂肪酸の生成

トランス脂肪酸は、天然に生じるものと、油脂の加工過程で生じるものの2つに大別されます。

◇天然由来
 天然由来のトランス脂肪酸は、反芻(すう)動物の胃の中でバクテリアの働きによって生成され、乳、乳製品や反芻(すう)動物の肉などにもわずかに含まれていることが知られています。

◇油脂の加工由来
 油脂の加工過程に由来するトランス脂肪酸には3つあり、シス型不飽和脂肪酸から生成すると考えられています。

(以上、下記より抜粋引用)

(3)食品に含まれるトランス脂肪酸

◇トランス脂肪酸が食品に含まれている背景
 バター、ラードなどの動物性脂肪は、飽和脂肪酸の含有量が多いため、融点が高く、常温で固形になりやすいのが特徴です。一方、植物性油脂はシス型の不飽和脂肪酸の含有量が多く、融点が低いため、常温では液体であるものが多く、植物性油脂を原料としたマーガリンやショートニングなどの製造には、硬化処理により融点調整した油脂(部分水素添加油脂)が必要です。マーガリンやファットスプレッド、ショートニングなどの部分水素添加油脂を使用した原材料を含むパン、ケーキ、ドーナッツなどの洋菓子、部分水素添加油脂で調理された揚げ物などの食品にもトランス脂肪酸が含まれています。

◇主な食品に含まれるトランス脂肪酸の含有量
 2006年の内閣府食品安全委員会の調査によると、トランス脂肪酸は油脂類に最も多く含まれており、特にマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングに含有量が多い製品が見られました。また、食用調合油・ナタネ油等の植物性油脂、ラード、牛脂、バターにも比較的多く含まれていました。

 油脂類以外で、トランス脂肪酸の含有量が1%を超える製品が含まれていた食品は、ビスケット、クッキー、パイ、半生ケーキ、ポテト系・コーン系スナック、スポンジケーキ、イーストドーナッツ、マヨネーズ、牛肉(内臓含む)、チーズ、クリームでした。

 調査から10年以上が経過し、トランス脂肪酸を減らした製品が多く流通するようになったため、現在ではこの数値が変動していることも考えられます(次頁表2参照)。

<表2:国内に流通している食品のトランス脂肪酸含有量>
食品名 トランス脂肪酸含有量
平均値(g/100 g)
マーガリン、ファットスプレッド7.00
食用調合油等1.40
ラード、牛脂1.37
ショートニング13.60
ビスケット類*11.80
スナック菓子、米菓子0.62
チョコレート0.15
ケーキ・ペストリー類*20.71
マヨネーズ*31.24
食パン0.16
菓子パン0.20
即席中華めん0.13
油揚げ、がんもどき0.13
牛肉0.52
牛肉(内臓)*40.44
牛乳等*5 0.09
バター1.95
プレーンヨーグルト、乳酸菌飲料0.04
チーズ0.83
練乳0.15
クリーム類*63.02
アイスクリーム類0.24
脱脂粉乳0.02
備考:内閣府食品安全委員会 平成18年度食品安全確保総合調査
「食品に含まれるトランス脂肪酸の評価基礎資料調査報告書 2007」に基づき作成

*1 ビスケット類には、ビスケット、クッキー、クラッカー、パイ、半生ケーキが含まれる
*2 ケーキ・ペストリー類には、シュークリーム、スポンジケーキ、ドーナツが含まれる
*3 マヨネーズには、サラダクリーミードレッシングおよびマヨネーズタイプが含まれる
*4 牛肉(内臓)には、心臓、肝臓、はらみ(横隔膜)、ミノ(第一胃)が含まれる
*5 牛乳等には、普通牛乳、濃厚牛乳、低脂肪牛乳が含まれる
*6 クリーム類には、クリーム、乳等を主原料とする食品、コーヒー用液状クリーミング、クリーミングパウダー、植物油脂クリーミング食品が含まれる

*参考情報一覧

〇食品安全委員会

〇農林水産省 

〇厚生労働省:

〇消費者庁 

〇日本マーガリン工業会

株式会社明治
2018年3月1日