近年注目されている糖である「オリゴ糖」。さまざまな種類のオリゴ糖を使った食品が発売されていますが、含まれる成分や働きについてはよく分からないという人もいらっしゃるかもしれません。実はオリゴ糖は身近な食品にも含まれており、さまざまな健康効果が期待されている糖です。
今回の記事では、オリゴ糖の種類と体内での働きを紹介します。よくある質問にもお答えしますので、ぜひ疑問を解消し、普段の食事に取り入れてみてください。

この記事の執筆者
管理栄養士
成松 由佳
大学院修士課程修了後、製薬メーカーでの勤務を経て栄養指導に従事。自身も食事改善によって長年悩んでいた便秘や肌荒れを克服。現在はWebライターとして、食事に悩む時間や精神的なストレスを減らせるよう情報提供している。
オリゴ糖とは?
オリゴ糖とは、炭水化物の一種です。炭水化物は構成単位である「単糖」がつながってできており、その数によっていくつかの種類に分かれます。単糖が3~9個つながったものがオリゴ糖と呼ばれます。しかし、明確な定義はなく、糖が2個つながったものも含めてオリゴ糖と呼ぶ場合もあります*1*2*3。
特に「難消化性オリゴ糖」と呼ばれる種類のオリゴ糖は、胃や小腸で分解されずに大腸に届き、腸内にすむ善玉菌を増加・定着させる機能が注目されています*4。
ちなみに、単糖が1個の糖は「単糖類」、2個の糖は「二糖類」と呼ばれます。砂糖の主成分であるスクロース(ショ糖)や、牛乳に含まれるラクトース(乳糖)は二糖類に分類されます*1。単糖類・二糖類はいずれも消化・吸収される成分であり、体内でエネルギー源として使われます*4。
▼主な炭水化物の分類*1*4
分類 | 単糖の数 | 主な成分 |
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単糖類 | 1個 | グルコース、ガラクトース、フルクトース |
二糖類 | 2個 | スクロース、ラクトース、マルトース |
オリゴ糖 | 3~9個 | ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖 |
多糖類 | 10個以上 | デンプン、食物繊維 |
オリゴ糖の種類
オリゴ糖には、含まれる単糖の種類によってさまざまな種類があります。ここでは機能性が期待されているオリゴ糖の内、代表的なものを紹介します。
ガラクトオリゴ糖
ガラクトースを含むオリゴ糖で、牛乳や発酵乳などに含まれています。母乳にも含まれることから、育児用粉ミルクにも配合されています。腸にすむビフィズス菌を増やし、排便回数を増やしたり、便の性質を改善したりする作用があります*5。
フラクトオリゴ糖
グルコースにフルクトースが結合してできたオリゴ糖で、玉ねぎ、ごぼう、バナナなどに含まれています*6。工業的にはスクロース(砂糖)を原料に製造され、食品原料としても使用されている成分です。乳酸菌やビフィズス菌のエサとなり、腸内環境の改善に役立つ成分です*7。
イソマルトオリゴ糖
グルコースが3~7個に枝分かれして結合した糖で、醤油やみりんに含まれています。腸内環境を改善する働きがある成分です。食品原料としてはデンプンを原料に製造され、保湿性があることから食品のしっとりした食感を保つ目的で使用されています*8。
アガロオリゴ糖
寒天の主成分である食物繊維の一種「アガロース」を分解してできたオリゴ糖です。脂肪の多い食事による腸内環境の乱れを改善する働きがあり、腸の炎症やメタボリック・シンドロームを抑える効果が期待されています*9。
シクロデキストリン
6~8個のグルコースが輪の形に結合してできた糖で、特に6個のものを「α-シクロデキストリン」と呼びます*6。輪の内側にほかの物質を取り込む性質があり、コレステロールの低減や血糖値の調節、肥満の抑制に作用することが知られています*10 。食品原料としてはほかの成分の分解を防ぎ、色や香り、栄養を保つ目的で使われています*6。
*1 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.152
*2 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 オリゴ糖」
*3 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「オリゴ糖」
*4 中村宜督「食品でひく 機能性成分の事典」女子栄養大学出版部, 2022, p.36-37
*5 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 ガラクトオリゴ糖」
*6 久保田紀久枝・森光康次郎編「食品学 食品成分と機能性 第2版」東京化学同人, 2008, p.45
