Femlink Lab.(フェムリンクラボ)

わたしと生理

フェムテックで自分の体を知り、「月経を語ること」のタブーを乗り越える

取材・文/大鳥定子  編集/降旗正子(Paradise Lost) 企画・構成/日経BP 総合研究所

女性特有の健康課題をテクノロジーで解決する「フェムテック(Femtech)」。Female(女性)とTechnology(テクノロジー)をかけ合わせた造語で、日本でも近年、さまざまなフェムテック商品が登場しています。
2019年に設立された「フェルマータ(fermata)」は、日本におけるフェムテック関連企業の先駆け的存在。CEOのAminaさん(写真左)は、「フェムテックは女性のヘルスケア課題解決の選択肢を広げると同時に、自分自身の体を知るきっかけにもなる」と話します。
タブー視されがちな月経の悩みを軽やかに乗り越える――。フェムテックにはそんな可能性も期待できそうです。

月経の悩みなど、女性の健康課題を解決する選択肢は多いに越したことはない

 生理用品から妊活サポート、産後ケア、更年期のウェルネス機器……。フェルマータでは海外などから多くのフェムテック商品を取り寄せ、東京・六本木や大阪・心斎橋にある実店舗や、全国の提携ショップ・クリニック、同社が運営するオンラインショップで販売しています。

 月経関連のフェムテックで話題となっている商品としては、「吸水ショーツ」と「月経カップ」が代表的。吸水ショーツは優れた吸水性で、ナプキンやタンポンと併用もできるアイテムで、月経カップは膣の中に入れて経血をためるシリコン製の医療機器です。メディアなどでも取り上げられ、新しい生理日の選択肢として注目されています。

 「日本では1961年にナプキンが医薬部外品に指定されて以来、生理用品の主流はずっとナプキン。タンポンもありますが、使用している女性は1、2割に過ぎず、ほとんどの女性がナプキンを使っています。女性にとって月経は毎月経験するものなのに、選択肢は限られているのが実情なんですね。他にもこんな選択肢があるよ、トライしてみませんか、使ってみたら全然違う世界が見えるかもしれませんよ……と、そんな気持ちで商品を紹介しています。女性の健康課題を解決する選択肢は多いに越したことはありません」とAminaさんは話します。

2020年にオープンしたニューヨーク発のセレクトショップ「New Stand」の米国外初・アジア初店舗「New Stand Tokyo」(東京都港区)。コンセプトは“未来の日用品店”。フェルマータとの協業でフェムテック関連商品を中心に取り扱っている。吸水ショーツ(写真後方)や月経カップ(写真中央)などを実際に見て、手で触れることができる。(写真提供:フェルマータ)

 Aminaさんは父親の仕事の関係で10歳のときにアフリカのタンザニアへ。その後、イギリスやドイツで学び、さらに東京大学大学院とロンドン大学大学院で公衆衛生学を修めました。フェムテック市場に飛び込んだ背景には、幼い頃に暮らしたタンザニアでの経験が大きく影響しているといいます。

 「絶対的な貧困の中、マラリアなどの感染症にかかっても高額な薬を買えず、命を落とす人が少なくありませんでした。私には自由に受けられる医療が、現地の友達には受けられない。そういった不平等な現実を目の当たりにして医学に関心を持つようになり、大学院では医療や医薬品にどうアクセスするかを専門に学びました。実は、月経をはじめとした女性の健康課題にも“アクセス”の問題が深く関わっています。どんなプロダクト(商品)にアクセスできるか、どれだけ選択肢があるかで、女性のヘルスケアや生きやすさが変わってくるからです

 多くの女性が「仕方がない」「我慢するしかない」と思っていた心身の悩み。フェムテックはプロダクトを通して、そんな悩みの解決策を指し示してくれると、Aminaさんは話します。

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人には話しにくい月経の悩みも“モノ”を間に置くと会話ができる

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