感染症の種類や特徴は?感染経路や予防法・対策を解説

知る 2020.06.11

感染症とは、細菌やウイルスなどの「病原体」が体内に入り込んで悪さをする病気のことです。世の中には数多くの感染症があり、それぞれ症状や特徴が異なります。また、病原体が体内に侵入する経路もさまざま。当然、予防方法も異なります。
そこで今回は、感染症の種類や特徴、それぞれの感染対策法について詳しく解説します。

感染症とはどんな病気?

私たちの生活の中には、さまざまな病原体が存在しています。「感染症」と一まとめにしても、症状や重症度、治療法、治るまでの期間などは病原体によって大きく異なるもの…。
まずは、感染症とはどのような病気なのか、どのような種類があるのか詳しく見てみましょう。

感染症とは?

感染症とは、空気・水・土・動物(人も含む)に潜んでいる「病原体」が体内に侵入することによって引き起こされる病気です。
「病原体」は、人の体内に入り込むと悪さをする微生物のこと。人の体内に侵入すると、発熱、腹痛、下痢、嘔吐(おうと)、皮疹(ひしん)…さまざまな症状を引き起こします。そして、体内で増殖した「病原体」は唾液や便、鼻汁、痰(たん)などと共に体外へ排出され、また別の人の体内に入り込んで増殖を繰り返す…こうして感染症は拡がっていくのです。

では、感染症を引き起こす「病原体」にはどのようなものがあるのでしょうか?

私たちの身近には数多くの「病原体」が潜んでいます。

代表的なものとしては、インフルエンザウイルスやノロウイルスなどのウイルス、腸管出血性大腸菌やコレラ菌などの細菌が挙げられます。誰でも一度は風邪をひいて発熱、のどの痛み、下痢などの症状に襲われたことがあるでしょう。これらの症状を引き起こす病原体の多くは、ウイルスや細菌です。

また、カンジダや水虫、アスペルギルスなどカビや酵母といった真菌類も感染症を引き起こすことがあります。実は、これらの真菌類は健康な方の皮膚や口の中にも存在するもの。通常は身体の免疫力が勝って、真菌の増殖は抑えられています。しかし、疲れが溜まったときや体調を崩したときなど、免疫力が低下しがちになると、真菌の増殖が抑えられなくなってさまざまな症状を引き起こすようになるのです。

そのほか、マイコプラズマやクラミジア、スピロヘータなど特殊な微生物も感染症の原因になります。また、衛生環境が整った現代では少なくなっていますが、回虫や蟯虫(ぎょうちゅう)などによる寄生虫症も感染症の一種です。

感染症の種類

ウイルス、細菌、カビ…私たちの身の回りには数多くの「病原体」が潜んでいます。
感染症の種類を決めるのは、体内に入り込んだ「病原体」―。つまり、「病原体」の数だけ感染症の種類があるということです。

日本には、感染症を予防し、広範囲に拡がったときに正しい対処ができるよう定めた「感染症法」という法律があります。感染症法では、世の中にあるさまざまな感染症を以下のような8つの種類に分類。それぞれの種類によって、強制的な入院勧告や就業制限など感染拡大を予防するために行われる措置が異なります。

具体的にどのような種類に分類されているのか見てみましょう。

  • 一類感染症
    感染力が強く、発症した場合は非常に重篤な状態に陥る可能性があるきわめて危険な感染症です。原則的に入院が勧告され、場合によっては交通制限が発動されることもあります。
  • 二類感染症
    感染力が強く、発症した場合は重篤な状態に陥る危険が高い感染症です。必要に応じて入院勧告が出され、一定期間食品を取り扱う業務に就くことができなくなります。
  • 三類感染症
    発症した場合に重篤な状態に陥る危険性は少ないものの、特定の職業に就業することによって集団発生を引き起こす可能性がある感染症です。一定期間、食品を取り扱う業務に就くことができなくなります。
  • 四類感染症
    主に動物を介して感染が拡がり、健康に影響を与える恐れの高い感染症です。対象となる動物の輸入禁止や検閲強化などの措置が取られます。
  • 五類感染症
    発生動向を調査し、その情報を国民や医療従事者に周知することで、発生予防に役立つと考えられる感染症です。
  • 新型インフルエンザ等感染症
    人から人に感染することが分かった新しいタイプのインフルエンザです。多くの方が免疫を持っていないため全国的に大流行し、発症すると重篤な状態に陥る可能性があると考えられています。必要であれば、一類感染症と同様の対処が取られることがあります。
  • 指定感染症
    すでに知られている感染症の中で一類~三類感染症には分類されていないものの、適切な対処を講じなければ多くの国民の健康に重大な影響を及ぼすと考えられる感染症です。
    原則一年間に限定して政令で指定され、一類~三類に準じた措置がとられます。
  • 新感染症
    新たに人から人に感染することが認められ、発症すると重篤な状態に陥る危険が極めて高いと考えられる感染症です。行政機関による措置はそれぞれの危険性を考慮した上で決められます。

