「ダイエット=食事制限」と思われがちですが、ただ食べる量を減らすだけでは、かえって太りやすくなったり、体調をくずす原因になったりすることもあります。大切なのは、必要な栄養をとりながら、無理なく続けられる食習慣をつくること。今回は、健康的なダイエットをサポートする食品の選び方と、日々の食事に取り入れやすい食材を紹介します。
                
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                      パティシエ/食品ライター
                      栗原 ともこ
                    
                  
                
パティシエとして13年働いた後、現在はヨガインストラクターおよびライターとして活動している。製菓衛生師やヨガの資格を複数保有する。様々な職歴と経験を経て、健康、ヨガ、食、ダイエット、レシピ開発、旅行など、幅広いジャンルの執筆をしている。
ダイエットのゴールは「見た目」より「健康的な体型」
ダイエットというと「とにかく体重を落とすこと」が目的になりがちですが、実際には、見た目だけでなく「健康状態」にも大きな影響を与えます。極端な食事制限によって一時的に痩せたとしても、筋肉量が落ちて代謝が下がれば、かえって太りやすく不調を招く原因にもなる可能性があります。
本当に目指したいのは「健康的でバランスの取れた体型」。その目安として使えるのが、BMI(ボディマス指数)です。BMIは、国際的に用いられている数値で、以下の式で計算できます*1。
BMI=体重(kg)÷[身長(m)の2乗]
BMIは18.5〜24.9が「普通体重」とされており、22が肥満との関連が強い糖尿病、高血圧、脂質異常症(高脂血症)にもっともかかりにくい数値とされています。
ただし、体型の美しさや健康は体重だけでは測れません。筋肉と脂肪のバランスを示す「体脂肪率」や、内臓脂肪の量なども重要な指標です。特に女性の場合は、女性ホルモンのバランスや冷え・むくみなども含めた、調子の良い体を目指すことも大切にしましょう*1。
*1 厚生労働省健康日本21アクション支援システム「肥満と健康」
ダイエット中におすすめしたい「食品の選び方」
「健康的でバランスの取れた体型」を目指すためには、日々の食品選びが大切です。ここでは、ダイエット中に意識したい食品の選び方のポイントを紹介します。
たんぱく質|筋肉を維持しながら体脂肪を減らす
ダイエットで体重が減っても、筋肉まで落ちてしまうと代謝が下がりやすくなります。そのため、筋肉量を落とすことなく脂肪を減らすには、たんぱく質の摂取がカギになります。
アスリートを対象にした研究でも、たんぱく質をしっかりとることで、体脂肪を優先的に減らし、ほかの部分(除脂肪量)は維持されたという結果が示唆されています*2。
たんぱく質を含む肉・魚・たまご・大豆製品などを毎食バランス良くとることが、健康的な体づくりにつながります。
食物繊維|腸内環境改善に加え、満腹感を得て食べ過ぎを減らす
食物繊維は、胃や小腸で消化・吸収されずに大腸まで届き、腸内環境を整えて便通を改善したり、食後の糖の吸収を緩やかにすることが期待されます。
実際に、おおむぎや全粒小麦に含まれる水溶性食物繊維β-グルカンの研究では、食後血糖値の上昇抑制や満腹感の持続、内臓脂肪の蓄積抑制など、肥満に関わる複数の指標を改善したとの結果が報告されています*3。
食物繊維を含む食品は噛みごたえがあり、満腹感を得やすいのも特徴です*3。自然と食べ過ぎを防ぎやすくなるため、ダイエットにも役立つだけでなく、腸内環境を良好に保つことにもつながります。
野菜やきのこ、海藻、雑穀、豆類など、食物繊維を含む食材を、日々の食事に少しずつ取り入れてみましょう。たとえば、みそ汁にわかめを加えたり、白米にもち麦を混ぜて炊くなど、無理のない工夫から始めてみてください*4。
ビタミンB群|代謝をサポートする
ビタミンB群は、三大栄養素である炭水化物・脂質・たんぱく質の代謝をサポートする栄養素です*5。無理な食事制限を伴うダイエットでは、ビタミンB群の摂取量も不足しやすくなります。代謝の働きを保つためにも、日々の食事で意識的に取り入れておきたい栄養素の1つです。
たとえば、ビタミンB1は豚肉や玄米に、B2はたまごや納豆に、B6はマグロやバナナに含まれています*6。「食べる量を減らす」ことに目を向けがちなダイエットですが、「必要な栄養素をきちんととること」は、健康的な体づくりには欠かせません。
              
