食を知る

第2回 「たんぱく質」って、何だろう?

たんぱく質という名称は、だれでも知っているはず。
でも、たんぱく質の役割や、私たちのたんぱく質摂取量が減っていることを知っていますか。
良質なたんぱく質をたくさん含む、牛乳や乳製品のこと、もっともっと。

たんぱく質摂取量不足の影響とは

現代の日本人には、たんぱく質摂取量不足の人が増えていることを知っていますか。
自分では気がつきにくい、たんぱく質摂取量不足と健康への影響について知っておきましょう。

たんぱく質摂取量の減少によりすべての世代で健康に影響が

食生活が豊かな日本ですが、意外なことに多くの人のたんぱく質摂取量が不足しています。たんぱく質摂取量不足は、成長期の子供たちから働き盛りの大人たち、そして高齢者にいたるまで、すべての世代にさまざまな健康上の影響をもたらしています。

日本では、1950年代から続く経済成長期に食生活が急速に豊かになり、それにともなって栄養状態も改善され、食事からのエネルギー摂取量は上昇を続けてきました。
ところが厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によれば、1960年代〜70年代の2200kcal前後をピークに、エネルギー摂取量は少しずつ減少に転じるようになりました。とくに近年になると、肥満やメタボリックシンドローム対策、あるいは女性を中心としたダイエット指向などを背景に、エネルギー摂取量の減少が目立つようになっています。
1995年と2010年とを比較すると、日本人の1人1日当たりの平均摂取エネルギーは約2050kcalから約1850kcalへと大きく減少しています。これは第二次大戦直後の、食生活が貧しかった当時の数値(約1900kcal)を下回っているほどです。

それに連動して多くの栄養素の摂取量も減っていますが、とりわけ顕著なのがたんぱく質摂取量の減少割合です。
2010年のたんぱく質の平均摂取量は、1995年と比較すると20歳〜59歳の働き盛り世代の男性では約20%も減少し、全世代平均でも約18%減少しています。
現代では、たんぱく質摂取量不足がその原因の一つと考えられる、さまざまな健康問題がみられるようになっています。しかし、たんぱく質摂取量不足と言われても、ほとんどの人には実感がなく、自分では気がつきにくいかもしれません。
次に示す、実際に生じている健康問題を参考に、たんぱく質摂取量不足の影響を具体的に知っておきましょう。

一日当たりたんぱく質摂取量年次推移

たんぱく質摂取量不足がまねく子どもたちの体力・運動能力の低下

たんぱく質摂取量不足は、体力や運動能力の低下をまねきます。たとえば、成長期の小学生世代。「走る・投げる」といった基本的な運動能力が低下し、将来にわたる影響が懸念されています。

文部科学省が実施している「体力・運動能力調査」によると、小学生世代では身長や体重などの体格面は、長期間にわたりほぼ一貫して向上しています。親の世代が小学生だった頃と比べても、背は高くなり、体重も増えています。

ところが、「走る・投げる」などの運動能力については、1985年頃をピークに低下傾向が続いています。
たとえば、11歳の小学生について、高水準だった時代(1985年度)と最近(2010年度)を比較すると、男女ともに50m走のタイムは遅くなり、ソフトボール投げの距離は短くなっています。

こうした傾向は、持久走(1500m)や立ち幅跳びなど多くの運動でも同様にみられます。
その原因として、「子供たちが外遊びをしなくなったこと」や、「生活の利便化により体を動かす機会が減少していること」などがあげられています。また、基礎的な運動能力の低下の背景には、筋肉・筋力の減少が考えられることから、食生活におけるたんぱく質摂取量不足の影響も指摘されています。

子どもたちの体力・運動能力の低下は、現在だけの問題ではなく、将来にわたり生活習慣病や骨折などのケガの増加にもつながる懸念があります。その予防のために、子どもたちの運動の機会を増やすと同時に、たんぱく質をしっかり摂るなどの食生活の見直しが大切だといえます。

一般に、成長期の子どもたちに必要な栄養素としては、カルシウムがよく知られています。その一方で、たんぱく質の重要性については、まだ認知度が高いとはいえません。子どもたちの体力・運動能力の向上のために、また将来の健康維持のためにも、運動の機会を増やすことと、良質なたんぱく質をしっかり摂取することが望まれています。

