腸活ブームとともに注目されている「オリゴ糖」と「乳酸菌」。身近な存在になりつつありますが、「とりあえず体に良さそう」と、なんとなく摂取していませんか?
今回は、オリゴ糖と乳酸菌の関係性をあげながら、近年提唱されている「シンバイオティクス」の基本と実践法を解説します。毎日の食事にオリゴ糖と乳酸菌を簡単に取り入れる方法や、食材の組み合わせのおすすめも紹介していますので、参考に最後までお読みください。

この記事の執筆者
管理栄養士/ヴィーガン&グルテンフリー専門家
たちばな かやの
大豆食品・ヴィーガン・グルテンフリー情報に特化する栄養専門家として活動している。栄養を学び、給食委託会社に入社後、病院と保育園で調理・食材発注・事務対応などを経験。アレルギー除去食をつくるうちに大豆の可能性に魅了され、大豆関連の資格を多数取得。また、プラントベースにも興味をもち、ヴィーガンやグルテンフリーについて学ぶ。
現在はコラム執筆やレシピ開発、セミナー講演のほか、自身でグルテンフリーのケータリング弁当屋を主催するなど精力的に活動している。食物アレルギーやヴィーガン・ハラル等の食のマイノリティが抱える悩みを解消し、食の多様性がある日本・世界を目指す。
オリゴ糖と乳酸菌の関係
オリゴ糖と乳酸菌は、どちらも腸内環境を整えるために注目されているものです。似たようなものと思われがちですが、それぞれの役割には明確な違いがあります。
まず、オリゴ糖は炭水化物の一種で、炭水化物の最小単位である単糖が3~9個程結合したものです*1。
オリゴ糖には「消化性オリゴ糖」と「難消化性オリゴ糖」があります。難消化性オリゴ糖は、胃や小腸で消化・吸収されることなく大腸に到達し、善玉菌のエサとなります。それにより善玉菌の増殖が促され、腸内細菌のバランスが整うことで、整腸作用や食後の血糖値の上昇抑制などの健康効果があるとされています*2*3。
また、難消化性オリゴ糖のように、善玉菌のエサとなる成分を「プレバイオティクス」と呼びます。プレバイオティクスをとる効果として、整腸作用による便秘改善、抗脂血作用、インスリン抵抗性の改善、ミネラル吸収促進、大腸がん・炎症性腸疾患の予防・改善、アレルギー抑制作用などが報告されています*4。
一方、乳酸菌は、発酵によって糖から乳酸をつくる嫌気性の微生物の総称です*5。腸内で悪玉菌の繁殖を抑え、腸内環境を整える有益な菌のため「善玉菌」と呼ばれています。
乳酸菌のように、腸で有用な働きをする微生物を「プロバイオティクス」と言います。プロバイオティクスにはビフィズス菌などがあげられ、便秘や下痢の改善、乳糖不耐症の改善、免疫機能改善による感染防御・アレルギー抑制、動脈硬化の予防などが報告されています*6。
このように、オリゴ糖は善玉菌のエサとなるプレバイオティクスであり、乳酸菌は直接摂取することで腸内の善玉菌を増やすプロバイオティクスであるという役割の違いがあるのです。加えて、プレバイオティクスとプロバイオティクスは、どちらか一方をとるよりも一緒に摂取することで相乗効果が期待できます。

善玉菌とは?働きと増やす方法を解説|良好な腸内環境には善玉菌がカギ!
善玉菌を増やすことで腸内環境が整うと耳にすることも多いでしょう。善玉菌には便通への良い影響以外にも、さまざまな働きがあります。この記事では善玉菌の働きと、善玉菌を増やす方法を解説します。
*1 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.152
*2 独立行政法人 農畜産業振興機構「砂糖以外の甘味料について」
*3 独立行政法人
農畜産業振興機構「プレバイオティクスとフラクトオリゴ糖~シュガーリプレイスメントから免疫改善まで」
*4 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 プレバイオティクス」
*5 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「乳酸菌」
*6 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 プロバイオティクス」
シンバイオティクスとは?
近年「シンバイオティクス」という考えが提唱されています。これは、プレバイオティクスとプロバイオティクスを組み合わせて摂取し、2つの機能がより効果的に働くことを目指したものです*7。
プレバイオティクスとプロバイオティクスのどちらか一方だけでも腸内環境への効果は期待できますが、エサを活用する菌とエサを一緒にとることで、より善玉菌の増殖や腸内への定着が期待できます。例えば、オリゴ糖ばかり摂取していても、善玉菌が少なければ活用されにくいです。また、乳酸菌を多くとっていても、腸内にそのエサとなるオリゴ糖などがなければ定着・増殖しにくい可能性があります。
ちなみに、シンバイオティクスの考えは臨床現場でも有用とされており、病態者の術後における感染防御、炎症抑制などにおいても効果が報告されています*7。

