ぬか漬けは、昔ながらの発酵食品として親しまれてきましたが、最近では腸内環境を整える食物繊維やビタミン・ミネラルなどを効率良くとれる食品として、注目が集まっています。一方で、「塩分が気になる」「どのように食べたらいいのか分からない」と感じている人もいるのではないでしょうか。
今回は、ぬか漬けに含まれる栄養や塩分への配慮、日々の食事に取り入れやすい食材やつくり方について紹介します。

この記事の執筆者
パティシエ/食品ライター
栗原 ともこ
パティシエとして13年働いた後、現在はヨガインストラクターおよびライターとして活動している。製菓衛生師やヨガの資格を複数保有する。様々な職歴と経験を経て、健康、ヨガ、食、ダイエット、レシピ開発、旅行など、幅広いジャンルの執筆をしている。
ぬか漬けの主な栄養素と期待される効能
ぬか漬けは、米ぬかを主原料とする漬物で、定番食材(きゅうり、大根、なす、かぶ)のぬか漬けには食物繊維・ビタミンB1・ビタミンB6・ミネラル(マグネシウム)が豊富に含まれます*1。詳しく見ていきましょう。
食物繊維
ぬか漬けなどの漬物は、野菜を漬け込むことで水分が抜け、食物繊維の含有量が上がります。たとえば白菜の漬物を80g摂取することで、腸内環境のおだやかな改善が期待できるとした報告もあります。サラダよりも少ない量で効率良く食物繊維をとれるため、忙しい日にも取り入れやすい食品といえるでしょう*2。
ビタミンB1
ビタミンB1は、炭水化物をエネルギーに変える働きをもち、体を動かすために欠かせない栄養素です。特に、脳や神経の働きを支える役割があり、不足すると疲れやすさやだるさを感じることもあります*3。
ミネラル
ぬか漬けに多いとされるミネラルはナトリウム・カリウム・マグネシウムなど。ナトリウムは細胞の外側、カリウムは内側で主に働き、浸透圧を維持して体内の水分バランスを保っています。また、カリウムは神経・筋肉の働きなども支えています*4。両者は互いにバランスを取りながら、血圧の調整や筋肉の収縮、神経の伝達などに関与しています*5。
また、マグネシウムは、体内のさまざまな酵素の働きを助けるミネラルで、エネルギー代謝をはじめとした代謝機能を支える役割があります。さらに、筋肉の収縮や神経の伝達、体温や血圧の調整などにも関わっているとされています*4*6。
*1 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年・ 第2章(データ)」
*2 松岡寛樹. 漬物の健康有益性. Bulletin of the Society of Sea Water Science, Japan. 2017, 71, p.246-251
*3 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報「ビタミンB1」
*4 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書 ミネラル」 p.243-285
*5 公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット「ナトリウムの働きと1日の摂取量」
*6 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「マグネシウム」
ぬか漬けにおすすめの食材とつくり方
ぬか漬けは、発酵によって野菜の旨みを引き出せる、日本の伝統的な保存食です。
ここでは、ぬか漬けに向いている食材と、基本的なつくり方を紹介します。季節の食材や手に入りやすい野菜を使えば、毎日の食卓に無理なく取り入れることができます。
おすすめの食材
ぬか漬けには、比較的水分が少なく、ぬか床になじみやすい野菜が適しています。
たとえば「きゅうり・にんじん・大根・なす・かぶ・長芋」などは、ぬか漬けの定番野菜として人気がありますよね。ほかにも、白菜やミニトマト、キャベツなども漬けることができます。食材によって漬かり方や風味が異なるため、自分好みの味を見つけて楽しみましょう。
ぬか漬けのつくり方*7
市販のぬか床を使えば、ぬか漬けは手軽に始められますが、ここでは、一から自家製ぬか床をつくる方法を紹介します。
【材料】ぬか床1kg分
