糖質制限に取り組むと砂糖の摂取を控える必要があり、「甘いものが食べられない」と思いがちです。甘いものを我慢することでストレスが溜まり、糖質制限を続けられなかった人も多いのではないでしょうか。しかし実は、糖質制限中でも使える甘味料があります。
本記事では、糖質制限におすすめの甘味料を紹介します。併せて、気になるデメリットや甘味料の上手な取り入れ方も解説するので、糖質制限を無理なく続けたい人はぜひ参考にしてください。
                
                  この記事の執筆者
                  
                    
                      管理栄養士
                      いしもと めぐみ
                    
                  
                
病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験して独立。栄養・健康分野の記事執筆のほか、栄養指導、食が楽しくなるレシピの発信などを行う。
糖質制限におすすめの甘味料
糖質制限とは、糖質の摂取量を抑えることで血糖値の上昇を防ぐ食事法です*1。糖質制限に取り組む際に気を配る食材の一つに、甘味料があります。甘味料として一般的に使われている砂糖は、血糖値を上げる糖質の一種であるため、摂取を控える必要があります。
ただし、甘味料として活用できるのは砂糖だけではありません。甘味料の中には血糖値を上げにくいものもあるので、砂糖の代わりに取り入れることで糖質制限を無理なく継続できるでしょう。ここでは、血糖値に影響しにくい甘味料を紹介します。
難消化性オリゴ糖
オリゴ糖は、炭水化物の最小単位である「単糖」が3〜9個つながって構成された物質です*2。胃や小腸で消化・吸収されずに大腸まで届く難消化性オリゴ糖は、血糖値にほとんど影響を与えないと言われています*3。難消化性オリゴ糖には、フラクトオリゴ糖や乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)などがあります。
難消化性オリゴ糖のメリットは、血糖値を上げないだけではありません。大腸に届いた難消化性オリゴ糖は善玉菌であるビフィズス菌などのエサになり、善玉菌の増殖をサポートするため、整腸作用が期待できます*4。さらに、むし歯になりにくいことも難消化性オリゴ糖の特徴の1つです*3。
合成甘味料(人工甘味料)
合成甘味料(人工甘味料)は人工的に化学合成された甘味料で、アスパルテームやアセスルファムカリウム、スクラロースなどがあります。合成甘味料は糖質を含まない「非糖質系甘味料」に分類され、血糖値にほとんど影響を与えないとされています*5。
合成甘味料の特徴は、甘味度が極めて高く、少量でも十分な甘みを得られることです。中でも、スクラロースの甘味度は砂糖の600倍とされています*6。その特徴から、合成甘味料は市販の清涼飲料水やお菓子などに広く使用されています。
また、合成甘味料には砂糖に比べてカロリーが低い、むし歯になりにくいといった特徴があり、カロリー低減やむし歯予防を目的に利用されることも少なくありません*6。
天然甘味料
天然甘味料とは、植物の葉や果実などに含まれている甘味成分を抽出してつくられる甘味料です。代表的なものに、ステビア、甘草(グリチルリチン)、羅漢果(らかんか)などがあります*3。天然甘味料も糖質を含まない「非糖質系甘味料」であり、血糖値にほとんど影響を与えません*6。
天然甘味料のエネルギーは砂糖と同程度です。しかし砂糖と比べて甘味度がかなり高く、少量の使用ですむことから、結果的に摂取エネルギー量を抑えられるメリットがあります。さらに、むし歯になりにくいことも特徴です*6。
糖アルコール
糖アルコールとは、糖質に水素を添加してつくられる甘味料です*7。名前に「アルコール」と付いていますが、お酒とは別物なので、子どもやお酒が飲めない人でも問題なく使えます。エリスリトールやマルチトールなどの糖アルコールが甘味料として利用されています。
糖アルコールは胃や小腸で消化・吸収されにくい性質があるため、血糖値の上昇がほとんど見られません*6*7。加えて、糖アルコールにはむし歯の原因になりにくい性質もあります。特にキシリトールはむし歯になるリスクが低く、むし歯予防を目的としたガムやタブレットのほか、歯磨き粉にも使われています*6。
              
