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月経になりそうと感じたら、鎮痛薬で発痛物質の分泌をブロック

 では10代の月経痛は、「我慢する」のが正しい対処法なのでしょうか?

 「我慢せず、早めに鎮痛薬を服用してほしいです。鎮痛薬は市販薬でも、医師の処方薬でも構いません。重要なのは服用するタイミング。痛くなりそうと感じたとき、あるいは少し痛みが出始めたときに、とにかく痛みがひどくなる前に早めに服用するのがポイントです」と八田さん。

 「月経痛が起こるのは、子宮内膜がはがれ落ちて子宮が収縮するときに、痛みのもととなるプロスタグランジンという発痛物質が出るからです。鎮痛薬には、この発痛物質の分泌を抑える作用があります。『月経のたびに鎮痛薬をのんだら、くせになったり効かなくなったりするのではないか』などと考えている保護者もいるようですが、それは間違いです。むしろ我慢し過ぎると、脳の神経が敏感になって、それまで反応しなかった程度の痛みでも『痛い』と感じるようになってしまいます。用法用量を守っている限り毎月使ったとしても問題はありません」と八田さんは指摘します。

 毎回月経痛があるようなら、学校でもすぐに服用できるように、鎮痛薬をスクールバッグに常備しておくとよいでしょう。その際、空腹時の使用は避け、クッキーや弁当の一部でもいいので、何か食べた後にのむことをお薦めします。

 一般的には、月経時に下腹部の痛みや頭痛、吐き気などの不調があったとしても、早めに鎮痛薬を服用すれば、学校生活に支障がない程度にまで症状が改善するとされます。

 ただし、痛みが以前よりひどくなっている場合や、規定量の鎮痛薬を使っても症状が軽くならない場合は、痛みの背景に病気が隠れている場合があります。病気が疑われる場合の月経痛の対処法については、後半でお伝えします。

無理なダイエットや精神的ストレスは無月経の原因に

 受診するほどでない痛みの場合は、鎮痛薬の服用と併せて、日々の生活習慣を整えることに取り組んでください。

 ポイントは「無理なダイエットや偏食は避け、しっかり、鉄分、たんぱく質などの栄養と睡眠を取ること。そして、精神的なストレスは軽減し、体を冷やさないようにして、適度な運動を心がけること」(八田さん)です。

 栄養や運動が不足して体力が低下していたり、血流が悪くなっていたり、睡眠不足だったり、精神的ストレスが強いと、痛みを感じやすくなります。

 また体と心が大きく成長する10代でのダイエットは、特に危険です。女性は将来の妊娠・出産に備えて、小学校高学年くらいから乳房が膨らんで丸みを帯びた体つきになり、皮下脂肪がついていきます。それを気にする女子もいますが、骨や生殖器など重要な臓器の機能が整う10代に栄養が不足したり、必要な体脂肪が不足したりする原因となるダイエットは、その後の健康維持のためにも禁物です。

 月経前に食欲が増しチョコレートなどの甘いものを食べたくなる人が多いのも、妊娠・出産、あるいは、子宮に炎症が起こってカロリー消費量が増える月経に備えるためで、体が栄養を必要としているからです。

 無理なダイエットによる栄養不足や精神的なストレスは、15歳以上で初経が来る「遅発月経」、妊娠以外で3カ月以上月経が停止する「続発性無月経」の原因にもなります。

 実は、体脂肪と女性ホルモンと月経は密接に関係しています。女性ホルモンは、将来の出産・妊娠のために不可欠であり、動脈硬化や骨粗しょう症などから女性の体を守ってくれています。この女性ホルモンは脂肪細胞から作られるため、体脂肪率が月経周期を安定させるカギを握っているのです。初経が来るためには体脂肪率が17%以上、月経周期が整うためには22%以上の体脂肪率が必要とされています。

 「特に10代は、卵巣機能が未発達で女性ホルモンの分泌が不安定なので、体脂肪率がそこまで低くなくても、突然月経が止まってしまう続発性無月経が起こりやすいです。ちょっとしたストレスやダイエット、部活などの激しい運動で月経が止まることがあり、そのまま放置するとけがや疲労骨折をしやすくなります。一生分の骨の基礎を作る10代に女性ホルモンの分泌が下がってしまうと将来の骨粗しょう症のリスクに直結しますし、無月経が続くと不妊になりやすくなるので要注意です」と八田さんは強調します。

睡眠不足や体の冷えで痛みは増大、生活習慣の改善を

 さらに、昔からいわれているように、下半身の冷えは10代に限らず女性にとって大敵です。カイロの使用や入浴などで体を冷やさないようにすることは、痛みの軽減につながります。入浴時の経血が気になる人は、タンポンや月経カップを試してみるのも手です。

 「性交経験がないと、タンポンが使えないと思い込んでいる女性もいるようですが、そんなことはありません。小学生でも簡単に使えるアプリケーター(筒状の補助具)付きのタンポンも販売されていますし、月経カップを使う方法もあります。タンポンや月経カップを使えば、月経中の水泳も可能ですし、経血が多いときに下着や衣服を汚す心配も減ります。怖がらずにこうしたグッズも使ってみて、月経中を少しでも快適にしてほしいです。ただし、長時間タンポンや月経カップを入れたままにすると細菌に感染する恐れがあるので、抜き忘れがないように注意しましょう」(八田さん)

 月経痛がある人がすべて、生活習慣に問題があるわけではありませんが、日々の生活習慣を見直すだけで症状が軽くなる人も少なくないといいます。月経痛が強い人は、まず食事・睡眠・運動・ストレス管理などの生活チェックから始めてみてください。

◆10代の月経の悩みを軽減する生活見直しポイント
  1. 極端なダイエットはしない。バランスの良い食事を
    日頃から鉄分、たんぱく質の多い食生活を心がけ、むくみのもととなる塩分や水分の過剰摂取は控えましょう。極端な食事制限で体重を減らし過ぎないこと。月経前と月経中は神経を過敏にするカフェイン飲料も控えめに。
  2. ストレスケアをしよう
    心と体を休め、心配事や不安があったら友人や親、きょうだい、先生など信頼できる人に相談しましょう。音楽鑑賞や軽いストレッチなど自分なりのストレス発散法を見つけると気持ちが楽になります。SNSとの付き合い方を親娘で確認することも大切です。
  3. 睡眠を十分に取る
    体と心の調子を整え、成長を促すには睡眠をしっかり取ることが重要になります。受験生であっても睡眠時間は削らず、特に月経前はエネルギーを蓄えるために30分でも早く布団に入りましょう。
  4. 下半身を冷やさない
    下半身が冷えると血行が悪くなって痛みが増大します。カイロや入浴で体を温めましょう。月経前と月経中のミニスカートの着用は避け、レッグウォーマーやルーズソックスなどで特に足首を冷やさないようにするのがポイントです。
  5. 軽い運動
    ラジオ体操、ストレッチなどで体を動かすことで足腰の血行がよくなり、ホルモンバランスも整います。ただし、体脂肪と体重が減り過ぎると、続発性無月経になるリスクがあるので、激し過ぎる運動は避け、無月経になってしまったら治療を受けましょう。
(監修:八田真理子先生)

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