スーパーなどで1年中、気軽に購入できるバナナ。朝ごはんや間食に食べる人も多いですが、栄養価が高く、体調の維持や美容にも役立ちます。また、バナナには「オリゴ糖」「食物繊維」が含まれており、腸活におすすめの食材でもあります。
この記事では、バナナに含まれる栄養素と働き、健康効果について解説します。より効果的な食べ方についても紹介しますので、本記事を参考に普段の生活に取り入れてみてください。

この記事の執筆者
管理栄養士
小宮山 絢音
幼い頃から家族や友人のために料理を作った経験から、食に対して強い関心をもつ。大学時代は栄養学を専攻。卒業後には、料理の側面から食を学ぶため、専門学校でフードコーディネートを学ぶ。
レシピ制作・撮影、献立作成などに携わり、栄養バランスをアップさせるアレンジレシピの制作を得意とする。

この記事の監修者
管理栄養士/ヴィーガン&グルテンフリー専門家
たちばな かやの
大豆食品・ヴィーガン・グルテンフリー情報に特化する栄養専門家として活動している。栄養を学び、給食委託会社に入社後、病院と保育園で調理・食材発注・事務対応などを経験。アレルギー除去食をつくるうちに大豆の可能性に魅了され、大豆関連の資格を多数取得。また、プラントベースにも興味をもち、ヴィーガンやグルテンフリーについて学ぶ。
現在はコラム執筆やレシピ開発、セミナー講演のほか、自身でグルテンフリーのケータリング弁当屋を主催するなど精力的に活動している。食物アレルギーやヴィーガン・ハラル等の食のマイノリティが抱える悩みを解消し、食の多様性がある日本・世界を目指す。
バナナの主な栄養素と働き
私たちが普段食べているバナナには多くの栄養素が含まれます。はじめにバナナに含まれる主な栄養素とその働きについて解説します。
▼生のバナナに含まれる栄養素*1*2*3
栄養成分 | バナナ 生(可食部100g当たり) | 栄養素の効能 |
---|---|---|
エネルギー | 93kcal | 生命活動する上で必要なエネルギー源。とり過ぎると脂肪になりやすくなる。 |
たんぱく質 | 1.1g | 体内組織・ホルモン・酵素・抗体などをつくる材料。 |
脂質 | 0.2g | 体内のエネルギー源で細胞膜やホルモンの材料にもなる。 |
炭水化物 | 22.5g | エネルギーの素となる栄養素。なお、エネルギーの素になる糖と、エネルギーになりにくい食物繊維に分けられる。 |
食物繊維 | 1.1g | 便通の改善作用がある。 |
カリウム | 360mg | 体内のナトリウムを適切に排出する。 |
マグネシウム | 32mg | 神経の伝達に関わる。 |
ビタミンB1 | 0.05mg | 糖の代謝に必要。 |
ビタミンB2 | 0.04mg | 脂質の代謝に必要。 |
ナイアシン | 0.7mg | 糖・脂質のエネルギー代謝に不可欠。アルコール分解のサポートにも関わる。 |
ビタミンB6 | 0.38mg | たんぱく質の代謝に必要。 |
葉酸 | 26μg | 赤血球の生産をサポート。貧血防止に役立つ。 |
エネルギー

生命活動として体を動かすために必要なエネルギーですが、とり過ぎると脂肪となって体に蓄積されます*3。バナナは1本(可食部100g)当たり93kcal。ご飯お茶碗1杯(150g)234kcal、山形食パン1枚(80g)197kcalと比べると100kcal以上低い値です*1。
糖

糖は、炭水化物の一種でエネルギー源となるものです。バナナに含まれる糖には、ブドウ糖、果糖、ショ糖など、さまざまな種類があり、その中には、昨今注目されている「フラクトオリゴ糖」も含まれています。フラクトオリゴ糖は、乳酸菌やビフィズス菌のエサとなって腸内環境の改善に役立ちます*4*5。
食物繊維

食物繊維も炭水化物の一種で、エネルギー源になりにくいものです。水溶性と不溶性の2種類に分けられ、バナナに多く含まれるのは不溶性の食物繊維です*2。食物繊維には、便通を整える働きがあります*6。
ビタミンB1

ビタミンB1はエネルギー代謝に必要な栄養素です*3。摂取することで、疲労感やだるさを抑えます。加熱で失われやすいという特徴がありますが、バナナは生のまま食べられるため、効率良く摂取できます。
ビタミンB2

ビタミンB2は糖やたんぱく質、脂質をエネルギーに変えるために必要な栄養素です。成長期にビタミンB2が不足すると、成長障害を招く可能性が高くなります*3。子どもでも食べやすいバナナは、ビタミンB2を手軽に補う食材として役立ちます。
ナイアシン

ナイアシンはビタミンBの一種で、糖、脂質、たんぱく質のエネルギー代謝に必要不可欠です。また、アルコールが体内で分解されて発生するアセトアルデヒドを分解するサポートとしても働きます*3。
ビタミンB6

