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社会と生理

職場で、男女一緒に月経を学ぶ機会を作ってみよう。仕事の効率が上がり、家庭も円満に

取材・文/福島安紀   イメージ写真/PIXTA  編集/降旗正子(Paradise Lost)  企画・構成/日経BP 総合研究所

学校で、体の性差などについての授業を受けた記憶がありますか? 多くの方が「いいえ」と答えるのではないでしょうか。
特に、今すでに大人になっている世代は、性別を問わず、月経や、女性がホルモンの影響をどんなふうに受けているのかなどを学ぶ機会はほとんどなかったはず。そのせいか、男性はもちろん女性同士でも、月経を話題にするのはタブーといった風潮があり、月経痛やPMS(月経前症候群)の悩みがあっても言い出せない、つらそうと思ってもどう声をかけていいかわからないといった戸惑いがあるようです。
こうした状況を変えるにはどうしたらいいのでしょう。また、男性はどのようにふるまったらいいのでしょう。ミズクリニックメイワン院長・奈良県立医科大学名誉教授の小林浩さんと考えてみました。

 月経については、男性だけでなく女性でも誤解している人が少なくありません。まずは、下の「月経検定」にチャレンジしてみましょう。5つの質問に〇か×かで、答えてみてください。全問正解したら、合格です。

「月経検定」にチャレンジ!
  1. 月経中に下腹部が痛いのは当たり前。
  2. 月経があれば、必ず排卵をしている。
  3. 排卵期や月経前にもつらい症状が出ることがある。
  4. 月経痛があるのは、その女性の生活が乱れているから。
  5. 月経痛や過多月経などの月経異常は病気のサインかもしれない。

【回答と解説】
1)× 下腹部が痛いなどの月経痛があるのは当たり前ではありません。個人差が大きいのは事実ですが、強い痛みがある場合には病気のサインかもしれません。

2)× 月経があるからといって必ず排卵しているとは限りません。排卵せずに出血することもあるからです。また、一般的に35歳を過ぎると卵巣機能が徐々に低下し、閉経が近づくにつれ、無排卵月経の頻度が増えてゆきます。

3)〇 月経中だけではなく、排卵期や月経前にも体や心に不調を感じる人は多くいます。排卵期に排卵痛がある人のほか、月経前に女性ホルモン(エストロゲン[卵胞ホルモン]およびプロゲステロン[黄体ホルモン])が変動することが主な原因で、イライラ、気持ちの落ち込み、不安などが強くなり、精神的に不安定になる人も少なくありません。

4)× 月経痛は、月経のある女性であれば誰にでも起こる可能性があります。生活が乱れているなど、本人のせいで症状が起きているのではないことを知っておきましょう。

5)〇 月経はバイタルサインの一つでもあります。20代以降のひどい月経痛の背景には子宮内膜症など、また出血の多い過多月経の背景に子宮筋腫などの病気が隠れている可能性があります。月経の異常に気づいたらまず、婦人科で検査を受けてみてください。

職場や学校で男女一緒に月経について学ぶ機会が必要

 「全問正解でなくてもがっかりしないでください。日本では、学校などで月経について学ぶ機会がほとんどなく、保健体育の教師や運動部の顧問でさえ、月経関連のトラブルについてよく知らないのが実情です。ですから、一般の方が知らなくても仕方がない面もあるのです。とはいえ、女性が月経関連の悩みを抱え込まず、また、月経による困りごとが家庭や会社や社会に及ぶのを減らすためには、まずは職場や学校で、男女一緒に、月経や女性のホルモン周期について学ぶ機会を作る必要があります」。ミズクリニックメイワン院長で奈良県立医科大学名誉教授の小林浩さんは、こう指摘します。

 2017年に小林さんたちが、全国の中学校と高校の学校長と養護教諭、保健体育科や運動部顧問の教師を対象に実施した調査(日本子宮内膜症啓発会議のスポーツ庁プロジェクト)によると、例えば、「月経に関係する症状で勉強および運動へ障害があると訴えている女子生徒の率は約80%」という事実を知らなかった教師が約95%。部活動などの影響で無月経になる中高生も少なくありませんが、約40%もの教師が「無月経になると骨密度に影響がある」事実を知らなかったといいます。

 さらに、「この調査でわかったのは、月経痛がつらいことはある程度理解していても、月経前の気分の低下やイライラ感、むくみ、乳房の痛みなどPMSと呼ばれる症状が、女性たちの日常生活に支障をきたしていることを知っている人が少ないことです。この傾向は、男性だけではなく女性にも見られ、女性だからといって月経やPMSについて理解しているとは限らないこともわかりました。私が、職場や学校で、男女一緒に月経のことや女性にはホルモンの周期があることを学んだほうがよいというのは、知識の共有ができるというだけではなく、女性自身も月経痛やPMSの原因や対処法、他の女性のつらさを知る必要があるからです」(小林さん)。

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調子の悪いときに助け合える環境作りを

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