「腸活はダイエットに良いらしい」そんな言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。ヨーグルトや発酵食品を意識して取り入れているけれど、実際に痩せるの?と半信半疑な人もいるかもしれません。今回は、腸活とダイエットの関係を分かりやすく解説しながら、無理なく続けられる腸活の方法を紹介します。

この記事の執筆者
パティシエ/食品ライター
栗原 ともこ
パティシエとして13年働いた後、現在はヨガインストラクターおよびライターとして活動している。製菓衛生師やヨガの資格を複数保有する。様々な職歴と経験を経て、健康、ヨガ、食、ダイエット、レシピ開発、旅行など、幅広いジャンルの執筆をしている。
腸活をするとダイエットになる?
腸活とは、腸内環境を整えて本来の腸の働きを取り戻すための活動のこと。
善玉菌を増やす食生活や生活習慣を取り入れることで、腸の調子が整い、結果的に心身の健康につながることも期待されています。では、腸活は本当にダイエットになるのでしょうか。
腸活に欠かせない食物繊維は、腸で働くだけでなく、血糖値の急上昇を抑える作用、血中コレステロールの低下を助ける機能もあることが示唆されています*1。さらに、食物繊維の摂取不足で、栄養の吸収や代謝の効率も変わってくると言われています*1。
もちろん、腸活だけで体重が減るわけではありませんが、日々の生活習慣を整える1つのきっかけとして、腸内環境を見直すことは理にかなった方法といえるのではないでしょうか。
*1 厚生労働省「食生活改善指導担当者テキスト~栄養指導・健康教育編~」2021年, 3月, p.2〜6, p.8〜10
腸内環境を整えるメリット
ここでは、ダイエットの観点から見た、腸内環境を整えるメリットについて紹介します。
体内の不要なものの排出を助ける
食物繊維には水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維の2種類があります。不溶性食物繊維は水分を吸収して、便のかさを増し、便通を促す働きがあります。水溶性食物繊維はナトリウムやコレステロールなどを吸着して、便と一緒に体外へ排出することが知られています*2。
代謝をサポートする
腸内細菌が食物繊維を発酵する過程で生成される「短鎖脂肪酸」は、エネルギー代謝にも関与することが示唆されています*3。私たちの体は、毎日の食事からエネルギーを産生し、生命活動や身体活動を行っています。
腸は、食べ物の消化・吸収を担う重要な器官であり、体内でのエネルギー代謝に必要な栄養素を吸収する役割も果たしているのです。そのため、腸内環境を整えることで本来の腸の働きが機能し、結果として代謝機能の働きをサポートすることにつながると考えられています*1。
食べ過ぎを防ぐことが期待できる
腸活によって食物繊維をとると、自然と「食べ過ぎ」を防ぐことが期待できます。
その理由は2つあります。
1つ目は、食物繊維は良く噛んで食べる必要があるため、満腹中枢が刺激される*5。
2つ目は、食物繊維が水分を含んで膨らむことで、胃の中でかさが増し、満腹感が得られる*4。
また、噛むことで唾液の分泌も増えるので、消化吸収の点でもメリットがあります*5。
*2
公益財団法人
長寿科学振興財団健康長寿ネット「食物繊維の働きと1日の摂取量」
*3
水島莉那ほか. 腸内細菌叢と生活習慣病
1.肥満・糖尿病の病態と腸内細菌叢3)短鎖脂肪酸を介した宿主のエネルギー・糖代謝調節.
日本糖尿病学会誌, 2020, 63巻,6号, p.373-374
*4
農林水産省「メタボリックシンドロームの予防・改善と果物の摂取」p.24
*5
独立行政法人
農畜産業振興機構「噛(か)むことの大切さを見直そう
~野菜の効用と食べるタイミング~」
腸活のやり方
最近の研究では、腸内環境と肥満との関連が分かってきました。ヒトでの十分な検証はまだこれからではありますが、ダイエットも意識して、腸内細菌のバランスを保つことを目指しましょう。
特に、腸内細菌の種類や比率は、食生活によって大きく変化するため、日々の食事がカギとなります。
食物繊維をとる
食物繊維は、腸内の環境を良好に保つのに役立つとされる栄養素の1つです。便の量を増やして排便をスムーズにしたり、血糖値やコレステロールへの影響も報告されています。野菜は低脂質・低エネルギーでありながら「かさ」が多く、満腹感を得やすいのが特徴です。ただし、そのままでは食べにくさを感じることもあるため、加熱して食べやすくするなどの工夫も大切になります。毎日の食事に少しずつ取り入れ、無理なく続けることが腸活のポイントです*6。
難消化性オリゴ糖を取り入れる
オリゴ糖の中でも難消化性オリゴ糖は、胃や小腸で消化・吸収されずに大腸へ届き、善玉菌のエネルギー源になり、短鎖脂肪酸を産生します*7。そのため、腸内環境を整えることで、便通や代謝のサポートにもつながると考えられているのです。
ただし、難消化性オリゴ糖を含んだ食品の中には、砂糖も一緒に使われている製品があります。ダイエットのためには、製品の原材料表示を確認し、砂糖などの他の甘味料を使わず難消化性オリゴ糖を使用した製品を選ぶのがポイントです。
発酵食品を習慣にする
発酵食品に含まれる乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は、腸内フローラを整えることが期待できます。みそや納豆、キムチなどの発酵食品は、日本人にとって身近で取り入れやすいので、毎日の習慣にしましょう*8*9。
発酵食品に含まれるアミノ酸が肥満予防にもつながることを示唆した研究結果もあります*10。
日本の発酵食品文化は、みそ・納豆・漬物・かつお節などの多彩な植物性原料や水産物由来の食品が中心です。特に発酵食品に含まれるアミノ酸のうち、グルタミン酸とヒスチジンについては、動物実験で脂肪蓄積の抑制や食欲調整などの作用が見られたと報告されています。さらに、「一汁三菜」スタイルと、発酵食品を日々取り入れることが、日本人の肥満率が比較的低い背景につながっているとも考えられています*10。
*6
厚生労働省
健康日本21アクション支援システム「野菜1日350gで健康増進」
*7
菅原正義, オリゴ糖の特性と生理効果. ビフィズス. 1993,
7巻1号, p.9
*8
公益財団法人腸内細菌学会「用語集 プロバイオティクス」
*9
鄭屹峰ほか, 麹発酵により生じたペプチドおよび
アミノ酸代謝物の機能, 日本醸造協会誌. 2022年, 117巻1号.
p16
*10
河野一世ほか,
日本食からみる発酵食品の多様性と日本人の健康―肥満を中心に.
日本調理科学会誌, 2010年, Vol.43, No.2, p.133
まとめ
今回は、腸活とダイエットの関係について解説し、食物繊維やオリゴ糖、発酵食品を取り入れることで腸内環境が整い、代謝や便通のサポートが期待できることを紹介しました。
「腸活って本当にダイエットになるの?」という疑問を持っていた人も、腸活のメリットや効果的な取り組み方をイメージできたのではないでしょうか。
腸活は、健康面だけでなく、ダイエットへの作用または機能、効果も期待されています。毎日の生活に、少しずつ腸活を取り入れていきたいですね。
(参考文献閲覧日:2025年7月8日)
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