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Vol.13

Nice!

特集
在宅移行支援・
在宅ケア

医療機関における病床機能の分化や在院日数の短縮が進む中、看護職には外来・入院・在宅をシームレスにつなぎながら、患者様の療養生活の継続を支える視点が求められています。
そこで今回は、在宅移行支援・在宅ケアを特集テーマとしました。
まず、巻頭特集では、患者様がライフステージに応じた在宅療養生活を安心して送れるような退院支援の基本的な考え方について、在宅看護専門看護師の宮本千恵美先生にお話を伺いました。

在宅移行支援・在宅ケア-ある日のこと-

退院支援の基本

【はじめに ~退院支援の流れ~】

一般的に、退院支援の流れは図1に示す4つの段階に分かれます。ここでは特に第1~3段階における介入の基本的な考え方について説明します。

退院支援の流れ(例)図1
▲図1退院支援の流れ(例)
スクリーニングに必要な情報 図2
▲図2スクリーニングに必要な情報

【1.退院支援の必要性を判断】

入院後すぐ(例:24時間以内)にスクリーニングを実施してハイリスクの患者様を抽出し、医療チーム間で情報を共有します。また、患者様・ご家族に対する説明を速やかに行い、退院時のイメージを早い段階で共有するようにします。
なお、この段階では、患者様に対する治療方針や入院期間、退院時ADLなどが未確定な場合も多いため、入院前の生活状況に関する情報収集の優先度が高くなります。スクリーニングに必要な情報を図2に例示しました。
上記のようなスクリーニング結果に応じて、必要となる療養支援も異なります。

  • 生活の再編が必要なケース
    (生活が入院前と変化する)
  • 医療管理・医療処置などの継続が必要
  • 病状が進行する(がん・難病)
  • 入院前に比べADL・IADLが低下する
  • 病状管理や介護体制の再構築が必要なケース
    (ケアプランの見直し)
  • 在宅での病状管理・予防管理が不十分で、再入院を繰り返す
  • 在宅介護に限界がある

【2.ニーズアセスメント】

患者様の治療開始から安定期にかけて、チームアプローチによる患者様とご家族の受容支援を行います。
具体的には、院内多職種チームカンファレンスを開催し、
(イ)医療管理上の課題や、
(ロ)ADL・IADLから考えられる生活・介護上の検討課題などについてゴールを設定・共有し(図3)、
(ハ)患者様・ご家族の意向を確認しながら、今後の方向性に関するスタッフ間の暫定的な合意を形成します。

◆病状・病態から考えられる医療管理上の検討課題

①病状確認・治療方針・今後の予測
・治療の回復の可能性、症状緩和・緩和ケア提供の必要性
・進行や重症化を予防するための指導・支援、必要な医療
②退院後も継続する医療管理・処置内容
・症状マネジメント、創処置、服薬管理、栄養管理、リハビリテーションなど
③患者様・ご家族への説明内容・理解・受け止め
・病状理解や受け止めの状況に必要な支援
・患者様・ご家族の意向・希望、必要な調整や支援
④患者様・ご家族の自己管理能力とサポート体制
・自己管理に向けて必要な支援
・在宅での必要なサポート

◆ADL・IADLから考えられる生活・介護上の検討課題

①病状の変化に伴うADL・IADLに及ぼす影響
(食事・清潔・更衣・移動・排泄・整容・家事など)入院前の生活状況をケアマネジャーから聞く
・目指すゴールを決める
(例:排泄動作…自立を目指す、道具を利用する、リハビリテーション)
・患者様の「こうしたい」をかなえるために必要な支援
②環境の評価
・家屋の状況
・住環境の調整、生活・介護のサポート体制

退院にむけたアセスメント 図3
▲図3退院にむけたアセスメント

【3. 退院支援計画の立案・実施】

◆退院支援計画の作成
ニーズアセスメントの結果を踏まえ、退院時に期待される状態をイメージしながら、患者様・ご家族の主体的な参加のもとで退院支援計画を立案します。

◆退院に向けた患者様・ご家族への教育
退院後に必要となる医療処置や管理方法などについて教育や指導を行います。
病院で行っているケアは、感染対策や医療安全面が整った環境で、医療者が行うことが前提となっているため、在宅で患者様・ご家族が安全に実施できることを念頭に、シンプルな方法に変更することが重要です(図4)。

  • 住環境や生活パターンに適した実施
  • 内容手順が簡単で覚えやすい
  • 使用する物品が少ない
  • 経済的負担が少ない
生活の場でのシンプルケアへのアレンジ 図4
▲図4生活の場でのシンプルケアへのアレンジ

