ヨーグルトの研究者たち

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光岡知足:研究の日々(2)

振り返ってみると・・・半世紀を超える研究の日々

ドイツ留学を経て、腸内フローラ研究の新たな展開

1964年から66年まで、かねてからの念願であった西ベルリン自由大学食品衛生学研究室に留学しました。ここでの2年間で、欧米各国の一流研究者たちと出会うことができ、まさに最先端の現場で研究に没頭しました。

そして、帰国してすぐに、多菌株接種装置を開発。さらに、細菌分類学の分野に分子生物学的手法を採り入れ、これまでの分類の再検討と新分離菌株の研究を精力的に行い、ビフィズス菌、乳酸桿菌、バクテロイデス、クロストリジウムに属する29の新菌種を発見、命名、記載しました。


ベルリン自由大学留学時代

この頃、私はこれから腸内フローラの研究をどう進めてていくか考え、「腸内フローラと宿主とのかかわりあい(仮説)」を提唱します。
また、それまで混乱していた腸内フローラのカラーアトラス「腸内菌の世界?嫌気性菌の分類と同定」を出版し、国際的に極めて高い評価を受けます。

「腸内菌の世界?嫌気性菌の分類と同定」叢文社 (1980)

腸内フローラと健康(宿主)とのかかわりあい(仮説)1969年

「光岡学校」に集う研究者たち

1970年、主任研究員になった私の所に、各大学や企業研究所からさまざまな若い研究者たちが集まってくるようになり、「光岡学校」と呼ばれるようになりました。彼らは、それぞれのテーマを持ちながら、腸内フローラの培養・検索法を学ぶためにやってきたのです。

やがて、ヒトの腸内フローラについて、検索法・分類から生態までの基礎が固まると、多くの臨床医学者たちとの共同研究も始まりました。スモン、潰瘍性大腸炎、大腸ガン、乳ガン、アルツハイマー、糖尿病・・・、それぞれの腸内フローラを検索し、分析が進められていきます。

そんな中、1976年には、殺菌酸乳投与によるマウスの腸内ビフィズス菌増殖効果の発見は、ヒトがヨーグルトなどをとった場合の評価にそのままつながり、これが「おなかの調子をととのえる」特定保健食品の機能評価の条件となりました。


理研時代

私が腸内フローラの研究を始めてすでに半世紀を越えました。腸内フローラの検索法と多菌株接種・同定の開発から、腸内フローラの生態学的法則、腸内細菌機能の発見、そして、機能性食品の開発まで、一貫して好きな研究に没頭してきました。これらの研究は、これからますます重要なテーマになってくることは確実です。さまざまな他分野とのコラボレーションも次々と展開されていくことでしょう。無限に拡がる可能性に向けて、私も、まだ、これからやるべきテーマが山積しています。ぜひ皆さんも、この分野の研究にご注目いただければと思います。


1981年、ブルガリア長寿村訪問
? 101歳の長寿老人