                *2 METTLER, SAMUEL et al., Increased Protein Intake Reduces Lean Body Mass Loss during Weight Loss in Athletes.Medicine & Science in Sports & Exercise. 2010, 42(2):p.326-337.
                *3 青江誠一郎. 穀類含有食物繊維の肥満関連指標に対する改善効果に関する研究. 日本栄養・食糧学会誌, 2022年, 第75巻, 第6巻, p261
                *4 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「食物繊維の必要性と健康」
                *5 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書 ビタミン(水溶性ビタミン)」p185-212
                *6 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年・ 第2章(データ)」
              
            
ダイエットにおすすめの食材
ここからは、日々の食事に取り入れやすく、健康的な体づくりをサポートしてくれる食材を紹介します。身近で無理なく続けられるものを中心にまとめています。
さつまいも
さつまいもは、食物繊維を含むことから、ダイエットのサポートにおすすめの食材の1つです*6。便秘傾向のある女子学生を対象とした調査では、1日3食のうち1食に100〜200gのさつまいもを1週間ほど継続して摂取した結果、個人差は若干あるものの、排便の改善が多くの人に見られたと報告されています*7。
オートミール
オートミールの主原料であるオーツ麦には、水溶性食物繊維の一種「β-グルカン」が含まれています。オーツ麦のβ-グルカンには、血糖値の急激な上昇を抑える働きや、排便を促す働きがあると報告されており、ダイエットを意識した食生活のサポートにも役立つ食材として注目されています*8。
豆乳などの大豆製品
豆乳には、大豆由来のオリゴ糖(スタキオースやビートオリゴ糖(ラフィノース)など)が含まれています*9。これらの大豆由来のオリゴ糖は、少量でも便秘傾向のある人の排便回数を増やすなど、腸内環境を整える働きが報告されています*9。
さらに大豆製品は良質なたんぱく質を含むため、筋肉量の維持や代謝アップにも役立ち、ダイエット中の体づくりをサポートする食材として注目されています*10 。
              
                *7 津久井亜紀夫. サツマイモデンプン”その抗メタボ食品への大変身. いも類振興情報, 2008年, 97号, p25,27,28
                *8 荒木 茂樹ほか. 大麦の生理作用と健康強調表示の現況. 栄養学雑誌, 2009, Vol.67,No.5, p243
                *9 原 淑恵ほか. 大豆オリゴ糖の低投与量による便性状改善効果. 栄養学雑誌, 1997, Vol.55,No.2, p83
                *10 独立行政法人 農畜産業振興機構「骨格筋量の維持・増加に向けたたんぱく質摂取の重要性」
              
            
まとめ
今回は、ダイエット中に意識したい食品の選び方と、健康的なダイエットをサポートするのにおすすめの食材を紹介しました。「体重を落とす」ことだけにとらわれず、代謝や腸内環境など体の内側にも目を向けることで、無理なくダイエットを続けられます。さつまいも、オートミール、大豆製品といった身近な食品を取り入れて、日々の食事から少しずつ整えていきましょう。
ぜひ、ご自身の体調や生活スタイルに合わせて、健康的で心地良い食習慣を楽しみながら、自分のペースでダイエットに取り組んでみてください。
(参考文献閲覧日:2025年7月30日)
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