体質のせいかお腹を下しやすい。下痢になりにくい腸をつくるには

知る 2019.08.06

下痢になると、腹痛でつらい思いをするばかりか、トイレに入る回数が増えて仕事にいけなくなった……、というご経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
体質だからしようがないと諦める前に、下痢になってしまう原因と対処法を知っておけば症状の悪化を防げるようになります。
今回は下痢の原因や、下痢になりにくい腸をつくるにはどうすればいいのかをお伝えしていきましょう。

下痢とはどういう状態?

下痢とは、ひとことでいうと「便の水分が多い状態」のことをいいます。
そもそも便には水分が多く含まれており、腸が健康な状態で排出されるバナナ状の固形便でも、70%以上の水分が含まれているのです。

水分が80%以上になると「泥状便(でいじょうべん)」となり、90%以上になると「水様便(すいようべん)」となります。
このように、液状に近い泥状便と水様便を短時間で頻繁に排出する状態を下痢といいます。

では、私達が食べたものは、体内でどのようなしくみで排出されるのでしょうか。
口から摂取した食べ物は、胃で消化されて消化しやすい大きさにまで細かく分解されます。
分解された食べ物は、小腸を通るときに体に必要な栄養素を吸収します。
その後、大腸で水分を吸収して残ったものが便として排出されていきます。

大腸には、水分を吸収する働き以外にも、水分を分泌したり、腸の内容物を先へ送ったりする「ぜん動運動」の3つの働きがあります。
この3つの働きのバランスが崩れることで下痢を引き起こしやすくなります。

  • ぜん動運動性下痢
  • 浸透圧性下痢
  • 分泌性下痢

ぜん動運動性下痢は、大腸のぜん動運動の働きが高まって活発になりすぎると、内容物の水分の吸収が不十分になり下痢になります。
また、浸透圧性下痢は、大腸が内容物から水分を充分に吸収しきれないまま排出されると下痢になります。
そして、大腸は水分を吸収するだけではなく、水分の分泌という働きもあります。
分泌性下痢は、その分泌量が多くなり、便の水分量が多くなって下痢になってしまうのです。

下痢の原因とは

下痢のメカニズムがわかったところで、今度は下痢の原因について考えてみましょう。
下痢の原因は、以下のようなものがあります。

  • 暴飲暴食
  • ストレス
  • 食中毒

まず急性の下痢で考えられるのが暴飲暴食による下痢です。食べ過ぎた食べ物が、腸で消化しきれずに下痢になってしまいます。
また、過度なアルコールが腸を刺激して下痢になることもあります。
さらに、冷たい飲み物を飲みすぎたときにも、腸の粘膜の一部が刺激されて、大腸のぜん動運動が活発になりすぎてしまい、水分を吸収しきれずに下痢になります。

次に、ストレスによる下痢は、精神的な不安や苦痛、緊張によって自律神経のバランスが崩れると、腸が過敏に反応してぜん動運動が過度に活発になり、下痢が引き起こされると考えられています。
このストレスによる下痢の大半を占めるのが「過敏性腸症候群」です。
過敏性腸症候群は、検査ではまったく異常がみつからないにもかかわらず、腹痛を伴う下痢が続いたり、下痢と便秘を交互に引き起こしたりする症状のことをいいます。

また、食中毒による下痢は、O-157やサルモネラ菌、ノロウイルスといった細菌やウイルスが体内に入り、急性の下痢の症状があらわれます。
食中毒による下痢は、腸が水分分泌をして菌やウイルスを早く体外へ出そうとしています。
これを無理に薬でとめてしまうと、毒素が体内で停滞し消化管を傷める原因になります。
下痢や嘔吐だけではなく、血便や脱水の症状がみられたら、すぐに医師の診察を受けましょう。

下痢に悩まされた経験がある20~40代の男女100名に取ったアンケートでも、水分の取り過ぎや食べ過ぎ、刺激物を食べたときといった飲食に端を発する下痢が大半を占めます。
いずれも、ぜん動運動性下痢の原因です。特定の食べ物で下痢になる人もいました。

また、因果関係は解明されていませんが、 体を冷やしたとき下痢になると感じる人も多いようです。

アンケートの回答では、過敏性腸症候群の原因であるストレスによる下痢も目立ちます。
過去に外出中や重要な場面で下痢になってしまい、それ以来、自由にトイレへ行けない環境を不安に感じるという回答もありました。

そのため、下痢に悩まされている人は、普段から体を冷やさないようにしたり、トイレのあるところだけ行ったりするように心がけているようです。

同じアンケートで下痢の際の失敗談を聞いたところ、

  • 信号待ちで激しい腹痛に襲われ、飲食店に駆け込んだ
  • 楽しみにしていたライブ中にお腹が痛くなったがトイレにいけず、集中できずにその後の記憶がない
  • お腹がギュルギュルして恥ずかしかったし笑われた
  • 間に合うと思いギリギリまで我慢したが間に合わなかった

