インフルエンザが流行するってどういうこと?始まる時期や傾向などを解説

知る 2020.03.31

インフルエンザと通常の風邪の違いは、どこにあるのでしょうか。どちらもウイルスが原因で発症し、発熱や関節痛など主な症状もよく似ています。

大きな違いとして、インフルエンザは「流行しやすい」「重症化する危険性がある」「風邪とは異なるウイルスによって発症する」といった点が挙げられます。

発症を防ぐには、インフルエンザに対する正しい知識が必要です。このページでは、インフルエンザの流行しやすい時期や、日ごろからできる簡単なインフルエンザ対策についてご紹介します。

インフルエンザの流行はどのようにして知る?

まずはインフルエンザが流行する理由を知りましょう。

インフルエンザは、「インフルエンザウイルス」によって引き起こされます。
ウイルス感染のなかでもインフルエンザウイルスは、急に高い熱頭痛、関節痛など、全身に症状が出るのが特徴です。

風邪にも発熱や頭痛、関節痛などの症状が出るため、インフルエンザとの区別がつきにくい場合もあります。特にインフルエンザが流行する時期は、早急な診断と適切な対処をしなければ、知らないうちに周囲へウイルスを広げて、重症化してしまうため注意が必要です。

インフルエンザが流行する時期や、現在の流行情報を知っておくことは、風邪と見分けるうえでも非常に役立ちます。

まずは「インフルエンザがどのようにして流行しているのか」、「流行情報はどこで確認するのか」を知りましょう。

各都道府県が流行情報を発表

インフルエンザの流行が確認されると、厚生労働省や各都道府県が流行情報を発表します。たとえば東京都の場合は「東京都感染症情報センター」の公式サイトで詳細を確認することができます。

自治体によっては、市区町村の感染症情報センターや衛生研究所などでも発表されており、各サイトでは以下の情報が公開されています。

  • インフルエンザの発生状況
  • インフルエンザウイルスの検出状況
  • 学級閉鎖などの情報
  • 都道府県内の流行マップ

インフルエンザの流行や発生状況は、都道府県ごとに選出されたインフルエンザ定点医療機関の報告による、「インフルエンザと診断された患者数」が主な情報源となります。インフルエンザ定点医療機関とは、インフルエンザの流行情報の提供を行っている協力医療機関のことです。

患者の報告数や検出されたインフルエンザウイルスの型、エリア別の流行状況などが分かるため、発症していない方は流行エリアを避けるなど、予防に役立ててください。

どうなったら「流行」しているといえる?

患者が数人出た程度では、流行とまでは言えません。各都道府県や厚生労働省が流行状態と判断するには、インフルエンザ定点医療機関の患者数を参考にします。

東京都では現在419か所あり、これらの機関から1週間程度の周期ごとに報告された患者数を元に算出し、インフルエンザの流行状況を判断しています。

算出された数字が、1医療機関あたり1人の患者の割合になると、「流行している」と判断されます。

  • 1医療機関あたり1人の新規患者…流行期
  • 1医療機関あたり10人の新規患者…流行注意報
  • 1医療機関あたり30人以上の新規患者…流行警報

更に患者の増加数に応じて、上記のとおり3段階に分かれるため、流行の有無だけではなく深刻度(流行レベル)にも注意しましょう。

過去の流行状況は?

厚生労働省の公表では、過去数年で最もインフルエンザが流行したのは、2017年から2018年にかけてのシーズンです。1999年4月に現在の感染症法が施行されて以来、20年間で最もインフルエンザの患者が増えた年で、ピーク時は1医療機関あたり約54人にまで増加しました。

次いで多数の患者が出たのが、2005年度です。こちらも1医療機関あたり約50人にまで増加し、1999年以降、50人を超えた例はこの2シーズンのみでした。

記録的な流行状況となった2017年~2018年のシーズンでは、2018年3月のピーク時には全都道府県で『流行警報』レベルにまで達しました。インフルエンザ超過死亡(インフルエンザが直接的あるいは間接的な原因となった死亡)や、高齢者の患者が非常に増加したのが特徴です。

入院患者数のみで見れば2015年から2016年にかけてのシーズンや2016年から2017年にかけてのシーズンも多い傾向が見られますが、超過死亡が目立つのは2017年から2018年のシーズンです。また、この年は世界的にもB型インフルエンザウイルスが猛威を振るっていました。

2019年から2020年の流行状況

2019年10月時点の流行状況ですが、インフルエンザと診断された患者数は、全国で合計3,550人です。1医療機関あたりに換算すると、0.72人となるため、3レベルでの流行状況に照らし合わせると、初期段階の流行期ですらありません。

ただし、週を経るごとに患者数は増加傾向を見せています。例年の患者数の推移を見ると、今後爆発的に患者数が増加する可能性も否定できません。

インフルエンザの流行状況は、長期的な観察により得た情報から総合的に判断します。最低でも年単位で観察する必要があるため、観察初期の時点では「今年のインフルエンザ流行状況は〇〇」と言い切ることは不可能です。

例年では、11月ごろから徐々に患者数が増え、12月~3月ごろにピークを迎えています。また概ね4月ごろには患者数も減少していましたが、近年は夏ごろに感染者が現れることもあり、流行していない時期にも注意が必要です。

インフルエンザが流行する前にできること

インフルエンザの厄介なところは、ウイルスに複数の型があるため、いくら予防接種を受けても型が異なれば発症してしまう可能性があるという点です。また、潜伏期間が2~3日なうえ、回復まで1週間近くかかることから、患者は周囲への感染リスクも考慮して生活しなければなりません。