◆社会資源・サービス調整
安定した療養生活を安心して送るためのサポート体制の構築を目標にします。病状やADLの状態から、患者様・ご家族の希望をかなえる上で必要となる支援を予測し、それを実現するための在宅チームをつくります。
退院前カンファレンスには、患者様・ご家族を中心に、院内・地域の多職種関係者による在宅チームが参加し、いつ・誰が・どの程度の頻度で・何を行うかなど、退院後の生活における役割分担について確認します(図5)。
患者様・ご家族は退院前カンファレンスへの参加を通じて病院と地域の連携を直接見ることができるので、今後の退院生活に対する安心感にもつながります。

① 入院経過説明
② 今後の治療方針、病状の変化予測の確認
③ 患者・家族の病状理解と意向の確認
④ 療養生活上の課題と目標の共有
⑤ 具体的なサービス内容と役割分担の確認
⑥ 退院日の決定、移送手段確認
⑦ 退院前・退院後訪問の計画

退院前カンファレンスの議題(例)図5
▲図5退院前カンファレンスの議題(例)

【最後に】

ここでは入院直後から退院までの支援について解説しましたが、患者様が退院したからといって支援が終了するわけではありません。在宅医療・看護などとも連携しながら、患者様が地域でできるだけ長く療養生活を続けられるよう、継続的なサポートを実践しましょう。

エキスパートの仕事現場(13)

大学院への進学の経緯

私は看護学校を卒業後、大学病院の急性期病棟、企業の健康管理室を経て、2000年から7年間にわたって訪問看護に従事しました。その内の4年間は訪問看護ステーションと居宅介護支援事業所の管理者として経営や教育に携わったのですが、施設運営や人材の確保・育成などマネジメント上の課題に直面することもしばしばでした。大学院で学ぼうと思い立ったのは、そうした課題の解決策を模索する中でのことです。
大学院の博士前期課程へ社会人入学したのは2006年で、当初は働きながら学業に臨んでいました。しかし、24時間体制の訪問看護を継続的に稼働させるという責務は想像以上に重く、2年時に学業に専念することを決意しました。大学院では、在宅看護を専攻する学生が他におらず辛い時もありましたが、今振り返ってみると大変充実した3年間だったと思います。

病院での退院調整の道を選択

2009年に博士前期課程を修了した際、私は在宅看護の現場には戻らず、病院に勤務する道を選択しました。その背景には、訪問看護ステーションに勤務していた時代に、病院における退院調整の重要性を痛感していたことがあります。入院患者様が十分な調整のないまま自宅に帰されているケースを目の当たりにする中で、安心して在宅療養生活を過ごせるようなシステムを構築することが、私にとっての大きな目標になっていたのです。
入職先となった順天堂大学医学部附属練馬病院では、幸運にも看護部直属の看護相談室に配属していただくことができ、そこで退院調整システムの構築に取り組みました。当時はまだ退院調整や在宅医療に対する一般的な認知度は十分とはいえませんでしたが、周囲の理解に恵まれ、惜しみのない協力を得られたことが目標達成に向けた大きな原動力となりました。

在宅看護専門看護師として

日本看護協会が在宅看護専門看護師の認定審査を開始したのは2012年末、私が順天堂大学医学部附属練馬病院に入職してから3年後のことでした。同年、さっそく認定審査を受けたのですが、当時の認定者数は私を含めて10名足らずでした。しかし、その後は着実に増加を続けており、在宅領域に対する関心の高まりを実感しています。
専門看護師としてのスキルの活かし方は、人によって様々です。私は主に退院支援に軸足を置いて活動していますが、在宅看護専門看護師の中には、訪問看護の現場やスタッフ教育の分野で活躍している人もいらっしゃいます。職場環境や配属先など、自分が置かれた状況の中で何ができるかを模索することも専門看護師に求められる重要な役割だと考えます。

現在の活動内容とやりがい

私は2017年に順天堂大学医学部附属順天堂医院へ異動となり、現在は患者・看護相談室で患者様の療養支援を行いながら、病棟と外来の橋渡しや病院と地域の連携に向けたシステムづくりに取り組んでいます。当院の入院患者数は1日平均で約1,000名、同じく外来患者数は4,000名以上にのぼり、前職の練馬病院とは施設規模も大きく異なります。そうした大勢の患者様に対し、安心で安全な療養生活を送っていただけるよう、予防ケアを含めた様々な支援を行うことは専門看護師としての大きなやりがいです。
また、現在は仕事と両立させながら大学院の博士後期課程で学業にも励んでいます。私が専攻しているDNP(Doctor of Nursing Practice)コースは、エビデンスに基づく看護の実践や質の向上など、修了後に臨床現場に戻ることを見据えたコースとなっており、常に“実践者”でありたいと考えている私にとっては大変学びがいのあるものです。大学院で学んだことを患者様や周囲のスタッフに還元できればと考えています。

