
月経痛などの症状がつらくても、医療機関を受診せず、周囲のサポートも不十分なまま、ひとりで我慢している女性が少なくない――。
18~49歳の女性1,110人に実施した月経に関するアンケート調査では、そんな実態が明らかになりました。そして、この背景には、「つらいのは当たり前」「我慢するしかない」「病院に行くほどではない」「周りに月経だと知られるのは恥ずかしい」といった月経に対する思い込みや偏った認識があることもわかりました。あなたにも心当たりはありませんか?
この調査結果を踏まえ、総合母子保健センター愛育病院 病院長の百枝幹雄さんに月経に対する意識について話を聞きました。
「月経は我慢するもの」という思い込みは危険。病気がないか婦人科で確認を
月経痛やPMS(月経前症候群)などの月経随伴症状があって「とても困る、とてもつらい」「困る、つらい」と感じている人など1,110人(18~49歳)を対象に「月経の悩みとつらさの実態」を調べるアンケート調査が2021年6月に行われました。
この調査で、月経随伴症状の状態や医療機関の受診状況、周囲のサポート環境などについて尋ねた結果、月経のつらさに対して積極的な対策を講じていない女性が多いことがわかりました。
調査では月経随伴症状がつらいと感じている人を対象にしていますが、婦人科などの医療機関を受診している人は全体で17%、症状がとてもつらいという人でも21%にとどまりました。そこで受診をしない理由を尋ねたところ、最も多かったのが「病院に行くほどの症状ではないと感じるから」(41%)。他にも「月経でつらいのは当たり前で病院に行くようなことではないと思うから」(18%)、「その期間だけ我慢すればいいから」(17%)、「受診することに抵抗がある、恥ずかしいから」(15%)との回答も。症状が「とてもつらい」と感じている人でさえ、「病院に行くほどではない」「つらいのは当たり前」と考えている人が約3割に達していました(下グラフ)。
つらい人でも約4割が「受診するほどでない」という認識

総合母子保健センター愛育病院 病院長の百枝幹雄さんは、この結果について次のように話します。
「月経には痛みがつきもので、つらいのが当たり前だと思っている人は、確かに多いですね。しかし、これは大きな間違いで、月経のある人全員がつらい症状を抱えているわけではありません。例えば月経痛があるのは約7割で、月経痛がないという人も約3割はいるのです。また月経痛の程度で言うと、鎮痛薬が必要なほど痛みが強い月経困難症に該当するのは、月経痛がある人の約半数。つまり、『つらいのは当たり前ではない』と言ったほうが正しいのです」
月経はつらくて当たり前と思い込み、病院に行くほどではないと自分の症状を過小評価して、ひたすら我慢する……。これは実はとても危険なことだと百枝さんは指摘します。
「強い月経痛の背後には子宮内膜症などの病気が隠れている可能性が高いのです。病院に行かずに我慢し続けていると、その間に病気が悪化してしまう危険があります。子宮内膜症は不妊や卵巣がんなどの発症リスクを上げますから、とにかく早めに治療を開始すべき。『痛いのは当たり前』『我慢するもの』といった意識は捨てて、まずは一度受診をして病気がないかどうか診てもらうようにしましょう。もちろん、しっかりと治療をすれば、痛みなどのつらさからも解放されます」