お酢の栄養と効能|苦手な人でも大丈夫!上手なとり方をプロが解説

お酢の栄養と効能|苦手な人でも大丈夫!上手なとり方をプロが解説

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古くから日本人に親しまれてきたお酢には、さまざまな健康効果が期待できることをご存じですか?

血糖値上昇の抑制や疲労感の緩和、肥満防止などの効果も期待されています。また、料理に加えると、さっぱりとした味わいを楽しめるだけでなく、減塩にもなります。お酢が苦手な人でも、工夫次第で無理なく取り入れることができ、健康維持に役立てることができるでしょう。

今回は、お酢の栄養と効能、おすすめのとり方について紹介します。

この記事の執筆者
管理栄養士
下田 由美

管理栄養士として約10年間、病院・施設・保育園で幅広い年代の「食と健康」に携わってきた。その中で「食」と「心」は密接に関係していると気付く。現在は、「食はココロとカラダを元気にする」をモットーにフリーランスの管理栄養士として活動中。健康や栄養に関する記事執筆や監修、レシピづくりなどを行うだけでなく、美容や健康でお悩みの方に対して栄養指導を行い、日々多くの方々の健康づくりをサポートしている。フードアナリストの資格も保有。

目次
  1. お酢の主な栄養成分と期待される効能
  2. お酢の種類と特徴
  3. お酢の上手なとり方
  4. お酢の保存方法
  5. お酢を取り入れる際の注意点
  6. まとめ

お酢の主な栄養成分と期待される効能

料理の風味づけや保存性を高めるために用いられるお酢*1は、糖質を含む原料を発酵させてつくられる、独特の酸味をもつ液体調味料です。健康効果が期待されるお酢ですが、その鍵となる成分の1つが酢酸です。ここでは、お酢が健康や美容にどのような効果があるのか紹介します。

食後の血糖値上昇を抑える

お酢の主成分である酢酸には、食後の血糖値の上昇を抑える働きがあると考えられています。論文では、糖質を含む食品とお酢を組み合わせることで、糖質単体で摂取するよりも血糖値上昇の抑制効果が期待できることが報告されています*2。

また、血糖値が高い人ほど、お酢の効果を実感しやすいとのデータもあります。お酢の量は10mLでも効果が期待できますが、20mLとる方がより血糖値の上昇を抑制できるという結果も報告されました*2。

肥満防止

お酢に含まれる酢酸により、内臓脂肪の蓄積を防ぐ効果が期待できます。肥満気味の人と血中中性脂肪が高めの成人に、毎日お酢を摂取させた結果、体重、BMI、内臓脂肪面積、ウエスト周り、血中中性脂肪の量が減少したという報告があります*3。

内臓脂肪が蓄積すると、糖尿病や高血圧、脂質異常症のリスクが高まるため注意が必要です*4。毎日の食生活にお酢を加える習慣は、これらの生活習慣病の予防においても注目されています。

血圧を下げる

血圧が高めの人に10週間玄米酢やリンゴ酢を摂取させた研究では、血圧が下がったとの結果が報告されています*5。血圧が気になる人は、普段の食生活で減塩を意識することも大切です。お酢は料理の味を引き立てるだけでなく、少ない調味料でも美味しく調理できるため減塩にも役立ちます*5。

疲労感の軽減

お酢を摂取することで、疲労感の軽減も期待できます。論文では、お酢を7日間毎日摂取した人は、運動後の疲労感が軽減されたことが報告されました。特に、運動をした後、寝る前や翌朝の肩コリが和らいだとの報告もあります。研究チームは、お酢には運動後の疲労を素早く回復に導く可能性があることを示唆しています*6。