ビタミンB6はたんぱく質の代謝や、免疫機能の維持、神経の働きを正常に保つために必要な栄養素です。ビタミンB6が不足すると、口内炎や皮膚炎などの皮膚症状・神経障害が現れます*3。
葉酸

葉酸は赤血球の生産を助け、貧血防止に役立つ栄養素です。体の発育に重要な栄養素であるため、妊婦の摂取が不足すると胎児の神経管閉塞障害を招きます*3。妊娠期や授乳期の習慣的な摂取にもバナナは向いている食材です。
カリウム

ミネラルの一種であるカリウムは、塩分などに含まれるナトリウムを排出する作用がある栄養素です。塩分をとり過ぎた時は、バナナのようなカリウムを含む食べ物をとると良いでしょう*7。
マグネシウム

マグネシウムもミネラルの一種で、骨の形成や血圧の調節、筋肉の収縮、神経の伝達に関わる栄養素です。マグネシウムが不足すると骨、血圧、筋肉に異常が出るだけでなく、抑うつ感が生じることもあります*8。
*1 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年・第2章」
*2 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 炭水化物成分表編・第2章本表別表1」
*3 上西一弘「栄養素の通になる 第5版」女子栄養大学出版部, 2022
*4 久保田紀久枝・森光康次郎編「食品学 食品成分と機能性 第2版」東京化学同人, 2008, p.45
*5 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 フラクトオリゴ糖」
*6 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「食物繊維」
*7 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「カリウム」
*8 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「マグネシウム」
バナナに期待できる健康効果
次に、バナナに期待できる健康効果を順番に解説します。
便秘の改善

バナナは便秘の改善が期待できます。バナナを4週間摂取して排便状況を調査した研究では、「おなかの調子」、「すっきり感」が改善し、「排便回数」、「1日当たりの排便量」、「排便日数」が増加したことが報告されました*9。
バナナには、便通に良い影響を与える不溶性食物繊維が多く含まれており、不溶性食物繊維には便の量を増やして腸管を刺激し、腸の運動を活発化させ、便通を整える働きがあります*10。
厚生労働省から発行されている日本人の食事摂取基準(2020年版)では、食物繊維の摂取目標量は1日当たり18〜64歳の男性で21g以上、18〜64歳の女性で18g以上とされていますが、日本人の食物繊維摂取量は減少傾向にあり、現在の平均摂取量は1日当たり14g前後と推定されています*11*12。そこでバナナを食べることで、手軽に食物繊維を補えるでしょう。
また、バナナには近年注目されている「腸活」にも非常に優れた役割を果たす成分「フラクトオリゴ糖」も含まれています*5。「フラクトオリゴ糖」は胃や小腸で消化・吸収されることなく大腸へ運ばれ、腸内にすむ善玉菌のエサとなり、腸内フローラを改善し、さらに便通を改善すると報告されています*3。
むくみ予防

むくみにはさまざまな原因がありますが、食事による塩分過多も原因の1つです。日本人の食事摂取基準(2020年版)では、食塩摂取量の目標量(食塩相当量として)を、成人1人1日当たり男性7.5g未満、女性では6.5g未満としていますが、実際は男女ともに目標量よりも多く摂ってしまう人が大半です*13*14。カリウムを多く含むバナナをとることで、食塩を構成するナトリウムの排泄を促進することができるため、むくみ予防に役立ちます*13。
エネルギー補給・疲労回復

集中する作業が続いた後や運動後の疲労回復をするためには糖の補給が重要であると考えられています。バナナにはブドウ糖、果糖、でん粉などのさまざまな種類の糖が含まれているため、脳に即時にエネルギーを届けたり、運動時に必要なエネルギーを貯蔵している筋肉中のグリコーゲンの補給をしたりなど疲労回復に役立ちます*15。
運動後だけではなく、運動前に糖を補給してグリコーゲン量を高めると、持久力アップやパフォーマンス向上にもつながります*16。バナナは脂質が低いので、脂質の摂取を抑えつつもエネルギー補給・疲労回復をしたいときにピッタリの食材です。
*9 増田隆昌ほか. バナナ摂取がもたらす血圧降下、便通促進、精神安定効果−ランダム化単盲検並行群間比較試験−. New Diet Therapy. 2021, 37巻, 3号, p.3-10
*10 株式会社明治 Hello. Chocolate「食物繊維の多い食べ物は?効果的に摂取してお腹の調子を整えよう」
*11 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書 炭水化物」p164, p165
*12 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」
*13 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「ナトリウム」
*14 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書 ミネラル(多量ミネラル)」p306
*15 独立行政法人農畜産業振興機構「砂糖と健康~肝臓と筋肉の働きを高める砂糖の生理的役割~」
*16 独立行政法人農畜産業振興機構「スポーツと糖質~アスリートの基本の食事~」
バナナの効果的な食べ方とバナナの選び方
バナナの効果的な食べ方と、バナナの選び方・保存の仕方を解説します。
1日の推奨摂取量

