Femlink Lab.(フェムリンクラボ)

社会と生理

女性の健康について会社全体で学び、ケアすることを目指す、丸紅の「月経プログラム」

取材・文/福島安紀  図版/三弓素青  編集/降旗正子(Paradise Lost) 企画・構成/日経BP 総合研究所

月経痛がつらかったり、月経前症候群(PMS)で頭痛に苦しんだり気持ちが不安定になったりしたとき、「同僚や上司がもう少し理解してくれれば働きやすいのに……」と考えたことはないでしょうか。
社員の健康管理を経営的に考えて戦略的に実践する「ウェルビーイング経営」を進める企業が増えるなか、月経痛や更年期症状など女性特有の健康課題を社員で共有したり、その解決ツールを社員に提供したりする企業も出てきています。
その一つ、総合商社の丸紅は、女性社員中心のプロジェクトチームを結成して女性の健康を支援する新規事業への進出を模索、自社の社員向けにも「月経」「妊活」「更年期」の3つの健康課題の解決に向けたプログラムの提供をスタートさせました。2020年12月にはフェムテックプロジェクトチームを立ち上げ、21年7月からはエムティーアイ、カラダメディカとの共同事業として、女性特有の健康課題の解決のため、他の企業のサポートにも乗り出しています。社内の役員や男性社員からも大きな反響があったという同社の取り組みを紹介します。

男性社員も参加するオンラインイベントで、女性が抱える健康上の悩みについて学ぶ

 女性特有の健康課題やフェムテックについて関心が高まるなか、総合商社の丸紅の経営企画部 国内事業推進課の野村優美さんは「今、働く女性の健康をサポートする制度を企業が導入しないと、日本の競争力はどんどん下がってしまう」と危機感を抱いていたといいます。「男性社会といわれる総合商社だからこそ、女性の健康についての理解を全社員が深め、サポートする施策が必要だし、そのノウハウをパッケージにして、他社に提供するビジネスも可能ではないかと考えたのです」。
 そこで、就業時間の15%までを新規事業のため自由に使えるという、丸紅の社内副業制度「15%ルール」を使い、このテーマに興味を持った希望者を集めました。ICT(情報通信技術)やファッション・アパレル分野、海外からも社員が集まり、2020年、同社初の女性のみのチームによる「フェムテック プロジェクト」を立ち上げました。

 チームが最初に実施したのは、2020年12月に開催した社員向けのオンラインイベントです。まずは、女性特有の健康課題の解決というテーマの重要性を理解してもらい、どんな問題を女性が抱えているのか、解決策にはどんなものがあるのかを社内で共有することが目的でした。男性にも興味を持ってもらい、イベントへの参加のハードルが下がるようにと、事前に複数回の社内メールマガジンを発行し、徐々に盛り上げる作戦を取りました。その結果、イベントには約200人が参加し、そのうち約4割が男性でした。

 参加した男性社員からは、「女性が抱えている健康課題について男性も知り、リテラシーを上げることで、コミュニケーションの活性化にもつながって、結果的に全社のパフォーマンスが上がるのではないか」などの声が聞かれました。また女性社員からは、「生理休暇を周りでとっている方がおらず、痛みに耐えながら業務を行った経験がある」「PMS時の眠気と決算業務が重なり、トイレで少し仮眠したりしていた」など、これまで社内で話題にならなかったような悩みも寄せられました(下図参照)。

オンラインイベント後のアンケート結果

(出典:丸紅提供資料を基に作成)

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学びとオンライン婦人科受診をセットにした「月経プログラム」をスタート

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