「便がすっきり出なくてなんだか重苦しい」
そんな便秘にお悩みの場合には、即効性があると言われているマッサージやツボ押しを試してみたくなりますよね。
マッサージは腸を外側から刺激できるため、便意を促すとイメージするかもしれません。食事方法や運動習慣をメインに取り入れつつ、マッサージも組み合わせて、軽やかな毎日を目指してみましょう。

この記事の執筆者
薬剤師/腸育コンシェルジュ
松本 萌
薬剤師ライターとして、セルフケアに関する記事を執筆している。前職のドラッグストアで健康相談を受ける中で、正しい知識を知らない人が多くいることを痛感。セルフケアの正しい知識を誰にでも分かりやすい言葉で紹介することを心がけている。薬剤師以外にも化粧品成分検定1級、腸育コンシェルジュなどさまざまな健康・美容の資格を取得。
便秘の原因について
まず、便秘とは医学的にどのような状態なのかを把握しておきましょう。
日本消化管学会は「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症(以下、ガイドライン)」の中で、便秘の定義を「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」としています*1。分かりやすく言い換えると、本来排泄されるべき便が大腸にとどまった結果、硬い便が出る・排便回数が減る・排便時に過度にいきむ・残便感があるなどの状態となります。つまり、たとえ毎日排便をしていても「便がスムーズに出ないことによる不快感」があれば便秘であると言えるし、逆に不快感がなければ普段から数日に1回しか排便していなくても便秘ではないとも言えます。
そして、ガイドラインでは便秘が続きやすい原因として以下をあげています*1。
- 女性である
- 身体活動性が低い
- 腹部の手術歴がある
- 加齢
- 特定の病気(消化管の病気、精神的な病気など)
- 特定の薬剤
便秘の原因の中でも、性別や加齢、病気は対策したくても難しいです。しかし、ガイドラインでは食事の改善や腹壁マッサージが役立つことが示唆されています*1。
*1 日本消化管学会「便通異常症診療ガイドライン2023慢性便秘症」南江堂, 2023, p.2,16,77-78
便秘対策のためのおすすめ腸活方法
便秘は毎日の快適さにもつながるため、日頃からの腸活が不可欠です。ここでは、毎日手軽にできる食事と運動による腸活と、マッサージによる対策を紹介します。
毎日の対策|腸にうれしい食事をする
腸にうれしい食事を心がけることで、便そのものの量や水分量が増え、スムーズな排便が期待できるでしょう。また、腸内の善玉菌が優位になりやすくなり、おなかの調子を整えることも期待できます。
腸にうれしい栄養素 | 特徴 | 具体的な食べ物 |
---|---|---|
水溶性食物繊維 | 腸内での善玉菌のエサになる。便の水分を増やして柔らかくする*2。 | わかめ、ひじき、大豆、こんにゃく、さつまいも、きくらげなど*3 |
不溶性食物繊維 | 便のかさを増して腸を刺激することで排便を促す*2。 | 干ししいたけ、ごま、えごま、しそ、アーモンド、おから、ごぼうなど*3 |
難消化性オリゴ糖 | 胃や小腸では消化・吸収されずに大腸へ届き、善玉菌のエサとなる*4。 | 玉ねぎ、ごぼう、にんにく、バナナなど*4 |
発酵食品 | 善玉菌そのものを含み、腸内環境を整えることにつながる*5。 | ヨーグルト、チーズ、納豆、キムチ、みそなど*5 |
また、水分の摂取量にも気をつけましょう。大人の場合、1日当たり2.5Lもの水分が尿・汗・便から排出されていると言われており、そのうち約1.2Lは食事以外の飲み水として摂取する必要があるとされています*6。
毎日の対策|適度に運動する
まだ十分なデータは集まっていないものの、便秘と運動の関連を示唆するいくつかの研究結果が出ています*7。
国内の40歳以上の男女を対象とした研究では、ウォーキングや筋肉トレーニングによって便が結腸を通過する時間が短くなったことが報告されています*7。また、薬剤の服用によって便秘になってしまった人が、4ヶ月間腹筋を続けたことで便秘を改善できた事例も発表されています*8。
