最終的には“女性活躍”などとわざわざ言わなくてもいい社会を目指したい
プロジェクトチームではこの「月経プログラム」に加えて、「妊活プログラム」と「更年期プログラム」もスタート。更年期プログラムではセミナーと症状についてのオンライン診療・相談、漢方薬の処方に加え、更年期の悩みを婦人科医にチャット形式で相談できる「更年期チャットサービス」も導入しています。妊活プログラムのオンライン相談は、社員とパートナーが一緒に受診でき、女性社員だけではなく男性社員も対象にしています。これらの3つのプログラムは、企業向けのフェムテック総合サービスとして販売を開始し、すでに十数社が利用を始めています。
一方、企業にとっては、支援の導入によってどれほどの経済効果が見込めるのかも気になるところです。丸紅では、「月経随伴症状の重度社員2%、中等度社員17.5%(合計19.5%)という製薬企業の調査の結果をベースに、社員の給与を日当3万円と仮定した場合、1人当たりの労働損失改善額は年間約19.4万円。39歳以下の女性社員約640人のうち中度〜重度の月経随伴症状のあると想定される19.5%に当たる125人の女性社員のパフォーマンスが、月経プログラムによって改善すれば、年間約2,425万円の損失改善が見込まれる」と試算しています(下表参照)。
「月経プログラム」の労働損失改善効果と試算結果
「こうしたフェムテックサービスは、健康経営に有効だと考える企業もある一方で、『なぜ、女性だけを支援する必要があるのか』といった見方をされるところもまだあるのが現状です。私は、典型的な男性社会といわれる総合商社の当社だからこそ、働く女性にとって避けられない月経や妊活、更年期の問題に今、取り組まなければ、企業として弱体化してしまうと感じていました。実際、社内で月経、妊活、更年期のセミナーを開催したことで、男性社員の女性の健康問題に対する理解は格段に深まったという手ごたえがありますし、女性社員が不調をケアすることで実際にパフォーマンスが上がることも明らかになりつつあります。多様な人材が活躍するためにもダイバーシティ&インクルージョンが企業の価値や競争力を高める時代ですから、女性特有の健康課題も個人の努力で終わらせるのではなく、企業における経営課題として取り組む必要があると改めて考えています。当社のフェムテックサービスを利用してくださる企業を増やして月経のトラブル、妊活、更年期症状などがキャリア形成の障害になる事態を減らし、最終的には、“女性活躍”などとわざわざ言わなくてもいい社会を目指したいです」と野村さんは話します。