炒りぬか 500g
水 500mL
塩 80~90g
お好みでこんぶや唐辛子、にんにく
ぬか床を入れる容器は、ホーローや陶器、プラスチックなどがおすすめです。金属製のものは避けましょう。また、手入れのしやすさを踏まえると、ぬか床の量に対して2〜3倍の容量の容器が良いでしょう。
【つくり方】
鍋に水と塩を入れてひと煮立ちさせ火を止める
そのまま冷ます
大きめのボウルに炒りぬかを入れ、2を少しずつ加えて混ぜる
ぬか床が耳たぶくらいの柔らかさになったら完成ぬか床を容器に入れ、途中でこんぶや唐辛子、にんにくなどを入れる
ぬか床の表面を平らになるようにならす
容器の周りについたぬかをキッチンペーパーなどで拭き取る
【慣らし漬け】
つくりたてのぬか床は、まだ発酵していません。キャベツや白菜の外葉や大根の葉など捨てる葉物野菜を使って慣らし漬けすると、ぬか床に乳酸菌が増えて乳酸発酵が始まります。以下の手順で慣らし漬けを行い、2〜3週間すると熟成された香りになります。
ぬか床の底の方に、葉物野菜を漬け込む
ぬかは夏は1日2回、冬は1日1回、底からかきまぜる
漬けてある野菜は、2〜3日に1回取り替える
【ぬか漬けの漬け方】
発酵が進んだら、野菜を漬けていきましょう。洗った野菜は、表面の水分をしっかりと取り、ヘタなどが大きい野菜は切り落として漬け込みます。表面を平らにならして完成です。空気が入ったり、表面を凸凹のままにしたりしておくと、カビが生えてしまう可能性があるので、注意してください。
ぬか床に野菜を漬ける時間は、基本的には半日程度。小さなものなら3時間くらいでも漬かります。自分好みの漬かり具合を探して楽しみましょう。
ぬか漬けの食べ方と注意点
最後にぬか漬けの食べ方と注意点を紹介します。
ぬか漬けの食べ方|洗い流して食べる?
ぬか漬けを食べる時は、一般的に表面のぬかを洗い流してから食べます。ぬかには独特の風味や塩分が含まれているため、そのままでは味が濃過ぎたり食感が気になったりすることがあるからです*8。ただし、柔らかくて崩れやすい素材を浸けた場合は、ぬかを水で洗わずに軽く手で落とす程度でも問題ありません。
たとえば、ぬか漬けにした魚は、ぬかを落とさずにそのまま炙って食べることもあります。ざらつきが気になる場合は、水で軽く洗い流すと食べやすくなります*9。
また、栄養面では、ぬか漬けにすることで野菜がぬかの栄養素を吸収するため、ぬかを洗い流しても栄養価に大きな影響はありません*1。
*8 辻調理師専門学校「美味しい自家製のぬか漬けを作ります!後編」 ~日本料理だけを学ぶ辻調 ブログ12~」
*9 農林水産省「へしこ 京都府」
塩分のとり過ぎに注意
ぬか漬けは発酵の力で栄養価が高まり、腸内環境を整える食材として注目されていますが、塩分が多く含まれている点には注意が必要です。塩分の過剰摂取は、高血圧、脳卒中、心疾患など循環器系に悪影響を及ぼす可能性があります*10。
たとえば、それぞれぬか漬けした野菜100gに対する塩分量は以下の通りです*1。
大根:3.8g
なす:2.5g
きゅうり:5.3g
かぶ(皮なし):6.9g
このように、食材によっては塩分が思った以上に多く含まれている場合があります。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」が定める成人の1日当たりの食塩摂取目標量は、男性で7.5g未満、女性で6.5g未満です*4。食塩はほかの食事からも摂取するので、1日の摂取目標量を超えないよう気をつけましょう。
*10 髙山裕子. 成人の食塩摂取の現状. 聖霊女子短期大学紀要., 2011, 第39号, p.76
まとめ
ぬか漬けは、発酵によって野菜の栄養価が高まり、腸内環境を整えるサポートもしてくれる、昔ながらの知恵がつまった一品です。
ただし、塩分が多く含まれているため、とり過ぎには注意が必要です。食材や食べ方を工夫すれば、ぬか漬けの風味や栄養を楽しみながら、健康的に取り入れることができます。
食卓にぬか漬けを上手に取り入れて、日々の食事をもっとおいしく、もっと健やかにしていきましょう。
(参考文献閲覧日:2025年4月10日)
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