など、予定に影響を及ぼしたり、恥ずかしい気持ちになったことなどが多く挙げられました。

それでは、下痢になってしまった際にはどのように対処すれば良いのでしょうか。

下痢になったときの対処法

下痢をおこしても、少し安静にしていたり市販薬を飲んだりするとほとんどの場合、数日で治まることが多いですが、下痢の他にも次のような症状がみられたら、すぐに病院を受診するようにしましょう。

  • 激しい痛み、症状の悪化
  • 嘔吐や発熱
  • 便に血が混じっている
  • 排便後にも腹痛が続く
  • 脱水症状がある
  • 同じものを食べた人も同時に下痢をしている

など

普段から体質的にお腹を下しやすい人は、下痢の症状がみられたら胃腸を休めるために消化の良い食べ物を食べるようにしましょう。
また、体内の水分が失われていますので、水分を補給してください。スポーツドリンクは失われた電解質を補ってくれるためおすすめです。
ただ、腸の粘膜を刺激しないよう、常温のものを少しずつ摂取しましょう。

その他にも、市販されている下痢止めや整腸剤を適宜使用して、下痢による体力の消耗を抑える方法が有効です。
なお、市販薬を服用しても回復しない場合は医師の診察を受けましょう。

アンケートでは、下痢になったときの対策として、下痢止めの薬を飲む、安静にする、という回答の他に、お腹に優しい食べ物を口にするという意見が中心となりました。

下痢のときの食事はどうすべきか

下痢になると体内の水分が失われると同時に、体力を消耗しています。
症状が治まってきたら、体力の消耗を防ぎ、細胞の再生を促すために、できるだけ早く食事をすることが大切です。

おかゆ、よく煮込んだうどんなどのエネルギーとなる食品や、傷ついた粘膜を修復するために必要な、タンパク質が豊富な卵、豆腐、鶏のささ身などを食べましょう。
他にも、消化吸収の良いヨーグルトや、カリウムが豊富なりんごのすりおろしたもの、バナナもおすすめです。

反対に、下痢をしたときに控えるべき食品は、脂肪分の多い肉、うなぎ、揚げ物です。また、腸内で発酵しやすいキャベツ、さつまいも、豆類も控えましょう。
他にも消化吸収の悪いラーメンやお菓子、海藻類、玄米、腸に刺激を与えてしまうカフェイン飲料、炭酸飲料、アルコール類なども控えましょう。

アンケートでも、おかゆや煮込んだうどんなど、温かくて消化の良い食べ物が人気です。
ゼリー飲料のように摂取しやすいものも重宝されています。油ものを控えるという意見も目立ちました。

ただし、食物繊維やゼロカロリーの食べものが下痢に良いと勘違いしている人も、少数ですがいるようです。

下痢になりにくい腸になるには

体質的にお腹を下しやすい方は、腸をいたわる生活ができているかどうかを振り返ってみましょう。
過度なストレスがかかるお仕事を抱えていたり、睡眠不足が続いたりすると自律神経のバランスが乱れて腸にストレスがかかってしまいます。

下痢になりにくい腸にするには、一般的にもよくいわれていることですが、適度に運動をしたり、充分な睡眠をとったりすることはとても大切なのです。

また、ふだんの食事方法も見直してみましょう。暴飲暴食をしたり、冷たい飲み物やアルコール類を飲みすぎたりしていませんか。
これらは、腸を過度に刺激するため、下痢の原因となります。なるべくバランスの良い食事をゆっくり摂るようにしましょう。

他にも腸を整える栄養をすすんで摂ることも、下痢になりにくい腸にするために欠かせません。
人間の腸内には、細菌が1,000種類、100兆個も生息しています。腸内環境を整えるには、乳酸菌などの善玉菌を腸内で少しでも多く増やすことが大切です。

また、乳酸菌などの善玉菌は腸内に住み着くことがありませんので、毎日摂取しましょう。

乳酸菌を直接摂取できるヨーグルトや乳酸菌飲料、納豆などを毎日食べるようにし、乳酸菌を増やす作用があるオリゴ糖や食物繊維も同時に摂るように心がけましょう。

まとめ

突然襲ってくる下痢、長引く下痢は体力を消耗するだけではなく、生活にも支障をきたします。
軽い症状であれば市販薬が役に立つこともあるでしょう。
しかし、根本的な解決にはなりません。
体質的なものだと諦めずに、バランスの良い食事を摂ったり適切に運動をしたり、乳酸菌を積極的に摂取したりして、下痢になりにくい体作りを始めましょう。

【監修】花ノ木睦巳

広島中央通り 内科クリニック院長。消化器内科の専門医として、消化器がんの診断や治療(内視鏡治療や化学療法・緩和治療)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の診断・治療に取り組む。日本内科学会認定医。日本消化器病学会専門医・指導医。日本消化器内視鏡学会専門医。日本消化管学会専門医。日本超音波学会会員。

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