世界で初めて、ヨーグルトが健康寿命のためにいかに優れているか科学的に実証したノーベル賞学者
イリア・メチニコフ(1845~1916)
「免疫食細胞説」でノーベル賞を受賞したメチニコフは、晩年、老化は腸内腐敗により加速されるという説を唱え、自らブルガリアヨーグルトを食べ証明しようとしました。彼の主張が正しかったことは、現在も「プロバイオティクス*1」という言葉になり証明されています。
1845年、ウクライナで生まれたメチニコフは、地元の大学で原生生物の研究を始め、その優れた研究成果からヨーロッパ各地の大学、研究機関に招聘され、動物、食細胞学者として高い評価を得ていきます。
そして、1882年、南フランスを中心にコレラが流行した時、彼はその地へ赴き、仲間とともにコレラ菌を飲みます。しかし、二人はコレラに未感染であるにもかかわらず、仲間は発病し、彼は発病しませんでした。そこで彼は、腸内に棲みついている細菌叢(腸内細菌叢)の違いなのではないかと考えました。メチニコフは腸内にいる細菌が外来のコレラ菌と競合したためコレラ菌が増殖しなかったのに対し、感染した仲間は、腸内細菌の力が弱かったのではないかというのです。メチニコフが腸内細菌を取り上げたのは、おそらくこれが初めてのことだったと思われます。
その後、彼は当時の細菌学研究の最高峰、パスツール研究所*2に招聘され、一部門の責任者として精力的に研究活動を続けます。
やがて、50歳を越えたメチニコフは、老化の研究を本格的に開始したいと願うようになっていました。
メチニコフは、老化とは組織を構成している細胞が衰弱したために食細胞の餌食になってしまう現象であると考えました。腸内にある腐敗菌が出す毒素による慢性中毒がその老化の原因と捉えたのです。
高等な動物は、小腸と大腸をもっており、小腸は栄養分を吸収するのに不可欠な器官ですが、大腸は便を一時的に溜めておくだけの「先祖からの遺産」ですでに不用の器官と考えました。
しかし、不用だから切断するわけにはいきません。そこで、腐敗を防ぐにはヨーグルトの中に含まれる乳酸菌により腐敗菌*3の働きを抑えればいいと考え、長寿者が多いことで知られるブルガリアのヨーグルトを自らが摂る食事療法を始めました。その際、腸内に有害な菌を送り込まないようにするため、生のものはできるだけ食べないことも合わせて行い、亡くなるまで続けました。
この考えは、「人体の細胞群(フローラ)」として、1901年に発表しています
しかし、これらはまだ推論に過ぎず、メチニコフはこれを実証するため、さらに老化と腸内腐敗の研究に熱中します。