効果的にインフルエンザの流行・感染リスクを下げるには、早急に正しいインフルエンザ対策を行うことが大切です。

ここでは、インフルエンザが流行やピークを迎える前に、個人でできる対策についてご紹介します。

予防接種

インフルエンザウイルスは、A型・B型・C型の3タイプに分けられます。インフルエンザの流行が報道されるとき、多くの方が耳にする「香港型(A/H3N2)』や「ソ連型(A/H1N1)」はA型に属しています。香港型やソ連型を含め、A型ウイルスには144種類の型があります。

この型は毎年のように変異しているため、流行に合わせた予防接種が必要です。ワクチン接種の効果は、接種してから2週間後から抗体がつくられ、約5か月間持続します。流行が本格化する11月~12月あたりには、予防接種を受けることをおすすめします。

また、年齢によって接種回数も異なります。以下は年齢ごとの接種回数です。

  • 6か月以上3歳未満…2回接種
  • 3歳以上13歳未満…2回接種
  • 13歳以上の方…1回接種

2回接種が必要な場合(13歳以上の希望者も含む)は、2~4週間の間隔をあけましょう。

予防接種と一緒に乳酸菌を摂取することも一つの方法です。近年の研究でLactobacillus bulgaricus OLL1073R-1(以下乳酸菌1073R-1株)を使用したヨーグルトに、ワクチン効果を高める可能性があることが分かっています。

健康な方にインフルエンザワクチンを接種する3週間前から乳酸菌1073R-1株を使用したドリンクヨーグルトを毎日飲用してもらい、インフルエンザワクチン接種前後に体内で作られたインフルエンザワクチン株に対する抗体の抗体価を測定したところ、インフルエンザワクチンを接種する3週間前から乳酸菌1073R-1株を使用したドリンクヨーグルトを毎日飲用した方は、インフルエンザA型H1N1、B型のワクチン株に対する抗体の抗体価が高くなりました。

25歳~59歳の男女を対象とした試験での抗体価の推移(A型H1N1、B型) (明治ヨーグルトライブラリー)
https://www.meiji.co.jp/yogurtlibrary/laboratory/report/1073r1/03/04/

手洗い、うがい、マスク

インフルエンザウイルスをはじめ、多くのウイルス感染は飛沫感染(ひまつかんせん)と接触感染(せっしょくかんせん)によって起こります。

感染者の咳やくしゃみ、会話によって空気中にはウイルスが飛散しています。それらを吸い込んだり、感染者がウイルスの付着した手で触れたもの(電車のつり革やドアノブなど)に触れた後に自分の口や鼻に触れたりすることで、ウイルスが体内に侵入します。

100%対策できるわけではありませんが、手洗いやうがいによって、これらの飛沫感染(ひまつかんせん)と接触感染(せっしょくかんせん)のリスクを低下させることができます。

  • 手洗い…不特定多数の人が触れたものに触った後など
  • うがい…1日3回・外出した後など

1日に1回ではなく、こまめに手洗いやうがいをすることが大切です。また、マスクの装着も飛沫感染から身を守ります。感染者や空気中のウイルスに接触する可能性の高い外出先から帰ったときや、多くの人が触れたものに触れた後などは、口や鼻に触れる前に、手洗いうがいを行いましょう。

免疫力を高める

インフルエンザウイルスを含め、ウイルスを退治できる画期的な薬は存在しません。手洗いやうがい、予防接種など、私たちにできるのはウイルスの侵入を防いだり、発症リスクを減らしたりすることです。

体内に侵入したウイルスは、体に備わる「免疫力」で撃退することとなります。発症の可能性を低下させるには、日ごろから免疫力にはたらきかける「食生活」や「十分な睡眠」をとることが大切です。

食生活の改善には、発酵食品や食物繊維、オリゴ糖などを意識して摂るのがポイントです。発酵食品には多くの乳酸菌が含まれており、食物繊維やオリゴ糖などは、乳酸菌を胃や腸まで届けるサポートをしてくれるでしょう。

乳酸菌は「腸内環境を整える」というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、それだけでなく、体内のNK細胞を活性化させるはたらきがあります。例として、乳酸菌1073R-1株を使用したヨーグルトのヒト試験では、風邪罹患リスクの低下、NK活性増強が認められました。

ヒト試験で風邪の罹患リスク低減を確認(明治ヨーグルトライブラリー)
https://www.meiji.co.jp/yogurtlibrary/laboratory/report/1073r1/03/01/

重要なのは、継続的に摂取することです。

関連記事

インフルエンザにかかってしまった…病状を改善する方法やお家でできる予防法を解説

まとめ

毎年流行するインフルエンザには、さまざまな型が存在するため、予防接種を受けていても100%発症を抑えられるわけではありません。しかし、発症リスクや重症化リスクを軽減させるには、やはりワクチンの接種が重要となります。

また、ウイルスの侵入を防ぐことや、食生活や睡眠の改善による免疫力へのはたらきかけなど、自分自身で行う日常的な対策も重要です。手軽に買えるヨーグルトなど、乳酸菌を積極的に摂取してNK細胞を活性化させていきましょう

ワクチンの接種や乳酸菌の摂取とともに、基本である手洗いやうがいなど、インフルエンザ対策は日常的にできることから始めてみてください。

【監修】木村眞樹子

東京女子医科大学医学部卒業後、東京女子医科大学病院循環器内科入局。現在も東京女子医科大学病院、および関連病院で内科、循環器科、睡眠科として診療にあたるほか、嘱託産業医として企業の健康経営にも携わっている。

このページをシェアする

  • twitter
  • facebook
  • line
  • はてなブログ
ページの先頭へ移動