デトックスとは?不調サインと日常でできる改善法

デトックスとは?不調サインと日常でできる改善法

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体内に蓄積された老廃物や毒素を排泄するケア方法の1つである「デトックス」。この記事では、デトックスによって期待される効果や、デトックスが必要な時について解説します。

また、日常生活に取り入れられるデトックス習慣についても紹介します。疲れや肌荒れなどの不調が気になる人は、ぜひ生活にとり入れてみてください。

この記事の執筆者
薬剤師/医療ライター
高山 ゆり子

薬学部を卒業後、薬剤師として調剤薬局に勤務。現在は薬局勤務のかたわら、医療ライターとしても活動。医療・健康分野で執筆を通して正確な知識と情報を届けることを心がけている。YMAA認証マーク取得。

目次
  1. デトックスとは
  2. デトックスをするメリット
  3. デトックスが必要なサインとは?
  4. すぐにできるデトックス習慣
  5. まとめ

デトックスとは

デトックスとは体内に蓄積された老廃物や有害物質(毒素)を排泄して健康を促進する方法の1つです。

有害物質である毒素には、過剰な塩分やアルコール、薬物、重金属(水銀、鉛、カドミウムなど*1)、食品添加物などがあげられます。

デトックスは英語の「detoxification」を略した言葉で、日本語では「解毒」と表現されることもあります。

*1 井村伸正ほか. 環境汚染性重金属のトキシコロジー. 化学と生物. 1981. Vol.19, No.12. p.775

デトックスをするメリット

デトックスをすると免疫力の向上や肌質の改善、疲労回復など体にとってさまざまな良い影響があると言われています。ここでは具体的なメリットについて紹介します。

腸内環境を整える

デトックスで腸に溜まった老廃物や毒素を排泄すると、腸内環境が整い善玉菌が増えやすくなります。

腸内に悪玉菌が増えると蠕動(ぜんどう)運動が鈍くなります。便が腸に長くとどまる、つまり便秘の状態になりますが、それ以外にも体に悪影響を与えることが知られています。

たとえば、便秘になると大腸でインドールやパラクレゾールといった腐敗産物が産生されます。これらが肝臓で代謝されると腎毒性をもった物質になり、慢性腎臓病のリスクになることが報告されています*2。

また、腸は栄養を吸収し老廃物を排泄するほか、免疫細胞が集まる重要な臓器です。日頃からデトックスを行い腸内環境を改善すれば、体の負担を減らし日々の不調が軽減されるでしょう。

肌荒れ改善の期待

便秘により腸内で産生されるフェノールやパラクレゾールは肌が荒れる原因の1つでもあります。

健常な女性に腸内環境を改善する目的でガラクトオリゴ糖を含むビフィズス菌発酵乳を摂取させたところ、血中パラクレゾールが減少し、肌の状態や質の改善が認められたという研究結果があります*3。

腸内環境を整えることにより肌荒れの改善が期待できる点も、デトックスの大きなメリットであると言えるでしょう。

むくみ改善のサポート

体内に溜まった過剰な塩分や水分が排泄されてデトックスが進むと、むくみの改善が期待できます。

女性にリンパドレナージを行った研究では、リンパの流れが悪くなっている状態では、脂肪をエネルギーとして利用する機能が低下するという結果が出ています*4。これはむくみを改善すると脂肪がエネルギーとして利用されやすくなり、代謝が上がる可能性を示唆しています。

過剰な塩分や水分のデトックスによるむくみの改善は、見た目がすっきりするだけでなく、代謝の向上も期待できるでしょう。

*2 中島淳. 下部消化管機能性疾患診療の最近の進歩 ~慢性便秘症を中心に~. 日本内科学会雑誌.2023.112巻第9号.p.1692
*3 飯塚量子. 腸内細菌が皮膚生理に及ぼす影響.腸内細菌学雑誌. 2011. 25巻2号. p.105
*4 Zuzana Varaliová,et al., (2020 March 05).Lymphatic drainage affects lipolytic activity of femoral adipose tissue in women.International Journal of Obesity.2020.44.p1974–1978

デトックスが必要なサインとは?

以下のような症状が現れると、デトックスがうまく行われていない可能性があります。

  • 下痢や便秘
  • 肌荒れ
  • からだのむくみ
  • 疲労感
  • イライラや集中力の低下など

デトックスと深く関わっている解毒機能の1つが「腸肝循環」です。肝臓に運ばれた毒素は無毒化され、胆汁酸と一緒に腸に排泄されます。その一部は腸内細菌による代謝を受けて、腸から再吸収され、肝臓に戻ります。このサイクルが腸肝循環で、ビタミンやホルモン、胆汁酸などのリサイクルに役立っています*5。

腸内細菌に悪玉菌が多いと、リサイクルされた胆汁酸は細胞に損傷を与える毒性をもつようになり、この毒性が細胞の老化を促進します。さらに、老化した細胞は炎症を引き起こす物質を放出し、発がん性を高めることが分かっています*6。このように、腸肝循環は細胞老化とも深く関わっているのです。