*7 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 フラクトオリゴ糖」
*8 独立行政法人農畜産業振興機構「砂糖以外の甘味料について」
*9 内藤裕二「すべての臨床医が知っておきたい腸内細菌叢 基礎知識から疾患研究、治療まで」羊土社, 2021, p.318
*10 中久喜輝夫. オリゴ糖研究の最前線その1 緒言―オリゴ糖開発研究の現状と将来―. 応用糖質科学第1巻第4号, 2011, p.284
オリゴ糖の働きと効能
オリゴ糖にはさまざまな種類がありますが、期待される共通した働きがあります。ここでは、難消化性オリゴ糖の代表的な機能を2つ紹介します。
腸内環境を整える
難消化性オリゴ糖は、消化・吸収されずに大腸に届き、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌を増やし、腸内環境を整える働きがあります*11。
善玉菌はオリゴ糖を栄養源として「短鎖脂肪酸」と呼ばれる成分を産生します。短鎖脂肪酸は腸内での炎症を抑える、満腹感を生み出して食欲を抑える、エネルギーの代謝を高める、免疫機能を高めるなどのさまざまな働きが期待されている成分です*11。また、カルシウムなどのミネラルの吸収を高める働きにも関与していると考えられています*12。オリゴ糖をとって腸内環境を改善することで、これらの効果が期待できます。
むし歯を防ぐ
オリゴ糖は、むし歯をつくりにくい「低う蝕性」という性質があります。これは、むし歯の原因菌であるミュータンス菌がオリゴ糖を利用できないためです*12。ミュータンス菌は砂糖を利用して「グルカン」と呼ばれるネバネバした物質をつくり出します。グルカンは歯垢として歯に付着し、その中でさらに菌が砂糖を使って酸をつくり出すことで、歯の表面が溶け出し、むし歯を引き起こします*13。そのため、砂糖をオリゴ糖に置き換えることでむし歯の予防に役立ちます。
*11 内藤裕二「すべての臨床医が知っておきたい腸内細菌叢 基礎知識から疾患研究、治療まで」羊土社, 2021, p.102-106,316-318
*12 中村宜督「食品でひく 機能性成分の事典」女子栄養大学出版部, 2022, p.37-39
*13 独立行政法人農畜産業振興機構「子どものむし歯予防のために~お砂糖との上手な付き合い方~」
オリゴ糖についてよくある質問
オリゴ糖を日々の食事に取り入れる上で、よくある質問についてお答えします。ぜひお役立てください。
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食事にどうやって取り入れたらいいですか?
オリゴ糖は自然な甘味が特徴で、料理や飲み物の甘味づけとして使えます。砂糖やみりんの代わりに使うと良いでしょう。ただしオリゴ糖は砂糖に比べて甘味が弱いため、一部を置き換えるのがおすすめです。全量をオリゴ糖に置き換えると摂取量が増え、お腹がゆるくなる可能性があります*14。
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ダイエット中でもとって大丈夫ですか?
オリゴ糖は砂糖よりカロリーが低いものが多く、摂取エネルギーを抑えるのに役立ちます。砂糖は1g当たり4kcalですが、ガラクトオリゴ糖やフラクトオリゴ糖、シクロデキストリンなどのオリゴ糖では2kcal*15と砂糖より低いのが特徴です。ただし、食べ過ぎるとカロリーオーバーになることがあるため注意が必要です。
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オリゴ糖は血糖値を上げませんか?
今回紹介した難消化性オリゴ糖であれば、胃や小腸で分解されることなく大腸に届き、血液中に糖として取り込まれることもないため、血糖値を上げる心配はありません。ただし、オリゴ糖を含む商品には血糖を上げるほかの糖(砂糖、ブドウ糖など)が含まれることがあります。商品パッケージの表示を確認し、砂糖(ショ糖)や果糖ブドウ糖液糖が含まれている場合は、砂糖同様にとり過ぎに注意しましょう。糖尿病の人は主治医や管理栄養士に相談することをおすすめします。
*14 独立行政法人農畜産業振興機構「砂糖以外の甘味料について」
*15 消費者庁「難消化性糖質及び食物繊維の エネルギー換算係数の見直し等に関する 調査・検証事業 報告書」
まとめ
今回の記事では、オリゴ糖の種類とその働きについて解説しました。胃や小腸で分解されることなく大腸に届く「難消化性オリゴ糖」には、腸内環境を整える働きがあり、ミネラルの吸収をサポートするなどさまざまな機能があります。また、砂糖をオリゴ糖に置き換えることでむし歯の予防にもつながります。普段の食事にオリゴ糖を上手に活用し、健康的な毎日に役立ててみてください。