Femlink Lab.(フェムリンクラボ)

わたしと生理

かつてないほど月経回数が多い現代女性。
自分の体を知って前向きに生きて!

取材・文/大鳥定子  撮影/齋藤暁経  図版/三弓素青  編集/降旗正子(Paradise Lost) 企画・構成/日経BP 総合研究所

近年、女性ホルモンにまつわる不調に悩まされる人が増えてきています。それはなぜなのでしょうか。そして、その悩みを軽くするにはどうすればいいのでしょうか。
つらい月経痛(生理痛)もPMS(月経前症候群)のイライラも、セルフケアと婦人科医とのタッグという両輪で対処すれば、改善するのは難しいことではありません。
自分の体のことをよく知って、正しくコントロールし、前向きに生きてほしい――。女性ホルモンや女性の生涯にわたる健康に詳しい、女性ライフクリニック銀座・新宿 理事長の対馬ルリ子さんが女性たちにエールを送ります。

現代女性は生涯で、昔に比べて約10倍の月経回数を経験しています

 毎月やってくる月経。生涯でいったい何回経験するのか、想像したことがありますか? 実は、現代女性の月経回数は昔の女性に比べて格段に多くなっています。女性ライフクリニック銀座・新宿 理事長の対馬ルリ子さんは、次のように説明します。

 「昔の女性が生涯で経験する月経の回数は約50回でしたが、現代女性はそれよりもはるかに多く、約450~500回と推測されています。実に9~10倍も多くなっているんですね。昔は14~15歳くらいで初経を迎えると、結婚をして子どもを5人10人と産むケースが多かったのです。妊娠・授乳中は月経が止まりますから、たくさん子どもを産んでいると月経の回数自体が少なくなるのです。一方、現代女性の場合は、初経年齢は早まったのに、結婚や初産年齢は遅くなって出産回数が大幅に減少。その結果、一生の月経の回数がこんなにも増えることになったわけです」

 毎月、月経が来るのは当たり前と思いがちですが、長い歴史の中で見ると、それは現代特有の月経事情。現代女性は「月経が多すぎる人生」を生きているのです。

一生の大波と毎月の小波。女性ホルモンの揺らぎに伴い女性の体調は変化します

 10代前半で初経を迎えてから50歳前後で閉経に至るまでの約40年間、女性は常に女性ホルモンの影響を受けています。女性ホルモンとは、卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)のこと。これら2つの女性ホルモンが脳と連携を取りながら働くことで、月経周期が整い、妊娠・出産が可能になります。もちろん、毎月の月経が起こるのも女性ホルモンのなせる技です。

 女性ホルモンには、2つの“波”があります。1つは「一生の波」。初経を迎える思春期と閉経に至る更年期は、女性ホルモンが大きく揺らぐため、心や体のバランスが崩れやすくなります。いわば、女性ホルモンの大波に大きく揺さぶられる時期です。

 もう1つは、「毎月の波」。これは排卵や月経など、月経周期に伴って女性ホルモンが変動することで生じる波です。思春期や更年期のときの大波に比べると小さな波といえますが、それでもこの波に毎月揺さぶられて、心身の不調を覚える女性は決して少なくありません。

 「女性ホルモンの揺らぎは、自律神経や免疫、メンタル面などに様々な影響を及ぼします。月経前になるとイライラしたり、体調が悪くなったりするPMS(月経前症候群)に悩む人もいますし、月経が始まれば月経痛がひどくて学業や仕事に支障をきたすという人もいます。また、排卵のあたりでお腹が痛くなるという人も。なかには、気分よく過ごせるのは月経が終わってから4、5日だけで、それ以外はずっとイライラして体もだるいという人もいます」と対馬さん。

関連記事:「女性ホルモンと月経について知る」ことが「生活を快適にする」第一歩

 月経の回数がかつてないほど多くなった今、現代女性は月経に伴う痛みや心身の不調を抱えながら、学業や仕事、結婚、家事、育児……と、自らのライフコースを歩んでいるのです。あなたは、女性ホルモンに振り回されていませんか?

女性の健康は女性ホルモンの変化に影響を受ける(一生の大波)

(出典:一般社団法人「女性の健康とメノポーズ協会」の資料を基に作成)

毎月の小波にも約40年間影響を受ける

(出典:『年代別女性の健康と働き方』一般社団法人女性の健康とメノポーズ協会・編著を参考に作成)

排卵や月経回数の多さが女性特有の病気の発症リスクにもなっている

大幅な月経回数の増加がもたらすのは、月経痛やPMSだけではありません。病気になるリスクも高くなっている、と対馬さんは指摘します。

 「排卵や月経を何度も繰り返していると、子宮内膜症や子宮筋腫、卵巣がん、乳がんなどの病気の発症リスクも高くなります。子宮や卵巣、乳房は女性ホルモンの影響を受けやすい臓器だからです。たとえば卵巣がんは、排卵の多さがリスクの一つになっています。卵巣から卵子が飛び出す排卵は、卵巣にとっては一種の“爆発”。卵子が勢いよく飛び出すときに卵巣に傷ができるため、その都度、傷を治さないといけません。その過程で細胞の一部ががん化してしまうことがあるのです」

 現代女性は将来の病気予防も視野に入れて、自分の体を守っていく必要があります。

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痛いのは当たり前じゃない。
婦人科医とタッグを組み、
上手にコントロールを

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