Femlink Lab.(フェムリンクラボ)

仕事の効率を上げるためにも、調子の悪いときに助け合える環境作りを

 最近は、女性の活躍や健康経営の推進の観点から、月経に関連する社員研修を始めている企業も少しずつ増えているようです。

 女性社員の多いある企業が約2500人の社員を対象に、2019年と20年に、産婦人科医による月経に関する研修を行ったところ、月経痛やPMSで仕事に支障をきたす社員の割合と月経痛による欠勤率が研修前と比べて低下し、全体的に仕事のパフォーマンスが向上したといいます。

 「また、別の調査では、月経関連の不調があるためにリーダーになることをあきらめたことがある女性が約60%もいたという結果もありました(※)。能力の高い女性が活躍できるようになるには、仕事の協働作業化を進め、月経痛やPMSなどで体調が悪いときには気兼ねなく早退したり休んだりし、婦人科へ受診できること。そのときには、他のメンバーがカバーするという風土や空気を作ることでしょう。そういう環境作りをすれば、女性は普段から最大限、力を発揮しようとするでしょうし、男性も働きやすくなります」と小林さん。

 職場で男女一緒に月経に関する研修を受け、その際に、上司の側から部下に対して、具合が悪いときにはチームの仲間にフォローしてもらえばよいことを伝えれば、女性も月経痛やPMSがあるときに無理せずに済みます。気を付けたいのは、このときに個人の月経周期の情報を共有する必要は必ずしもないということ。上司自身が理解していることで、職場の雰囲気や部下への対応が変わってくると思うのです。わかってもらえているという安心感を得られるだけでも、女性にとっては体や心の負担が軽くなり、月経関連の症状が軽減することもあるかもしれません

 さらに小林さんは、働く女性の対策の1つとして、精神的に不安定になりやすい月経前には、できるだけ重要な契約、決断、プレゼンテーションなどを入れずに、1週間程度後に延期したり再検討したりする機会を持つことをすすめています。これを実行するためにも、まずは自分の体について、しっかりと理解することが大切です。

※「ホルモンケア推進プロジェクト調査」2014年12月実施。PMSによる昇進への影響

企業や職場で実践したい、女性の月経や妊娠に対する3つの取り組みポイント
  1. 月経関連の症状と女性のホルモン周期について男女共に学ぶ機会を作る
  2. 協働作業で仕事を進め、調子が悪い人をフォローしあえる環境作り
  3. 多様な働き方を認め、月経関連症状が強い女性、不妊治療中、子育て中でもキャリアアップできる職場に

働き方改革の一環としてワークシェアリングを実現

 小林さんが2020年3月まで教授を務めた奈良県立医科大学附属病院産婦人科では、働き方改革の一環として、1人の患者さんを1人の医師が担当するのではなく「複数主治医制」「当直医制」を導入しています。そうすることで、夜中に急患で呼び出されるということが減り、調子が悪いときには仕事を早く切り上げたり、県外や海外で開かれる学会に参加したりと、自己研鑽の計画も立てやすくなり、自己管理がしやすくなったといいます。

 また、同大学の産婦人科の医局では女性医師が増えていますが、子育てと仕事を両立しやすい環境を整備することで、産休・育休後もほぼ全員職場復帰しているといいます。

 「企業内で協働作業やワークシェアリングが進めば、月経関連の症状や妊娠するための生殖医療、出産のためにキャリアアップをあきらめる女性が減り、活躍の場が広がるはずです。新型コロナウイルス感染症の拡大によって、在宅ワーク、リモートワークが急速に普及するなど多様な働き方が選択できる環境が整いつつある今こそ、協働作業で仕事を進める環境を整備するチャンスです」と小林さんは強調します。

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家庭内のトラブルも回避が可能に

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