嗜好飲料としてのイメージが強いココアですが、実は栄養面でも注目で、健康づくりのサポートが期待できます。ココアにはダイエット中の人にも嬉しい特徴もあり、さまざまなシーンで活躍する飲み物です。ココアの栄養に関する研究も数多く行われており、注目度の高い食品ともいえます。
この記事では、ココアの栄養素やその効能、おすすめの飲み方や注意点について解説します。

この記事の執筆者
管理栄養士
佐野 未来
管理栄養士として給食委託会社で調理・発注などの経験を経て、大学病院で大量調理業務や栄養指導、病棟における栄養管理業務を行う。現在は独立し、個人向けに栄養指導や食に関する執筆、学校給食での調理など幅広く活動している。管理栄養士以外にも、栄養士や食生活アドバイザーなどの資格も保有する。
ココアの主な栄養素と期待される効能
ココアはカカオ豆を原料としてつくられる食品です。カカオ豆から皮などを除去して焙煎し細かくすりつぶしたカカオマスから、カカオバターを一定量分離して粉砕したものをココアパウダーと呼びます*1*2。
ココアにはカカオ豆由来のさまざまな成分が残っており、成分の面でも注目されている食品です。ここでは、ココアの代表的な栄養素と効能を解説します。
カカオポリフェノール
ココアに含まれるカカオポリフェノールは抗酸化作用をもち、疾患や老化を引き起こす活性酸素を除去する働きがあります。カカオポリフェノールはエピカテキンやカテキンが連なった化合物であるプロシアニジンなどで構成されているのが特徴です*3。
含有量が多いエピカテキンは、生活習慣病の一種である心血管疾患や、その他の疾患に一定の効果があるとされています*3。また、プロシアニジンは糖代謝やエネルギー産生にも影響を与え、高血糖や肥満を予防する効果が期待されている成分です*4。
また、カカオポリフェノールも健康への作用が期待されています。高カカオチョコレートを食べることで高血圧の人の血圧が下がったとの結果が報告されています*5。また、カカオポリフェノールは血液をさらさらにするだけでなく、血管をしなやかにし、血中の善玉コレステロールを増やして動脈硬化予防になることが分かっています*6。
テオブロミン
ココアに含まれるテオブロミンは、マウスでの実験で脂肪の蓄積を防ぐことが報告されています。
ココアの原料であるカカオ豆から抽出した成分のうち、テオブロミンが脂肪蓄積に関わる因子がつくられるのを抑えるとの結果が出ています。また、カカオ豆に含まれるカフェインがテオブロミンの働きを促進することも報告されているため、ダイエット中の方には嬉しい食品といえます*7。
食物繊維
ココアにはカカオマス由来の食物繊維が含まれており、ピュアココアでは100g当たり23.9g含まれています。そのうち、不溶性食物繊維が18.3g、水溶性食物繊維が5.6gと、不溶性食物繊維をより多く含んでいるのが特徴です*8。
不溶性食物繊維には、便をかさ増しして量を増やしたり、腸の蠕動(ぜんどう)運動(消化管の筋肉が伸び縮みすることで、食べ物や便を肛門まで運ぶこと)を促したりする効果が期待できます*9。野菜などから食物繊維をとることに加えて、飲み物でも摂取する習慣をつければ効率的に食物繊維を補えます。
カルシウム・マグネシウム
ココアに含まれるミネラルの中で注目したいのがカルシウムとマグネシウムです。いずれも骨や歯をつくるために必要な栄養素で、不足すると骨粗しょう症の原因になります*10*11。
ミネラルの吸収に関しては、食物繊維と一緒に摂取すると吸収効率が下がることが知られています。ココアには食物繊維が豊富に含まれているので不利に思えますが、研究によりカカオ豆のミネラルはアーモンドやピーナッツと比較しても効率良く体内で使われることが報告されました*12。
1日にとれる量には限りがあるものの、ミネラルの利用効率が比較的高いカカオ豆が原料であるココアを取り入れることで無理なく栄養補給できるのが魅力です。
*1 日本チョコレート・ココア協会「チョコレート・ココアができるまで チョコレート・ココア共通 原料~粉砕まで」
*2 日本チョコレート・ココア協会「チョコレート・ココアができるまで ココアができるまで 搾油~完成まで」
*3 日本チョコレート・ココア協会「『カカオポリフェノール』はどのようなものですか?」