最後に

訪問看護ステーションでの実務経験は現在の退院支援業務にも大いに役立っており、退院後の生活を見据えた現実的なアドバイスができるのは私にとっての強みです。そうした自分の経験を後進の育成や多職種協働にも活かしながら、地域における在宅医療連携に取り組んでいきたいと思います。

クスリの話(13)

超高齢社会にあって在宅医療の重要性は増しています。在宅に医療が持ち込まれ、薬による治療は欠かせません。しかし適切に薬物治療が行われているかというとそうでもないようです。薬が余っていることを残薬と呼びますが、残薬の原因は、「ついうっかり飲み忘れる」をはじめ、「症状が改善したから薬は不要と考えた」「薬が多すぎる」「なんのための薬かわからない」「副作用がある」などが、原因になっているようです。本来は患者様にとって必要な病状に対して薬物治療が行われます。したがって在宅でも患者様が安心して適切に薬物治療が行える体制が必要と考えます。

ポリファーマシー

複数の薬を服用していることをポリファーマシーと言います。特に高齢者では多くの疾病を合併するため薬剤数も必然的に多くなりますが、中には同じような効果を持つ薬を重複して服用していたり、ある症状が起こったために一時的に服用するべき薬が漠然と継続使用されていたりといったケースもあります。薬が多いことで有害事象が起こりやすく、また正確に服用することも難しくなります。このような場合、朝だけ服用すれば良い薬に変えられないか、貼付剤などが利用できないか、一包化してもらうなどの対策があります。もちろん不要な薬は中止するに越したことはありません。

病院薬剤師と薬局薬剤師の役割

病院薬剤師は在宅医療に対して退院時の服薬支援を行います。入院患者様のポリファーマシーの確認や退院直前に使用した薬剤、副作用・服薬の状況、指導時の要点を退院時服薬指導書やお薬手帳に記載して、薬局薬剤師に情報を提供します。
薬局薬剤師は実際に患者宅に訪問をします。これには「居宅療養管理指導(介護保険)」、「在宅患者訪問薬剤管理指導(医療保険)」が適応されます。どちらのサービス内容にも大きな違いはありません。薬剤師は、残薬の確認などとともに、必ず食直前に飲んでもらう薬などの用法を確認したり、粉砕してはいけない薬を潰していたりしないか、などのチェックを行います。また病状や体調の変化で、現在の薬が合っていない、過量になっていないか、なども考えられます。しかし疾患による違いもありますが、薬剤師の在宅訪問は月4回程度と限られるため、バイタルサインとともに食欲や運動・認知機能の低下などの症状変化に気づかずにいる場合も考えられます。
下表に在宅患者様に多い疾病と薬に関連した確認事項(副作用等)を示しました。これらの症状が現れていたらぜひ薬剤師と情報を共有して、在宅の患者様の現在の薬物治療が適切かどうかチェックして頂けたらと思います。

疾病 薬に関連した確認事項(副作用等)
心不全 水分・塩分摂取の確認から利尿薬の効果判定やジギタリスによる悪心・嘔吐、徐脈など
パーキンソン病 ドパミン製剤による便秘、不眠など
がん患者 モルヒネなどのオピオイド鎮痛薬による便秘や眠気など
その他 睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗精神病薬によるふらつき、記憶障害、せん妄など
▲表在宅患者様に多い疾病と薬に関連した確認事項(副作用等)
クローズアップ 栄養ケアステーション(13)

近年、介護などにかかわる居宅療養や食育活動などが地域社会において進む中、「栄養ケア・ステーション」に対する期待が高まっています。
ここでは、栄養ケア・ステーションの概要と現況について解説します。

① はじめに

栄養ケア・ステーションとは、全国の管理栄養士・栄養士が専門的な立場から、あらゆる栄養ケアを提供する地域密着型の拠点です。栄養ケアの対象となるのは地域住民の方をはじめ、自治体、健康保険組合、民間企業、医療機関、薬局など様々で、日々の栄養相談、特定保健指導、セミナー・研修会講師、調理教室の開催など、食に関するサービスを幅広く展開しています。栄養ケア・ステーションの基本的なサービスの流れを図1に示します。

