日本人の4人に1人、約3,500万人が保有していると考えられている細菌がいるのをご存知ですか?それがピロリ菌です。胃炎や胃潰瘍、胃がんなどを引き起こす原因菌であることが明らかになっています。
ピロリ菌の正式名称はヘリコバクター・ピロリといいます。ヘリコバクターとは、「らせん状の細菌」のことで、1989年に新たに作られた属名なのです。胃の出口付近のピロルス(幽門部)から多く見つかることから、「ヘリコバクター・ピロリ」と命名されました。その大きさは2・5~5マイクロメートルほど。
ヒトの胃の粘膜が出す粘液の主成分の糖タンパク質、ムチンを栄養源として、酸素が少なくても生きられる「微好気性菌」です。感染者の胃の粘液中には、多いときには1m?中に10の7乗から8乗ほどのピロリ菌がいて、胃炎などの原因となる悪さをします。
さて、ピロリ菌は体の端に数本の鞭毛があり、これを使って動くことができます。胃は食物を腸へと送る働きをしていますが、その中でピロリ菌は鞭毛を1秒間に100回ほど回転させて、長い時間人間の胃の粘液の中にとどまることができると考えられています。
ピロリ菌
日本人の死亡率の第一位は「がん」です。その中でも胃がんは常に上位の疾患です。
胃炎や胃潰瘍、胃がんなどを引き起こす原因菌であるピロリ菌は、下水道の未整備による不衛生な状況や、母が子に食べ物を口移しで与えることなどで感染します。
幼いときにこのような状況下で一度ピロリ菌に感染すると、一生の付き合いとなってしまうのです。一度入ったピロリ菌はそのまま胃に留まり、胃の粘膜を傷つけて炎症を起こします。疾患の全てがピロリ菌によって発症するわけでは無いですが、胃潰瘍の70~80%、十二指腸潰瘍の90~100%がこの炎症によって発症することが分っています。