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わたしと生理

更年期へ向けて「40代からはカラダの変化に向き合おう」

取材・文/木村琴子((株)menopeer代表)  撮影/株式会社ゼロワンブースター  図版/明治アドエージェンシー  編集/木村琴子((株)menopeer代表)  企画・構成/株式会社ゼロワンブースター

ここ数年で「更年期」という言葉をメディアでもよく目にするようになりました。一方で、社会には更年期に対するスティグマが未だ存在したり、ネットでは玉石混交の情報が氾濫したり、更年期について正しく知り、自身の更年期を考える機会はあまり多くないのではないでしょうか。
今回、更年期を中心に女性の健康全般について医療・健康相談サービスをLINEで提供している「menopeer(メノピア)」の代表である木村さんが、更年期医療の専門医である東京歯科大学市川総合病院産婦人科准教授の小川真里子先生に、「40歳から考える更年期」というテーマでお話を伺いました。

40代からは月経の変化をより意識しましょう

木村:女性ホルモンと呼ばれるエストロゲンは45歳ぐらいから減少し始めてそれに応じるように月経周期が乱れてくるのでしょうか?

小川:実は、45歳ぐらいから逆に増えている人もいるんですよ。減少し始めると言うよりは女性ホルモンの振れ幅が大きくなるようなイメージですね。女性ホルモンって、そもそも月経周期で毎月大きく変動していますが、その振れ幅がさらに大きくなり、揺らぎが出てきて、その揺らぎの影響で月経周期が乱れてくるということです

女性の健康は女性ホルモンの変化に影響を受ける(一生の大波)

(出典:一般社団法人「女性の健康とメノポーズ協会」の資料を基に作成)

木村:月経周期は閉経までにどのように変化していくのでしょうか?

小川:最初の方は周期が短くなって、その後に2〜3ヶ月に1回くらいの間隔になるパターンが多いです。周期が短くなってくると、月に2回きたということもあります。これは30代後半から始まることもあります。40代、50代になると、さらに月経周期がバラバラになってきて、間隔が空いてきたり、忘れた頃に来るようなこともあったりします。そして、1年間月経がないと閉経ということになります

木村:30代後半とか40代の初めぐらいで月経の乱れがあっても、更年期かなとはあまり連想しなくて、単なる月経の不調かなって思ってしまうと思いますが、そこはどうやって判断したら良いでしょうか?

小川:これは難しいですね。40代の初めぐらい月経周期が乱れて、ちょっと短くなるとかは先ほど言ったようにみんな割とあるので大丈夫だと思いますが、毎回周期が乱れていたり、何ヶ月も来なかったりするような場合は、一度婦人科で診てもらった方がいいですね。更年期かもしれないのですが、ストレスだったりとか、体重が減ったりとか、そういった別の原因で止まってしまうこともあります

木村:30代後半〜40代前半くらいだと、PMSの症状なのか更年期の症状なのか判断がつきにくい場合がありそうですが

小川:PMSの場合は、月経前に症状が出るというのがポイントになります。ですので、症状の内容の違いよりも、症状が出る時期に注意すると良いと思います

更年期は女性皆が通過する時期、心配よりも移行の準備を

木村:更年期、更年期症状、更年期障害について、人によって認識が異なることがあるように思いますが、それぞれの定義を教えていただけますか?

小川:日本での更年期の定義は、閉経の前と後の5年間ずつ合計10年間と定義されていて、誰もが通過する時期のことを指します。閉経は、月経が1年間なかったら、その最後の月経を以って閉経とされます。ですので、閉経前の5年間の更年期の時期は、閉経してからでないといつ始まったかわからないということになります。40代に入って、月経の間隔が乱れ出したら更年期というふうに考えてもいいと思います。
更年期症状は、他の病気による症状ではないもの、器質的変化による症状でないものを指します。例えば、腰痛といっても原因がヘルニアの可能性があったりしますが、原因が他の病気に起因しないものは更年期症状となります。更年期障害は、それらの症状のせいで日々の生活に支障が出るような場合は更年期障害ということになります

木村:更年期症状が出る方と出ない方がいるのはなぜなのですか?

小川:それはまだ理由がわかっていないのです。ただ、遺伝は関係ないとされていて、その方が置かれている環境での要因が大きいといわれています。例えば、親の介護や仕事のストレスなどです。子供の独立などで空の巣症候群が要因ということもありますが、最近はやはり仕事のストレスが大きな要因になっている気がします。
またホルモン値で重症度が変わるということもないです。この時期はホルモンが大きく揺らいでいる時期で、1日の中でも増減があります。閉経後の状態かどうかも血液検査でわからないので、血液検査では判断できません。ただ、E(エストラジオール)とFSH(卵胞刺激ホルモン)と2つのホルモン値を検査して、Eの値が減少し、FSHの値が上昇している場合には、更年期に入っているだろうということは考えます

木村:更年期症状について、ホットフラッシュは代表例ですが、その他にも多様な症状がありますよね

小川:ホットフラッシュは、これまで経験してきたことのない症状なのでわかりやすいのですが、冷えも経験する方が結構いらっしゃり、ほてりと冷えが同時に出る方もいます。あと、イライラや漠然とした不安感などの精神的な症状も多く、更年期うつが出る方もいます。他には泌尿器・生殖器系の症状、例えば性交痛や膣の乾き、頻尿、そして尿もれも多いです。頻尿については、骨盤底筋を鍛える以外に、過活動膀胱という診断がつけば、お薬がでます。トイレが心配で外出や旅行を諦めてしまう方もいますので、悩んでいる方はぜひ一度、医師に相談してみてください。

先入観を持たずに正しい治療法の選択を

木村:更年期の標準治療にはどのようなものがありますか?