また、感染症法の対象となる主な感染症は下表の通りです。

一類感染症 エボラ出血熱、クリミア・コンゴ熱、痘(とう)そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱
二類感染症 ポリオ、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(SARSウイルス感染症)、結核、鳥インフルエンザ
三類感染症 腸管出血性大腸菌感染症、コレラ、細菌性赤痢、腸チフス、パラチフス
四類感染症 E型肝炎、A型肝炎、黄熱、Q熱、狂犬病、炭疽、鳥インフルエンザなど
五類感染症 インフルエンザ、麻疹、ウイルス性肝炎、後天性免疫不全症候群(エイズ)、性器クラミジア感染症、梅毒など
新型インフルエンザ等感染症 新型インフルエンザ
新感染症 現在は該当なし

感染症の主な感染経路にはどんなものがある?

次に、病原体がどのような経路で人の体内に入り込むか見てみましょう。

感染症には主に次の4つの感染経路があります。

接触感染

感染者の体内から排出された病原体や自然界に潜んでいる病原体に触れ、それを体内に取り込んでしまうことで感染する経路です。

病原体となる微生物は目には見えない大きさであるため、私たちは知らず知らずのうちに病原体に触れてしまっている機会は多々あります。そして、病原体が付着した手で鼻や口、目などをこすると、そこから病原体が侵入。感染症を引き起こすのです。

飛沫感染

病原体が含まれた感染者の咳やくしゃみ、会話などで生じるしぶき(飛沫)が周囲の人の口や鼻に入り込むことで感染する経路です。

咳やくしゃみのしぶきは思いのほか遠くまで飛散するもの。半径2mの範囲に及ぶため、感染者のすぐ近くにいなくても、気づかぬうちに感染してしまう可能性は十分にあります。

空気感染(飛沫核感染)

感染者から排出された病原体の含まれるしぶき(飛沫)の水分のみが蒸発して、内部の病原体だけが空気中に浮遊。それを吸い込んでしまうことで感染する経路です。病原体は一定時間、空気中を漂い続けるため、同じ空間にいるだけで感染してしまうリスクがあります。

<飛沫感染と空気感染の違い>

飛沫感染と似た経路と思われがちですが、飛沫感染を生じる病原体は人の体外に排出されるとしぶきと共に床や机の上などに落ちていきます。しぶきの水分が蒸発しても空気中を漂うことはありません。このため、単に同じ空間にいたからといって感染してしまうことはないのです。

ですが、医療現場などでは感染者の喀痰吸引などの医療行為を行う際に、本来なら飛沫感染する病原体が空気中の水分と混じり合って「エアロゾル」を形成することがあります。エアロゾルは通常のしぶきと異なり、長時間空気中を漂う性質があります。このため、空気感染のように同じ空間にいるだけで感染してしまう危険があるのです。

経口感染、糞口感染

経口感染は、病原体が付着した飲食物などを口にすることによって感染する経路です。
一方、感染者の便に含まれる病原体に触れ、それが口から体内へ入る感染経路を糞口感染と呼びます。

それぞれの感染経路を持つ主な病原体は下表の通りです。

接触感染 インフルエンザ、咽頭結膜熱
飛沫感染 インフルエンザ、風しん、百日咳、流行性耳下腺炎
空気感染 麻しん、水痘、結核
経口感染 ノロウイルス感染症、ロタウイルス感染症

かかりやすい感染症

感染症の種類は非常に豊富です。しかし、日本国内で生活している分には、すべての感染症にかかる可能性があるわけではありません。また、年齢によってかかりにくい感染症とかかりやすい感染症も…。一般的に国内では、次のような感染症がかかりやすいとされています。

一般的にかかりやすい感染症
  • インフルエンザ
  • 感染性胃腸炎(ノロウイルスなど)
子どもがかかりやすい感染症
  • 麻しん(はしか)
  • 風しん
  • 水痘(水ぼうそう)
  • 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
  • 手足口病
  • ヘルパンギーナ
  • 咽頭結膜熱(プール熱)
高齢者がかかりやすい感染症
  • 肺炎
  • 結核
  • 白癬

感染症と免疫力

私たちの生活のなかには、さまざまな病原体が存在しています。しかし、病原体を体内に取り入れてしまったからといって、全ての方が感染症にかかるわけではありません。

私たちには、外から侵入してきた病原体を攻撃して身体を守る「免疫力」というものが備わっています。この「免疫力」の働きが強いほど感染症にかかりにくくなり、「免疫力」が弱くなると感染症にかかりやすくなるのです。