有酸素運動や腹筋、ひねりのある動きを生活に取り入れてみましょう。米国の慢性便秘症女性患者を対象とした研究では、毎日運動をする人の方が、週1回運動する人より便秘が少なかったという報告もあるため、軽いものを毎日続けてみると良さそうです*7。
おなかのマッサージやツボ押しをしてみる
一般的に、おなかのマッサージやツボ押しをすることで腸が刺激されて排便を促すのではないかと言われています。
ただし、マッサージやツボ押しにはエビデンスが少ないため、便秘で困った時に「出たら良いな」くらいの軽い気持ちで試してみるのが良いでしょう。
マッサージは1日当たり15分を週5回以上行うと効果が期待できるとの報告もあります*7*9。また、エビデンスはありませんが、おなかを「のの字」にさする・左右の脇腹を揉む、といったマッサージが有名です*7。
*2 株式会社明治 からだカイゼン委員会「便秘を解消するには?便秘になりにくくなるためにできること」
*3 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年・第2章本表別表1」
*4 独立行政法人 農畜産業振興機構「プレバイオティクスとフラクトオリゴ糖~シュガーリプレイスメントから免疫改善まで」
*5 東京農業大学. 日本の食文化「植物性乳酸菌」を科学する. 「食と農」の博物館. No.15. 2006
*6 厚生労働省「健康のため水を飲もう講座」
*7 高野正太. 慢性便秘症に対する食事療法,運動療法,理学療法. 日本大腸肛門病会誌. 2019, 72, p.621-627
*8 円谷 由美枝ほか. 腹筋運動による便秘改善(抄録), 日本農村医学会学術総会抄録集. 2009
*9 Kristina Lämås et al.Effects of abdominal massage in management of constipation--a randomized controlled trial.Int J Nurs Stud . 2009,46(6),p.759-67
マッサージ方法3選
ここでは、一般的に排便を促すと言われている有名なマッサージやツボ押しを紹介します。
時計回りにおなかをさする
もっとも有名なマッサージ方法の1つです。おへそを中心にして「のの字」を書くように優しくおなかをマッサージしましょう*7。便が進む方向と同じ時計回りに刺激し、便を肛門へ運ぶイメージをもちながらマッサージを繰り返しましょう。
また、仰向けでのの字マッサージをしている際に、おなかが張っているように感じる箇所があれば指に力を入れて揉みほぐすのもおすすめです。
おなかを下から揉みほぐす
仰向けの状態で膝を立て、両手の指をおなかの下(おへそと骨盤の中間くらい)に入れ込んで揉みほぐしていきましょう。おなかを下からユサユサもち上げるようなイメージです。手は左右にずらしながら、おなかの下をまんべんなく刺激してみてください*10。
腹痛のある便秘(ねじれ腸)に対する運動として取り入れている医療機関もあります*10。就寝前や起床時に1分間くらいずつ行いましょう。
ツボを押す
「天枢(てんすう)」というツボを押すのもおすすめです。
天枢はおへそから指3本分くらい外側にあります。少し硬い場所が見つかるので、指の腹を使って小さな円を描くように優しく刺激しましょう*11。
*10 久里浜医療センター「リズム体操と持ち上げマッサージ」
*11 神戸医療福祉専門学校「【症状別】胃腸の不調に効くツボを紹介」
まとめ
便秘が続くと不快感により毎日の満足度が下がるきっかけにもなります。普段の食事に気をつけたり運動習慣を増やしたりして、気持ちの良い生活が送れるようにしていきましょう。
食事や運動をメインにしつつ、補助的にマッサージやツボ押しで大腸を刺激してみるのも1つの手です。
(参考文献閲覧日:2025年7月9日)
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