小川:主な薬物治療にはホルモン補充療法(以下、HRT)、漢方薬、精神的な症状がでている場合には抗うつ薬を処方することがあります。HRTは、分泌されにくくなっている(又は「急激に低下する」)  女性ホルモンを補充するもので、ホットフラッシュなどの血管運動神経症状には特に効果があります。
乳がんなどのリスクについて心配される方もいますが、50歳前後から使用開始し、長期間にわたる使用でなければリスクには影響しないと考えても良いと思います。乳がんのリスクは生活習慣により上がることがありますが、HRTはそのリスクの上昇と同等もしくはそれ以下と言われています。また、最近では天然型の黄体ホルモン製剤が出ていて、そちらは乳がんリスクは上がらないといわれています。
ただし、今や日本人の女性の9人に1人が乳がんになるといわれていますので、大事なのは乳がん検診を定期的に受けることです。乳がんリスクは様々ですので、気にしてHRTを使用しないというよりは、検診を受け、マネジメントしていくことが大事になります

木村:日本では漢方薬という選択肢がありますが、更年期症状にはどのような種類が処方されることが多いのでしょうか?

小川:圧倒的に加味逍遙散が処方されます。ホットフラッシュから精神的症状まで更年期症状全般に効果が認められています。また、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸も含めて、婦人科三大漢方薬と言われたりします。漢方薬はHRTと併用しても大丈夫です。更年期症状は数回治療したらスッキリ治るというものではないので、その方がリスクも鑑みながらどこで折り合いをつけるのかということになってくると思います。また、カウンセリングをはじめとして、人に話を聞いてもらうことは効果があると思います。

栄養と運動などの生活習慣の改善でも対策できる

木村:薬物治療以外でも、生活習慣上で対策できることがあれば教えてください

小川:運動習慣と食事の習慣はとても重要です。この時期に運動と食事の習慣の見直しをしましょう。食習慣は豆類、骨に良いカルシウムを摂取することが大事ですが、基本は3食きちんとバランス良く食べることが重要です。また、40代の方から「最近太るんです」という悩みをよく相談されますが、更年期世代は代謝が落ちて必要なカロリーも減るので、今まで通りの食事を続けるよりは、自分にとって必要なものを見直す必要があります

職場での望ましいサポートは?

小川:また、職場でのサポートも重要です。まず私がよく言うことは、職場の温度設定についてです。職場の温度設定は男性中心に設定されていることが多いと思いますが、更年期の女性は快適と感じる温度帯が狭いので、なかなか対処がしづらい。ですので、空調の温度設定は意外と重要です。
また、更年期の治療で通院する際の休暇の取りやすさも考慮されて良いのではないでしょうか。辛い自分を隠して仕事をしている方が多く、周囲は通院の必要性を感じない方がいて、通院しづらいこともあるようです。どのような不調でも気軽に受診できるような環境が、男女両方に必要だと思います。更年期の場合、長い期間定期的に通院しないといけないので、通院しやすいサポートが必要ですし、そのための休暇制度があっても良いのかもしれません。

最近のメノテック、医療以外で期待されることは?

木村:医療以外で、どのようなサービスが更年期症状で悩まれる方のサポートになると思われますか?

小川:義務教育の中で月経のことについて学ぶことはあっても、更年期について学ぶことがないので、不安になる方が多いです。なので、正しい情報が提供されること、教育や啓蒙のようなことが求められます。また、やはり更年期体験について話せず悩んでいる方が多いので、思いを吐き出せる場所があったり、疑問に答えてくれたりするサービスがあると良いと思います。更年期の時期は様々なことが起こり、最近は高齢出産で子供の反抗期と自分の更年期が重なって辛い思いをされている方など、様々なケースがありますので、こうした悩みに対応してもらえると良いですね。

 まだまだ社会での教育やサポート、ソリューションが足りていない更年期分野ですが、最近では徐々に更年期領域の課題解決を目指すサービスがでてき始めています。menopeerは、その一つであり、木村さんは「正しい情報、更年期領域に専門性を有する医師や医療職、その他専門家への相談機会の提供を通じて、更年期症状で悩まれる方が、一人でも多く自分なりの向き合い方や治療法・ケア方法を見つけ、更年期においても自己実現を目指せるようにサポートしたい」と語ります。今後、更年期領域でさらなるソリューションが生まれ、より良い社会の構築につながることが期待されます。

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