では、感染症と免疫力の関係を詳しく見てみましょう。

免疫が感染症から身体を守るしくみ

血液では…

わたしたちの血液には、病原体と戦うためのさまざまな細胞が含まれています。生まれながらにして持っている細胞には、病原体の存在を感知する「樹状細胞」、病原体を捉えて分解する「マクロファージ」や「好中球」、ウイルスを破壊する「NK細胞」などがあります。これらの細胞は、体内に病原体が侵入すると活発に活動するようになり、細胞自体が病原体を攻撃。病原体が悪さをする前に破壊・分解するのです。

一方、私たちの身体には、一度感染した病原体の特徴を覚え、次に同じ病原体が侵入した際に攻撃を仕掛ける「抗体」が作り出される仕組みも備わっています。このような免疫系に関わるのは、前述の樹状細胞の他、B細胞やT細胞と呼ばれるリンパ球です。

体内に一度感染したことがある病原体が侵入すると、B細胞が「抗体」を産生。T細胞の一種は、直接病原体を破壊して身体を守ってくれるのです。

粘膜では…

体内に侵入した病原体が感染する、のどや腸などの表面は「粘膜」と呼ばれる組織で覆われています。そのため、粘膜にも病原体から身体を守る仕組みが備わっていると考えられています。

のどの粘膜には、線毛と呼ばれる細かい毛が密生。この線毛は、体内に入り込んだ病原体を素早くキャッチし、悪さを始める前に体外へ押し出す働きがあります。

一方、小腸の粘膜では、さまざまな病原体を攻撃する「IgA」と呼ばれる抗体が盛んに産生されることが分かっています。この「IgA」は腸内に侵入した病原体を攻撃するだけでなく、リンパを通して全身の粘膜に分布。腸内以外の免疫にも関与していることが分かっています。

このように、私たちの身体はさまざまな免疫の働きによって守られているのです。

感染症にかかりやすい人の特徴

免疫のしくみは健康な方であれば、生まれつき備わっている機能です。しかし、免疫のしくみは非常にデリケート…。些細なことが原因でうまく働かなくなってしまうことも少なくありません。その結果、感染症にかかりやすくなってしまうこともあるのです。

次のような方は免疫の働きが低下しやすいため注意しましょう。

  • 高齢者や乳幼児
  • 慢性的に睡眠不足がちな方
  • ストレスが多い方
  • 食生活が乱れがちな方
  • 糖尿病などの持病がある方

免疫力を高めるには

免疫の本来の力を発揮させ、感染症から身体を守っていくには、次のような心がけが必要です。

  • 十分な休息と睡眠時間の確保
  • バランスのよい食生活
  • ストレスの軽減

とくに、腸内環境を整えるような食生活の改善は免疫力アップに有効であると考えられています。
というのも、上述した通り、腸内では全身の免疫に関わる「IgA」が産生されるから。腸内環境を整えることで、「IgA」の産生能力も保たれ、免疫力アップにつながるのです。そのためには、適度な食物繊維、ヨーグルトをはじめとした乳酸菌の多い発酵食品を積極的に摂るようにしましょう。

予防やうつさないために気を付けたいこと

感染症はがんなどの病気と異なり、正しい予防対策を講じることで発症するリスクを大幅に軽減することができます。

また、自身が感染症にかかったときは、周囲の人に感染を拡げないための対処が必要です。

感染症予防のために必要なのは、「感染経路のシャットダウン」・「病原体の排除」・「免疫力の向上」です。そのためには、次のような対策を徹底しましょう。

  • 手洗い、手指消毒の徹底
  • マスクの着用
  • 咳エチケットの遵守
  • 病原体に適した消毒(アルコール、次亜塩素酸ナトリウム)
  • 適度な換気、湿度の維持
  • ワクチンの摂取
  • 体調管理

まとめ

今回は、感染症の種類や感染経路、基本的な対策法などを解説しました。
生活の中から病原体をゼロにすることは困難…。感染症を完全に避けることはできません。
しかし、日ごろから今回ご紹介した予防対策を心がけることで発症のリスクを減らすことは可能です。

感染経路をシャットアウトするために手洗い、消毒、マスク着用などを徹底し、生活リズムや食生活を整えて感染症にかかりにくい身体を作っていきましょう。

【監修】成田亜希子

所属学会:日本内科学会、日本感染症学会、日本結核病学会、日本公衆衛生学会
略歴:弘前大学医学部卒業。内科医として勤務。また、国立医療科学院でも研修を積み生活習慣病や感染症予防などの公衆衛生分野の知見を習得している。

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