バナナは1日1~2本が推奨摂取量です。農林水産省の「食事バランスガイド」によると、1日当たりの果物の摂取量は200g程度とされており、バナナに換算すると1〜2本となります*17。
特にバナナは1本(100g)あたり22.5gの炭水化物を含んでいます。厚生労働省は炭水化物の摂取量を1日の総エネルギー摂取量の50~65%にするという目標量を設定しており、ごはんやパンなどの炭水化物含有量が多い主食以外にバナナを何本も食べると、1日の炭水化物摂取量をオーバーする可能性があります*11。摂取量には注意しましょう。
バナナを食べるタイミング

バナナは基本的にどのタイミングで食べてもOKですが、おすすめのタイミングは朝食です。脳のエネルギー源はブドウ糖ですが、朝食を抜くと、脳や体が活動するためのエネルギー源が枯渇しやすくなり、集中力・記憶力の低下、体のだるさが残って元気がでにくく、午前中の勉強や仕事のパフォーマンス低下を招く恐れがあります*18。
そこで、忙しい朝でも食べやすく、糖や、代謝を良くするビタミンB群を多く含むバナナを朝食に取り入れることで、速やかに脳や体にエネルギー補給できます。乳酸菌を含むヨーグルトと合わせると、より腸活向けの朝ごはんになるのでおすすめです。
バナナの食べごろ

バナナは食べごろになると「シュガースポット」と呼ばれる黒い斑点が出現します。斑点が増える程に甘さが濃厚になって実も柔らかくなります。甘過ぎるのが苦手な人は、シュガースポットの状態を確認してお好みの甘さを見つけてみてください。
バナナの見分け方

美味しいバナナを見分けるには、房のつけ根と全体の形をチェックしましょう。房が太くて全体的に大きくてずんぐりした形のものの方が甘くて美味しいと言われています。
また、購入する際にシュガースポットがあると、数日間で傷んでしまう可能性があります。すぐに食べない場合は、シュガースポットが出ていなくて青みがかったバナナを選びましょう。
バナナの保存方法

バナナは基本は常温で保存できますが、常温のままだと追熟が進んでしまいます。お好みの状態に追熟した後は、新聞紙で包んで冷蔵庫に入れると、追熟を抑えて長期間保存できます。
また、皮を剥いてラップで包み、冷凍保存する方法もおすすめです。シャーベットのような食感になり、間食にも向いているデザートになります。毎日食べたい人は、一度に大量に買って冷凍庫にストックするのも良いでしょう。
*17 農林水産省「食事バランスガイド」について
*18 農林水産省「朝ごはんを食べないと?」
まとめ
今回の記事では、バナナに含まれる栄養素や、期待できる健康効果、おすすめの食べ方などについて解説しました。豊富な栄養素を含むバナナは、フラクトオリゴ糖や食物繊維など、腸活に効果的な栄養素を含んでいるのも嬉しいポイントです。包丁なども使わず、皮を剥けばすぐに食べられるのに、栄養豊富なバナナ。ぜひ食事や間食に取り入れてください。
(参考文献閲覧日:2024年12月10日)
合わせて読みたいおすすめ記事

プロバイオティクスとは?効果と種類・おすすめの食品・とり方のコツを紹介
善玉菌を育てるのに有効なプロバイオティクス。腸内フローラを整えるのに役立つと言われていますが、プロバイオティクスとは何のことなのでしょうか?この記事ではプロバイオティクスの種類とその働き、プロバイオティクスを含むおすすめの食品、プレバイオティクスとの違いについて紹介します。

プレバイオティクスとは?健康効果や食品例、効果的なとり方を解説
善玉菌を増やし、腸内環境を整えながら健康をサポートするプレバイオティクス。善玉菌のエサとなり、腸内環境を整えるのに有効と考えられています。今回はプレバイオティクスの効果や食品例、効果的なとり方について解説します。

ヨーグルトの栄養と効果|お悩み別の効果的なとり方を紹介
「ヨーグルトは健康効果が期待できるため食べたほうが良い」と聞くけれど、いつどれくらい食べればいいの?と分からない人もいるでしょう。この記事では、ヨーグルトの栄養や健康・美容への効果、おすすめの摂取量とタイミング、ヨーグルトの種類別の特徴を解説します。健康づくりやお悩み解消にお役立てください。

腸内環境を整えるメリットは?セルフチェック方法と対策を紹介
お腹の調子が悪いかも、と思った時に意識する腸内環境。腸内環境が乱れていると、便通だけでなく全身の健康にも影響が及ぶ可能性があります。腸内環境を整えるメリットとセルフチェック、腸内環境の整え方を紹介します。腸内環境を改善したいと思っている人はぜひ参考にしてください。