*1 全国食酢協会中央会「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書 (小規模な食酢製造事業者向け)」p.5
*2 遠藤美智子ほか. 食酢の食後血糖上昇抑制効果. 糖尿病学会. 2011, 54巻3号, p.196-197
*3 小泉幸道. 食酢の多彩な効用. 日本調理科学会誌. 2021. Vol.54,No.3, p.29-32
*4 下村 伊一郎. 病態と発症機序を考える1)‌‌内臓脂肪型肥満の病態と‌包括的治療を考える. 日本内科学会雑誌. 105巻3号 p.392
*5 赤野裕文. 食酢の減塩効果と血圧への作用について. 日本調理科学会誌. 2019. Vol.52, No.2, p.82-83
*6 Shun Inagaki et al.,Effects of black vinegar beverage intake on exercise-induced fatigue in untrained healthy adults: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. The Journal of Physical Fitness and Sports Medicine. 2020. 9巻3号. p.115-125

お酢の種類と特徴

お酢にはさまざまな種類があり、味や香りが異なります。お酢の特徴をいかすことで、料理をより一層美味しく仕上げることができるでしょう。ここでは、お酢の種類と特徴、おすすめの活用法を紹介します。

穀物酢

穀物酢は、小麦や米、コーンなど、1〜2種類以上の穀物を用いてつくられます*7。日本の食卓で広く親しまれており、穀物酢の淡い色とすっきりとした香りがあり、さまざまな料理に活用できます。煮物や炒め物の味を引き立て、脂っこい料理に少量加えれば、後味がさっぱりとして食べやすくなります。

米酢

米酢は米を原材料にしてつくられます*7。ほんのりとした甘さと、奥行きのある柔らかな酸味が特徴です。繊細なもち味をいかすには、熱を加えない調理法がおすすめです。彩り豊かな酢の物や季節の野菜を使った漬物、自家製和風ドレッシングやおしゃれなマリネなどにすると、米酢の良さが引き立ちます。

黒酢

黒酢には、米を原料とした米黒酢と、おおむぎを原料とした大麦黒酢があります*7。深みのある色合いと、まろやかな酸味が特徴です。ドリンクに少量加えたり、スイーツの隠し味にしたりするほか、いつもの料理に奥深い旨みとコクを追加したい時にも重宝します。特に、牛肉やラム肉、カジキやサバなどの食材と組み合わせるのがおすすめです。

果実酢

果実酢は、果実を1〜2種類用いてつくられます*7。料理だけでなく、ドリンクとしても用いられます。果実酢のなかでも、りんごの芳醇な香りと自然な甘みが凝縮されたりんご酢は、穀物酢とは異なり、フルーティーな酸味が魅力です。ドレッシングとしてサラダにかけたり、マリネにしたりするだけでなく、炭酸水やはちみつをプラスすれば、手軽で美味しい健康的なドリンクとしても楽しめます。

バルサミコ酢

バルサミコとは、イタリアのモデナ地方で昔からつくられている伝統的なお酢で、原料はぶどう果汁です*8。原料を木の樽で熟成させることで、芳醇な香りとまろやかな甘み、深みのある色に仕上げます。煮込み料理の隠し味として使用したり、ドレッシングやソテーのソースをつくったりするのがおすすめです。料理だけでなく、アイスクリームや果物などにかけると、味の変化が楽しめます。

*7 全国食酢協会中央会 全国食酢公正取引協議会「食酢品質表示基準 最終改正 平成20年10月16日 農林水産省告示 第1507号」
*8 農林水産省「指定の公示について(指定番号第30号)」

お酢の上手なとり方

お酢が体に良いと分かっていても、「お酢でむせてしまう」「お酢の味が苦手」という人もいるでしょう。お酢が苦手な人は、少量ずつ使用することをおすすめします。ここでは、お酢を上手にとる方法について紹介します。

1日の摂取量の目安

お酢は、1日当たり大さじ1杯を目安にとることをおすすめします*2。料理に加えたり、薄めてドリンクにしたりして活用しましょう。継続して使用することで、血糖値の上昇を抑制したり、内臓脂肪を減少させるなどの効果が期待できます*2*3*4*5。