栄養ケア・ステーションの基本的なサービスの流れ 図1
▲図1栄養ケア・ステーションの基本的なサービスの流れ

栄養ケア・ステーションは、設置・運営母体によって「栄養士会栄養ケア・ステーション」と「認定栄養ケア・ステーション」の2種類に大別されます。以下に、それぞれの概要について述べます。

② 栄養士会栄養ケア・ステーション

日本栄養士会または都道府県栄養士会が、公益目的事業として設置・運営する栄養ケア・ステーションを指します。
栄養士会栄養ケア・ステーションは、次のような機能分担(表1、表2)を通じて、地域住民一人ひとりの、生涯にわたる健康な生活を支えることができる、栄養ケアのネットワークの構築を推進しています。

表1【日本栄養士会栄養ケア・ステーション】

日本栄養士会は栄養ケア・ステーションを設置・運営するとともに、「栄養ケア・リサーチ・センター(JDA-CRC)」としての機能を担っています。栄養ケア・リサーチ・センター機能とは、認定栄養ケア・ステーション(後述)の審査と認定、リーダー研修、情報収集、事業企画・支援、情報解析・検証などを行うものです。

表2【都道府県栄養士会栄養ケア・ステーション】

都道府県栄養士会が設置・運営するもので、栄養ケア・ステーションとしての機能と同時に、「栄養ケア・センター」としての機能を担っています。栄養ケア・センター機能とは、人材育成事業や認定ケア・ステーション(後述)の支援、委託事業の振り分けなどを行うものです。

③ 認定栄養ケア・ステーション

日本栄養士会の栄養ケア・ステーション認定制度に則り、「栄養ケア・ステーション」という名称(日本栄養士会の登録商標)の使用要件を満たすと認定された、栄養士会以外の事業者が設置・運営するものを指します。
2018年にこの認定制度がスタートする以前にも、管理栄養士・栄養士は在宅訪問栄養食事指導などで地域の栄養管理に取り組んできました。しかし、活動拠点となる事業所の設置が十分に進んでおらず、“顔の見える”管理栄養士・栄養士が少ないことが課題でした。そこで、本制度を通じて地域の拠点を増やすことで管理栄養士・栄養士の所在を明確にし、全ての地域住民が管理栄養士・栄養士による栄養ケアを受けられるような体制の構築を目指しています。

◎認定栄養ケア・ステーションの業務

認定栄養ケア・ステーションの認定要件には、事業所の主たる業務(指定業務)として下記の業務が明記されており(表3)、それらを適正に実施できる体制を備えていることが求められています。
また、認定を受ける事業所には「業務に従事する管理栄養士を1名以上、専任で配置すること。また、専任で業務に従事する管理栄養士を責任者とすること」とされています。

(1) 栄養相談((7)、(8)、(9)を除く)
(2) 特定保健指導
(3) セミナー、研修会への講師派遣
(4) 健康・栄養関連の情報、専門的知見に基づく成果物(献立等)等の提供
(5) スポーツ栄養に関する指導・相談
(6) 料理教室、栄養教室の企画・運営
(7) 診療報酬・介護報酬にかかる栄養食事指導とこれに関連する業務
(8) 上記以外の病院・診療所などの医療機関と連携した栄養食事指導
(9) 訪問栄養食事指導
(10) 食品・栄養成分表示に関する指導・相談
(11) 地域包括ケアシステムにかかる事業関連業務

▲表3認定栄養ケア・ステーションの指定業務

◎認定栄養ケア・ステーションの事業者

必要な要件を満たし、日本栄養士会から認定を受けた者であれば、個人・法人・団体を問わず誰でも栄養ケア・ステーションの事業をスタートすることができます(図2)。
これまでに認定を受けた栄養ケア・ステーションは、2019年10月時点で全国約240ヶ所に上ります。経営母体の内訳として多いのは病院、福祉施設、医師会などですが、最近は薬局やスーパーマーケットなどの企業による参入も目立ってきています。
なお、認定に関する詳しい情報は日本栄養士会の公式ホームページに掲載されているので、そちらを参考にしてください。(https://www.dietitian.or.jp/about/concept/care/