また、老廃物を尿として排泄する役割のある腎臓では、排泄が滞ると、体のだるさやむくみ、尿が少なくなるなどの症状が現れ、ひどくなると、尿毒症に至ってしまいます*7。

デトックスが必要なサインに気付いたら、腸内環境を良くするための食生活の見直しや、適切な水分補給など心がけるようにしましょう。

*5 公益社団法人 日本薬学会「腸肝循環」
*6 日本離床学会「Q&A Vol.532 【見逃せない腸肝循環】腸と肝機能に関するQ&A」
*7 一般社団法人 日本腎臓学会「腎臓がわるくなったときの症状-一般のみなさまへ」

すぐにできるデトックス習慣

デトックスのためには日頃から排便や排尿など排泄機能を高めておくことが大切です。日常生活でできるデトックス習慣を紹介します。

腸にうれしい食材を食べる

腸内環境を整えるため、日々の食事に善玉菌を増やしたり、腸の蠕動運動を促したりする食材を取り入れるようにしましょう。そこで注目したいのがプロバイオティクスとプレバイオティクスです。

プロバイオティクスは、一般に善玉菌と言われるビフィズス菌や乳酸菌のことです。プロバイオティクスを含む食品には、ヨーグルトや納豆、ぬか漬け、キムチなどがあります。しかし、プロバイオティクスは大腸に届いても定着しづらいため、コツコツととり続けることが重要です*8。

プレバイオティクスは善玉菌のエサとなる成分で、オリゴ糖や水溶性食物繊維がこれに該当します。オリゴ糖を含む食材にはバナナや玉ねぎ、はちみつなどがあり、水溶性食物繊維を含む食材には海藻類やごぼうなどがあります*8*9。

プロバイオティクスとプレバイオティクスは同時にとることで、効率良く善玉菌を増やすことが期待できます*10。

さらに、便のかさを増やして蠕動運動を促す働きをもつ不溶性食物繊維も食事に取り入れましょう。不溶性食物繊維はオートミールやライ麦などの穀類や野菜、きのこ類、豆類に含まれます*11。

なお、高齢者やストレス性の便秘の人は、不溶性食物繊維をとり過ぎると便秘を悪化させる場合があるため、とり過ぎには注意しましょう*8。

水分補給をする

腎臓が老廃物を尿から排泄するためには、水分補給が欠かせません。

健康な成人では食事以外に1日約1.2Lの飲料水が必要とされています*12。水分は一度にたくさん飲むのではなく、こまめに補給するようにしましょう。

適度な運動をする

適度な運動習慣は血流を良くし、デトックス機能を高めることが期待できます。肝臓や腎臓に十分な血液が運ばれることで酸素や栄養素が行きわたり、解毒や老廃物の処理を効率的に行えるようになるためです。

また、運動をして汗をかくと皮膚から汗として老廃物や毒素を排泄することができます*13。

まずは無理なく続けられるウォーキングやサイクリングなど、軽い運動を取り入れると良いでしょう。

十分な睡眠をとる

夜間の十分な睡眠をとると、体内のデトックス機能が高まることが知られています。

脳には脳内の老廃物を排除する仕組みがあるとされており、その仕組みが夜間の睡眠中に活性化するという報告があります。脳の老廃物として有名なのがアルツハイマー病の原因となるアミロイドβです。睡眠不足は脳のデトックス機能を低下させ、アルツハイマー型認知症のリスクが高まることを示唆しています*14。

厚生労働省が推奨している睡眠時間は成人で6時間以上ですが、必要な睡眠時間には個人差があるため、自分に合った十分な睡眠をとるように心がけると良いでしょう*15。

*8 内藤裕二ほか.「腸すごい! 医学部教授が教える最高の強化法大全 健康な心も体もすべては腸しだい! 人生を変える腸内細菌の育て方完全ガイド」文響社, 2022, p.90-93.p.99-100
*9 独立行政法人 農畜産業振興機構「プレバイオティクスとフラクトオリゴ糖~シュガーリプレイスメントから免疫改善まで」
*10 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 シンバイオティクス」
*11 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年・第2章本表別表1(データ)」
*12 厚生労働省「健康のため水を飲もう講座〜からだと水の関係〜」
*13 森田昌敏. 重金属の代謝と体内分布. 有機合成化学. 1981. 第39巻第11号. p.1091
*14 岡田瑞恵ほか. 睡眠とアルツハイマー病-アミロイドβ蓄積の観点から-. 名古屋文理大学紀要. 2023. 第23号. p.82
*15 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」

まとめ

体内の老廃物を排泄するデトックスには、腸内環境や肌を整えたり、むくみを改善する効果が期待できます。下痢や便秘、肌荒れ、疲れ、むくみなどが気になる人は老廃物や毒素が溜まっている状態かもしれません。日頃からデトックスが滞らないように、腸内環境を整える食事を意識し、適切な水分補給や運動、十分な睡眠で排泄機能を高めておくようにしましょう。

(参考文献閲覧日:2025年7月10日)

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