プロバイオティクスとは?効果と種類・おすすめの食品・とり方のコツを紹介
善玉菌を育てるのに有効なプロバイオティクス。腸内フローラを整えるのに役立つと言われていますが、プロバイオティクスとは何のことなのでしょうか?この記事ではプロバイオティクスの種類とその働き、プロバイオティクスを含むおすすめの食品、プレバイオティクスとの違いについて紹介します。

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*7 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 シンバイオティクス」
シンバイオティクスの方法
シンバイオティクスを実践するには、難消化性オリゴ糖などのプレバイオティクスとなる食品と、プロバイオティクスである乳酸菌などの善玉菌が入った食品を一緒にとる必要があります。具体的には、どんな食品がいいのでしょうか。
オリゴ糖を含む食品
今回は、難消化性オリゴ糖の1つであるフラクトオリゴ糖を含む食品を紹介します。フラクトオリゴ糖は野菜や果物などに多く含まれます。
特に多い食品では、ゴボウ、玉ねぎ、にんにく、ライ麦、バナナ、はちみつ、トマトがあげられます*2*3。特にゴボウは100g中に3.6gと、フラクトオリゴ糖が多く含まれています。
また、フラクトオリゴ糖は粉末やシロップ状の製品も販売されているので、砂糖の代わりに食事に取り入れることができます。
乳酸菌を含む食品
乳酸菌は発酵食品である、ヨーグルト、チーズ、漬け物、日本酒、みそ、醤油などに含まれています*5。その名のとおり、乳酸菌飲料も乳酸菌を含んでいます。
市販の食品では、加熱殺菌処理によって乳酸菌も殺菌されてしまいますが、近年の研究では、死滅した乳酸菌を摂取しても、免疫調節作用や整腸作用のほか、体脂肪の低減、精神的ストレスの軽減、歩行能力の改善などの効果が期待できるという結果も報告されています*8。
オリゴ糖と乳酸菌のおすすめ組み合わせ
オリゴ糖と乳酸菌、可能であれば毎日食事に取り入れたいですよね。次に、おすすめの組み合わせを紹介します。
-
ヨーグルト×はちみつ×バナナ
乳酸菌が含まれているヨーグルトに、はちみつ、バナナをトッピングしましょう。手軽に用意できるので朝食にも良いでしょう。
※このレシピにははちみつを利用しております。1歳未満の幼児には与えないでください。 -
チーズ×ライ麦パン
オリゴ糖を含むライ麦パンに、チーズをのせて食べる組み合わせもおすすめです。さらにトマトをのせても美味しく食べられます。 -
キムチ×トマト
カットしたトマトにキムチを和えるだけで、簡単にオリゴ糖と乳酸菌がとれる料理が完成します。夕食の副菜や、おつまみにもおすすめです。 -
ゴボウ×玉ねぎ×みそ
ゴボウと玉ねぎのみそ汁も良いでしょう。肉やほかの野菜も入れれば、一杯で満足感のあるみそ汁に仕上がります。
*8 弘田辰彦. 活用が広がる乳酸菌殺菌体とその機能. 醸協. 2020, 第115巻6号, p.313
まとめ
今回はオリゴ糖と乳酸菌の関係性、シンバイオティクスの基本や実践方法を解説しました。プレバイオティクスであるオリゴ糖、プロバイオティクスである乳酸菌、それぞれの食品をバランス良く取り入れることで整腸作用などのさまざまな健康効果が期待できます。
まずは紹介した身近な食品の組み合わせで、シンバイオティクス生活を始めてみましょう。
(参考文献閲覧日:2025年6月15日)
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