Femlink Lab.(フェムリンクラボ)

10代から自分で月経の記録をつける。親や婦人科医に相談しやすい雰囲気作りを

 八田さんが「初経を迎えたらスタートしたい習慣」として薦めるのは、スケジュール帳や月経管理アプリに記録をつけることです。

 「初経を迎えたということは妊娠ができるくらい体が成長した証で、大人への第一歩です。小中学生でも親任せにせず、自分で月経が何日に始まってどのくらいの期間だったのか、『痛みが強くて学校を休んだ』『鎮痛薬を2回服用』『暴飲暴食をした』など、体調や気分の変化の記録をつける習慣をつけましょう。また、お母さんが、『私は部活の日に月経痛がひどくて大変だったことがあるけれど、あなたはどう?』などと自分の体験を話しながら様子を聞くようにすると、娘さんは月経のことを切り出しやすくなるかもしれません」(八田さん)

 ネガティブなイメージを持つと痛みが強くなってしまうことがあるため、月経について話すときには、嫌な印象やタブーな話題というイメージを与え過ぎないようにすることが重要なポイントです。

 「強い痛みで予定をキャンセルしたり、毎回鎮痛薬を服用して服用量が増えたりするような場合は、『月経困難症』という病気の可能性があります。この場合、早めに婦人科の受診につなげることも親の大切な役割です」と八田さんは話します。

 「月経困難症」とは、生活に支障があり毎回鎮痛薬が必要とするようなつらい月経症状がある病態。そのうち、病気や形態異常が原因ではないものを「機能性月経困難症」、子宮内膜症や子宮筋腫、また子宮の形態異常などが原因のものを「器質性月経困難症」と呼びます。

 小中高生の月経困難症は病気のない「機能性」であることがほとんどですが、海外では、「鎮痛薬や低用量ホルモン療法などの治療では効果のない10代女性を詳しく調べてみたところ、約6割に初期の子宮内膜症があった」との報告があります(※1)。以前は初経から7年程度経たないと子宮内膜症にはならないと考えられていましたが、最近は、2~3年で子宮内膜症が発症しているケースも報告されています。

 「実際に私も、子宮内膜症のある中学生を診察したことがありますし、10代で月経困難症があると、将来的に子宮内膜症や不妊になりやすいこともわかっています。月経困難症の場合、低用量ホルモン(ピル)や黄体ホルモン療法は保険診療で行え、治療をすれば痛みは軽減しますし、子宮内膜症に進展するのを防ぐこともできます。また、低用量ホルモン療法は受験などの大事な日と月経が重なるのを避けることも可能です。学生時代やキャリアアップの時期を快適に過ごすためにも、10代から月経のケアを身につけてほしいと思います。そのためには、婦人科をかかりつけ医にし、トラブルがあったらすぐに相談できるようにしておくと安心ですよ」と八田さんは提案します。

 相性のいいかかりつけの婦人科は、長い人生の健康の相談役として、子どもの財産にもなります。そのためには何軒か婦人科を受診してみるしかないのですが、例えば、子宮頸がんワクチン接種の機会を子どもの婦人科デビューと位置付け、小児科や内科ではなく、親が評判のいい婦人科を探してワクチンを受けてみるのも一案です。

※1:Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol.2017;209:46-49
◆初経を迎えたら取り組みたい3つの習慣
  1. 毎周期、月経が始まった日と体調を本人が記録しましょう
  2. 母親自身の月経の様子や、困った経験などを娘に話しましょう
  3. かかりつけ医として長く付き合える婦人科医を探しましょう

 特に婦人科を受診すべきは、下記の月経トラブルのチェックリストに心当たりがあるときです。「3カ月以上月経が来ない」ときには、続発性無月経のほか、妊娠の可能性もあります。1つでも当てはまるようなら、早めに婦人科を受診してみてください。

◆こんな月経トラブルがあったら、病気が隠れているかも。婦人科受診を

(監修:八田真理子先生)

 10代の月経トラブルは、親が子の悩みに寄り添いながら生活習慣を整え、適切に婦人科医の力も借りて対処することがポイントです。10代の頃から自分の月経についてきちんと理解し、対処法を知っておくことが、その子の一生の「健康力」を上げることにつながります。

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