                *1 山田悟「ロカボで食べるとやせていく」幻冬舎, 2016, p.59
                *2 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.152
                *3 独立行政法人 農畜産業振興機構「砂糖以外の甘味料について」
                *4 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 プレバイオティクス」
                *5 櫻井勝. 摂取栄養素と高血糖. 5. 人工甘味料と糖代謝. 日本糖尿病学会誌. 2016, 59巻1号, p.33-35
                *6 竹並恵里「炭水化物の摂り方・選び方パーフェクト事典」ナツメ社, 2022, p.125, 130-133
                *7 布施雅昭. 糖アルコールの特性と利用. 日本食生活学会誌. 1999, Vol.10No.3, p.2-6
              
            
血糖値を上げにくい甘味料のデメリット
糖質制限におすすめの甘味料の中でも、合成甘味料(人工甘味料)については、習慣的にとり続けると糖尿病のリスクが高まることが報告されています。
砂糖などの甘味料を摂取すると、舌で甘味を感じた後に血糖値が上昇しますが、合成甘味料は甘味を感じても血糖値がほとんど変化しません。そのため、体のエネルギー調整の仕組みがうまく機能しなくなり、食欲のコントロールが難しくなることがあります。その結果、食べ過ぎて太ってしまい、糖尿病のリスクが上昇する可能性があるのです*5。
また、合成甘味料の強い甘味に慣れて感覚が鈍り、より甘味を求めるようになることも原因の1つとして考えられています*5。さらには、合成甘味料が腸内細菌叢に影響を与え、血糖値が正常よりも高くなる可能性も示唆されています*5。
合成甘味料は糖質制限に役立つ甘味料ですが、このようなデメリットが指摘されていることも知っておきましょう。
糖質制限にオススメの甘味料の上手な取り入れ方は?
血糖値への影響が少ない甘味料は、次のポイントを意識するとより効果的に活用できます。
- 
                
適量を守る
 - 
                
原材料を確認する
 - 
                
自分に合う甘味料を見つける
 
それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
適量を守る
甘味料は、商品パッケージに記載されている目安量を守って使用しましょう。胃や小腸で消化・吸収されない甘味料の場合、多くとり過ぎるとおなかがゆるくなることがあります。これは、便の浸透圧が高くなることで水が引き込まれやすくなり、便の水分量が増すためと考えられています*8。
体質によっては少量でもおなかがゆるくなる可能性があることから、初めて甘味料を利用する際は少しずつ試すようにしましょう。
原材料を確認する
市販の甘味料を選ぶ際は、原材料表示でほかの甘味料が使われていないか確認することが大切です。たとえば、オリゴ糖は砂糖よりも甘さが控えめなため、商品によってはほかの甘味料を加えて甘みを強めていることがあります*3。糖質制限を目的に利用する場合は原材料表示を確認し、ほかの甘味料の含有量ができるだけ少ないものを選びましょう。
自分に合う甘味料を見つける
甘味料はただ「甘い」だけではなく、それぞれ特有の風味があります。そのため、砂糖の味に慣れていると違和感を覚えることがあります*8。自分に合わない甘味料を無理に使い続けても、かえって糖質制限がつらくなるだけです。さまざまな甘味料が市販されているので、味が好みなもの、使い勝手が良いものなど、お気に入りを見つけてみましょう。
*8 山田悟「糖質制限の真実」幻冬舎, 2015, p.165, 166
まとめ
今回は、糖質制限におすすめの甘味料を紹介しました。糖質制限をしているからと言って、甘いものが食べられなくなるわけではありません。オリゴ糖(難消化性オリゴ糖)、合成甘味料(人工甘味料)、天然甘味料、糖アルコールといった血糖値への影響が少ない甘味料を上手に利用すれば、甘いものを楽しみながら糖質制限に取り組めます。
ただし、甘味料には体へのデメリットが指摘されているものも存在します。使用目安量や原材料を確認しながらうまく取り入れて、糖質制限を無理なく続けていきましょう。
(参考文献閲覧日:2025年8月1日)
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