子どもの体力、運動能力の変化

若い女性のやせ型指向と貧血や低出生体重児の増加

日本の若い女性たちには、「やせ型指向」の人が増えています。その影響から、知らないうちにたんぱく質をはじめとした栄養素が不足し、貧血や低出生体重児の増加の原因となっています。

モデルのようなスレンダーな体型になりたい…そう思っている女性は多いでしょう。でも、思いが強すぎて「やせ型指向」にかたよると、食生活が乱れて栄養素のバランスをくずし、健康にも影響を及ぼしかねません。
日本の女性には、幅広い世代で「やせ型指向」がみられます。「国民健康・栄養調査(2010年)」によれば、BMI 値(※)が18.5未満の「やせ型(低体重)」女性は、全体の約10%を占めています。食生活が豊かな先進諸国(アメリカ、イギリス、カナダなど)の多くは5%前後なので、その2倍にものぼります。
とくに若い成人女性に「やせ型」が多く、20歳代では約30%(3〜4人に1人)、30歳代では約15%(7人に1人)と、世界的にみても群を抜く高率になっています。

痩せすぎ女性(BMI 18.5未満)比率の国際比較

やせ型指向の女性は、朝食を抜いたり、低カロリー食を続けたりすることが多く、気づかずに栄養素不足状態になっているケースが少なくありません。とくにたんぱく質については、成人女性では若い世代ほど1日当たりの摂取量が少なく、50歳代や60歳代が65g以上なのに対して、20歳代や30歳代は60g前後にとどまっています(「国民栄養・健康調査2010年」)。
たんぱく質が不足すると、血液(赤血球)合成にかかわるホルモンの濃度が低下します。このことは、日本女性において貧血の人が諸外国より多い原因の一つかもしれません。

一方、「やせ型(低体重)」の増加は、妊娠・出産・育児にも大きな影響を及ぼしています。たとえば妊娠時や出産後の育児期には、胎児や乳幼児の成長のために、エネルギーもたんぱく質も非妊娠時より多く摂ることが推奨されています。しかし、日本産婦人科学会の調査では、妊娠時に摂取するエネルギーやたんぱく質量がふだんと変わらない女性が多く、また出産後の授乳期にも推奨量を満たしている女性は半数未満にすぎません。
日本では、低出生体重児が30年前と比較して約2倍に増加していることが社会的な課題ともなっています。その背景には「やせ型」の女性が増え、妊娠時や育児期にもたんぱく質不足をはじめとした栄養素不良があるものと指摘されています。

※BMI 値は世界共通の肥満度の指標で、体重(kg)を身長(m)の2乗で割った数値で示されます。体重50kg、身長1.6mの場合、「50÷(1.6×1.6)≒19.5」となります。日本肥満学会の基準では、BMI 値18.5未満をやせ型(低体重)とし、やせ過ぎによる健康上の注意を示唆しています。

運動不足とたんぱく質摂取量不足で成人男性のメタボリックシンドロームが増加

たんぱく質の摂取量が不足すると、筋肉量が減少するため、基礎代謝量も低下します。日本の成人男性には肥満が多くみられ、日頃の運動不足による基礎代謝量の低下が、メタボリックシンドロームの増加をまねいています。

健康への関心が高まるなかで、反対に日本の成人男性には肥満が増えています。BMI 値が25以上の肥満男性(20歳以上)は、1980年と2010年を比較すると30年間で1.65倍に増加しています(「国民健康・栄養調査」)。
さらに肥満に加えて高血圧や糖尿病などを併発し、心疾患のリスクが高まるメタボリックシンドローム(略称メタボ)も増加していて、該当者はすでに2000万人を超えています。

成人男性の場合、食事からの摂取エネルギーは減少傾向にあるものの、消費エネルギーも減少しているため、相対的に「食べ過ぎ(カロリーオーバー)」となり、それが肥満の原因の一つとなっています。
一般に、加齢とともに基礎代謝量が少しずつ低下するため、消費エネルギーも減少します(※)。しかし、基礎代謝量の低下は、加齢よりも筋肉量の減少の影響が大きいことが報告されています。
筋肉は、基礎代謝量の約40%を占めています。また、1日の消費エネルギーでみても、筋肉は全体の約25%を占めます(生活活動度が中程度の人を想定)。そのため筋肉量が減少すると、基礎代謝を含めた消費エネルギーが大きく低下してしまいます。

