カカオ調達のケーススタディ:産地とのコミュニケーションが質の高い原料調達への第一歩

産地とのコミュニケーションが質の高い原料調達への第一歩

写真:カカオ豆
チョコレートの味の決め手となるのが、原料であるカカオ豆です。そのため海外の産地からいかに質の高いカカオ豆を調達するかが重要になります。最近では、より品質にこだわった明治オリジナルのカカオ豆を作ろうと、現地の農家と共にさまざまな研究も行ってきました。業界に先駆けたその取り組みをご紹介します。

チョコレートの風味は産地や品種・現地の発酵工程がキーポイント

チョコレートの主な原料は農作物であるカカオ豆です。カカオの木は赤道周辺の熱帯地方で栽培されています。カカオの実はラグビーボール状で、重さが250g~1㎏にもなります。厚さ約1㎝の硬い殻をもち、その中のパルプと呼ばれる白い果肉が、チョコレートの原料となるカカオ豆を守っています。1つの実には30~40粒のカカオ豆が入っています。

収穫したカカオの実からカカオ豆だけをすぐに取り出すことはできません。まず、パルプごと取り出して発酵させます。高温多湿の自然環境と天然の微生物が働いて発酵が進行します。カカオ豆を包んでいたパルプは発酵の過程で成分の変化によりほとんどが液化して消失し、カカオ豆が現われます。カカオ豆は発酵により化学変化が起こり、豆はチョコレート色に変化し独特の香りを放つようになります。発酵後のカカオ豆は水分を多く含んでいるため、現地で乾燥させ、乾燥が終わったカカオ豆が日本など世界各地に運ばれます。

チョコレートの味を決めるのは、この原料であるカカオ豆です。農作物のため、産地や品種によって風味に特徴がありますが、その風味は豆を現地で発酵させる段階で生じます。そのため、より高品質なカカオ豆を追い求めた結果、原料の購入に留まらず、原料そのものを農家と一緒に作っていこうというプロジェクトがスタートしました。実際にカカオ豆の産地に赴き、地域を選び、発酵や乾燥の条件を変えるなどの工夫をしながら、当社にあった風味のカカオ豆の開発を進めています。

写真:カカオ豆の木
写真:発酵後のカカオ豆

良いカカオ豆を作るための試行錯誤

写真:カカオ豆の発酵

カカオ豆は発酵のやり方で風味は驚くほど変わります。ブラジルの農園のプロジェクトを例に挙げるとカカオの収穫、選別、発酵、乾燥、輸送方法などについて現地の農協と共同で研究しさまざまな風味のカカオ豆を作りました。もちろん発酵させた豆をチョコレートに加工しないと風味は判断できません。そのため、農家一軒一軒のカカオ豆を日本に持ち帰って実際にチョコレートを作り、それぞれの農家にフィードバックして、問題点を一緒に改善してきました。現地と日本を年に何度も往復し、4年間でテストしたカカオ豆のパターンは100以上にのぼります。

その結果、商品開発部がコンセプトとしていた、フルーティな香りで少し酸味のある、これまでの当社にはないタイプのカカオ豆が完成。現在「チョコレート効果」など当社の主力製品に使われ始めています。

現地で一緒になって生産方法を考える

写真:カカオ豆の品質調査の様子

調達の工程で重要になるのが、当社が求める品質の原料をいかに安定的に入手できるか。今、高品質のカカオ豆は世界中のチョコレートメーカーに注目され、激しい競争にさらされています。

ブラジルのカカオ豆のプロジェクトで最も大変だったのが、各農家の意識を統一することでした。そのために、当社のやり方を一方的に押し付けるのではなく、まずはこれまでの現地のやり方を理解し、当社の求める品質を説明しながら、新たな生産方法を導入していきました。さらに定期的に現地を訪ね、生産者とのコミュニケーションを密にしています。

ブラジルに限らず他の産地でも、その年にとれたカカオで作ったチョコレートを必ず現地にフィードバックして食べてもらっています。産地と強固な信頼関係を築くことが、何より質の高い原料調達につながっていると考えています。

スタッフからのひとこと

写真:崎山 一哉

人と人との距離感を縮めることが品質向上につながる

崎山 一哉カカオ豆研究 担当

原料に対する理解では、生産者を知ることが大事です。日本とカカオ生産国との距離は飛行機で片道約2日間。常に心がけているのは、相手の文化や生活を知った上で、お互い納得のいく生産方法を開発することです。
カカオ農家は自分が育てた豆がどんな商品になるか見たことがありませんでした。そこで日本でチョコレートにして届けたら、家族総出で喜んで食べていました。地理的な距離を縮められませんが、人との距離感を縮めることは可能です。品質向上のためにも距離感を縮める努力を続けます。

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