活用法①お酢を使って減塩

お酢の酸味が加わることで、薄味でも満足感が高まるため、減塩につながります。また、料理の隠し味に使用すると、塩味を引き立てることができます*3。

お好みの野菜をカットしてピクルスにしたり、あんかけに使用してさっぱりと仕上げたりするのもおすすめです。肉や魚をソテーして、煮詰めたバルサミコ酢をソースにするのも良いでしょう。甘酸っぱいソースが、素材の味を引き立てます。

活用法②ドリンクにアレンジする

お酢の酸味が苦手な人は、りんご酢や黒酢を水や炭酸水で割り、はちみつの自然な甘みを追加すると飲みやすくなります。甘さや爽やかさが加わり、マイルドな味わいが楽しめます。ただし、お酢を薄めずに飲むと胃や喉に悪影響を与える可能性があるため、5倍以上に薄めて飲むことがポイントです*5。

手軽にお酢を取り入れたい人は、市販品のドリンクタイプのお酢を活用すると良いでしょう。お酢でむせやすい人は、様子をみながら少量ずつ試してみてください。一度に飲むとむせやすくなるため、ストローを使用して少しずつ飲むのもおすすめです。

活用法③酸味を和らげる工夫をする

お酢を加熱して蒸発させると、酸味がまろやかになります。ツンとしたお酢の香りが和らぎ、風味が変化するため、食べやすくなります*9。煮物や炒め物などをつくる際、お酢を使用してみるのもおすすめです。ドレッシングを電子レンジで軽く温めるのも1つの方法です。

活用法④お酢で煮ることでカルシウムをとりやすくする

カルシウムを含む食材をお酢で煮ると、カルシウムが煮汁に溶け出すので、容易にとることができます*3。たとえば、あさりのみそ汁をつくる際、殻つきのあさりを鍋に入れ、お酢を少量加えて加熱することでカルシウムを一緒にとれます。鶏手羽元をお酢で煮込めば、手羽元のカルシウムを取り入れやすくなるでしょう*3*10。

*9 堀家静子ほか. 熟成食酢の平衡蒸気成分. Nippon Nogeikagaku Kaishi Vol. 55, No. 8, pp. 671-677, 1981
*10 農林水産省「夏こそお酢!お酢の歴史と種類」

お酢の保存方法

お酢は殺菌力が強いため、常温保存が可能です*11。直射日光を避けて、涼しい場所で保管しましょう。ただし、お酢は温度変化や光の影響を受けやすい性質があり、保管状況によっては品質劣化を招くおそれがあります*11。

糖分を含むドリンクタイプのお酢やすし酢などは、冷蔵保存し早めに使い切ることをおすすめします。使用前に製品の賞味期限や保存方法を確認しておきましょう。

*11 奥村一. 食酢の品質の安定性について. 醸協. 1995. 第90巻第6号, p.410

お酢を取り入れる際の注意点

健康効果が期待できるお酢ですが、とり過ぎると健康に悪影響を及ぼす可能性があります。お酢は酸性度が高いため、空っぽの胃に直接入ると、胃の粘膜を刺激し胃痛などを引き起こすおそれがあります*5。空腹時を避けて、食事中や食後などに取り入れましょう。

甘みを加えたドリンクタイプのお酢は、口当たりが良く飲みやすい反面、糖類が添加されている場合があるので、糖質量に注意が必要です。糖質のとり過ぎにつながらないよう適量摂取を心がけましょう。

また、お酢を取り入れても栄養バランスが乱れていては、健康にはなれません。主食、主菜、副菜を基本とした食生活を心がけた上で、上手にお酢を取り入れましょう。

まとめ

お酢には健康維持や疲労感の軽減など、さまざまな効果が期待されています。ただし、摂取量や摂取するタイミング、保存方法に注意して無理なく続けることが大切です。お酢が苦手な人でも、工夫次第で無理なく取り入れることができるため、ぜひ日々の健康づくりに役立ててみてください。

(参考文献閲覧日:2025年4月8日)

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