地域住民の食の営みを支える様々な栄養ケア・ステーション 図2
▲図2地域住民の食の営みを支える様々な栄養ケア・ステーション

④ 管理栄養士・栄養士の活躍に期待

今後、栄養ケア・ステーションが地域社会に浸透していく上で重要なのは、管理栄養士・栄養士が独立した専門的業務を主体的に行っていくことです。
例えば、全ての認定栄養ケア・ステーションにおいて、事業所の責任者となるのは管理栄養士です。事業の採算性など経営的な感覚をしっかりと持って栄養ケア・ステーションをマネジメントしていく必要があります。
また、表1にも示した通り、栄養ケア・ステーションの業務は傷病者に対する栄養ケアだけにとどまりません。疾患予防や健康の維持・増進なども含めて、管理栄養士・栄養士が活躍できる場面は数多くあります。そうした点を積極的にアピールして、活動の幅を自ら広げていくことも非常に重要です。
日本栄養士会では、各種講習会・研修会の開催などを通じて、栄養ケア・ステーションの業務に携わる管理栄養士・栄養士の支援に取り組んでいます。
今後、地域住民の方々の健康を「食」の側面からサポートする“顔の見える”身近な存在として、各地域の管理栄養士・栄養士が大いに活躍することを心から期待しています。

お仕事スケッチ(10)

在宅ケア全体を管理しながら、訪問看護にも赴く

当院では、院内の一部門として訪問看護室を設置しており、医師と連携しながら地域住民の方々へ訪問看護・訪問診療を提供しています。その中での私の業務を大別すると、訪問看護室係長としての管理運営業務と訪問看護師としての看護実践の二つに分けられます。
管理運営業務については、訪問看護・訪問診療のスケジュール調整、新規の利用者様の受け入れなど、在宅ケア全体のマネジメントを担っています。
その一方で、訪問看護師として利用者様宅に伺うほか、当院を退院される方に対する退院時指導、万一の急変時に備えた24時間待機なども行っています。
病状の悪化した利用者様を在宅療養から入院治療に切り替えたり、医師との連携により医療依存度の高い方にも対応できる点は、病院内の在宅部門(介護保険法のみなし指定訪問看護事業所)であることの利点だと考えます。

利用者様だけでなくご家族も含めた看護を実践

在宅の現場においては、利用者様やご家族の日常生活の場に赴いて医療サービスを提供するという性質上、個別性の高い看護が求められます。利用者様のことを第一に考えるのはもちろんのこと、一緒に生活しておられるご家族についても“第二の患者様”としてケアしていく必要があります。実際、ご家族に元気がないと、利用者様の病状まで悪化してしまうといったケースをしばしば経験します。このため、利用者様のお宅を訪問する際には、必ずご家族の様子も含めて詳細に観察するようにしています。例えば、いつもは綺麗に片付いているお宅での僅かなお部屋の乱れが、ご家族の心労や体調の変化のサインであったりもします。そうした些細な変化を見逃さないよう、細心の注意を払うことが利用者様やご家族への寄り添いにつながります。

看取りへの主体的な関わり

医療依存度の高い利用者様を積極的に受け入れている関係上、当院では訪問看護の過程で看取りを経験することも少なくありません。かつては患者様が亡くなることを医療的な意味での“敗北”のように捉える社会的風潮がありましたが、近年は人生会議やアドバンス・ケア・プランニングの広まりなどに伴って、看取りに対するマイナス・イメージは薄れてきています。私自身、死を生の延長上にあるものと考えていることから、訪問時にご家族の様子を見ながら、看取りに関してシビアなお話をさせていただく場合もあります。
人口の高齢化によって、在宅での看取りが今後さらに増えることが予想される中、訪問看護師は在宅での看取りに対してより主体的に関わっていく必要があると考えています。

認定看護師の教育過程で得たこと

訪問看護認定看護師の教育過程では、「生活の中の患者様を看る」ことを徹底的にご指導いただき、現在ではそれが私の看護活動における基本コンセプトになっています。
病院、在宅を問わず、看護師は医師の治療方針に従って看護を実践するのが原則です。しかし、在宅の現場では利用者様やご家族の思いが、治療方針を越えて看護ケアの在り方を左右することも珍しくありません。傷病の治療・看護という意味での「正しい」医療が、必ずしも利用者様やご家族にとって「納得できる」医療とは限らないからです。勉強して様々な医学的知識を身につけることも看護師にとっては大切ですが、それを無意識のうちに患者様やご家族に押し付けてしまうことのないよう、十分に配慮する必要があります。

今後の抱負

今後は、病棟に勤務している看護師たちにも在宅の現場の実状を伝え、理解者を増やしていきたいと思います。そして、地域で暮らす大勢の人々が病気や障碍を抱えながらも毎日を生き生きと過ごし、そして安らかな最期を迎えられるような環境づくりにつなげたいと考えています。

制作●株式会社ジェフコーポレーション

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