※基礎代謝量とは、私たちの安静時に呼吸や心臓の動き、筋肉の維持などに消費される基本的なエネルギーです。

成人男性の筋肉量の減少に大きく影響しているのが、たんぱく質摂取量の減少傾向です。
一般に、働き盛り世代の成人男性は肉をよく食べるイメージがあり、たんぱく質摂取量も多いように思われています。ところが実際には、成人男性の1日当たりの摂取量は、50〜60歳代に対してメタボのリスクが高まりやすい20〜40歳代では摂取量が少なくなっています(その反面、脂質の摂取量がかなり多めであることも肥満の一因となっています)。

肥満を解消し、メタボを予防するためには、筋肉量を低下させない生活が大切です。その基本は、適度の運動を続けることと、バランスの良い食生活を心がけること。とくに食生活面では、筋肉をつくる材料となる良質のたんぱく質をしっかり摂ることが望まれます。
たんぱく質が豊富な牛乳や乳製品を上手に摂って、筋肉量を増やして基礎代謝量を上げ、肥満やメタボを予防しましょう。

肥満とやせの状況の推移(男性/20歳以上)

高齢者の低栄養状態が介護の増加の一因に

高齢者のあいだに低栄養状態の人が増え、健康寿命(日常的に介護を必要としないで自立した生活ができる生存期間)の低下をまねいていることを知っていますか。とくにたんぱく質摂取量不足は筋力の衰えを早め、ロコモティブシンドロームのリスク要因のひとつとして挙げられます。

日本は世界でも屈指の長寿国で、平均寿命は女性が86.39歳で世界1位、男性は79.64歳で世界4位(厚生労働省「平成22年簡易生命表」)。その一方で、高齢者の増加にともない、骨や関節などの障害により介護・支援が必要となるロコモティブシンドローム(運動器症候群、略称ロコモ)が急増し、予備軍まで含めると4700万人にものぼることが報告されています(東京大学22世紀医療センターによる)。

ロコモの増加の一因として指摘されているのが、高齢者の低栄養状態です。
一般に高齢になると、野菜などの低カロリー食品を中心とした食事が多くなりがちです。その結果、たんぱく質をはじめとした必要な栄養素が不足し、気づかないうちに低栄養状態になっているケースが少なくありません。毎日3食食べているのに低栄養状態になっていることから、「新型栄養失調」とも呼ばれています。

高齢者が低栄養状態になると、免疫力が低下して感染症などの病気にかかりやすくなります。また、たんぱく質摂取量が不足すると筋肉が減り、骨も弱くなるため、転倒や骨折を起こしやすくなり、それがきっかけで介護や支援を必要とする状態(ロコモ)をまねくことになります。
日本では高齢化の進展により、60歳代、70歳代はまだ若いと思われています。しかし、加齢にともなう筋肉の減少は、個人差があるものの40歳代頃からすでに始まっています。歩く速度が遅くなる、平地でつまずくことが多い、階段や坂道がつらく感じるなどの症状は、そのサインです。
そこに低栄養状態が加わることで、ロコモのリスクが急速に高くなるのです。

一方、東京都健康長寿医療センターの過去の調査から、長寿の人はたんぱく質摂取量が多く、とくに動物性たんぱく質をよく摂っていることが判明しています。
また、たんぱく質の割合の多い食事を摂っている高齢者ほど、加齢にともなう筋肉量の減少が抑制され、骨密度が高いことも報告されています。
高齢者にとって、たんぱく質をしっかり摂ることは、長寿や身体機能の向上に役立つ非常に大切な要素なのです(※)

※高齢者にとって、運動もまた筋肉をつけ、身体機能を高め、健康寿命をのばす要素です。筋肉は負荷をかけることで強化されるので、レジスタンス運動(ダンベル体操、ストレッチ、屈伸など)が効果的とされています。たんぱく質の摂取とともに、運動を続けることも大切です。

■子どもから高齢者まで、たんぱく質の過剰摂取は腎臓負担となる場合があるため適量を摂取することが大切です。

  • 第1回 牛乳・乳製品の栄養素ってすごい!
  • 第2回 「たんぱく質」って、何だろう?
  • 第3回 運動×たんぱく質で“筋肉”をつけよう!
  • 第4回 運動×ミルクプロテインで熱中症対策!

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