*4 芦田均. カカオ由来プロシアニジン画分による生活習慣病予防・改善効果とそのメカニズム. 第17回チョコレート・ココア国際栄養シンポジウム. 2012, p.7
*5 株式会社明治 みんなの健康チョコライフ「チョコレートが血圧を低下させるとは」
*6 株式会社明治 みんなの健康チョコライフ「チョコレートが動脈硬化を防ぐとは」
*7 芦田均. カカオ豆抽出物による脂肪細胞の分化と脂肪蓄積の抑制効果. 第19回チョコレート・ココア国際栄養シンポジウム, 2014, p.17
*8 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年・第2章本表別表1(データ)」
*9 高橋陽子. 繊維質と食物繊維. 日本食品科学工学会誌. 2011, 58巻4号, p.186
*10 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「カルシウム」
*11 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「マグネシウム」
*12 鈴木和春. カカオを利用したミネラルの吸収促進. 第3回チョコレート・ココア国際栄養シンポジウム. 1997, p.24-33
ココアはダイエットしている人にもおすすめ
ココアにはさまざまな健康に役立つ効果が期待できるため、ダイエット中の飲み物としてもおすすめです。
肥満状態のラットにココア粉末を配合した低エネルギー食を4週間与えた実験では、皮下脂肪・内臓脂肪ともに減少するとの結果が報告されました。研究チームはカカオポリフェノールが脂肪の吸収率を下げたことが関係していると示唆しています。テオブロミンも抗肥満に関わっている可能性があります*13。
また、ココアを摂取することで味覚の感受性が向上したとの結果が報告され、ココアに豊富に含まれる亜鉛の関与が示唆されています。味覚が敏感になると薄味でも満足感が得やすくなり、糖分や塩分の過剰摂取防止にもつながることも期待されます*14。無理なくカロリーや糖分摂取が抑えられ、食事管理に役立ちそうなのも魅力です。
ダイエット中にココアを飲む場合は、必ず「ピュアココア」あるいは「純ココア」と記載されたものを選びましょう。砂糖などを添加したミルクココアを選んでしまうと、カロリーや糖質のとり過ぎにつながります。
*13 曽川美佐子ほか. ココア粉末摂取が食餌性肥満ラットの体重および体脂肪減少に及ぼす影響. 四国大学紀要. 2018, B48:1-9, p.8
*14 池田衣里ほか. 運動習慣のない若年女性に対する運動とココア摂取の効果に関する研究. 椙山女学園大学研究論集 第47号(自然科学篇). 2016, p.37
ココアを上手に飲むコツ
ココアの栄養を効率的にとるには、ココアを飲む量やタイミング、一緒に飲むものなどを考えることが大切です。ここでは、おすすめのココアの飲み方を解説します。
ピュアココアなら1日5~10g程度がおすすめ
ココアは医薬品ではないので、健康に良いとする摂取目安量はありません。日本チョコレート・ココア協会は、各種研究の結果からピュアココアで1日5~10g程度をおすすめしています*15。ちょうどマグカップ1杯分に相当する量なので、毎日無理なく飲める量といえます。
ミルクココアは甘みがあって飲みやすいですが、ピュアココアとは栄養素が大きく違うので注意が必要です。たとえば、炭水化物についてはピュアココア100g当たり42.4gに対し、ミルクココアは80.4gと倍近くになります。一方で、食物繊維はピュアココア100g当たり23.9gに対し、ミルクココアでは5.5gと大幅に少ないです*16。
ココアを健康維持に役立てるためにも、ピュアココアを選ぶようにしましょう。
牛乳やアーモンドミルクなどと合わせても良い
ピュアココアをお湯で割っただけで飲むのは味気ないという方は、ほかの飲料と合わせると飲みやすくなります。
ココアに合わせる定番といえば牛乳です。ほかにも、近年ポピュラーになりつつあるアーモンドミルクも、ココアと合わせやすい食品です。アーモンドミルクはアーモンドと水を原料とした飲み物で、アーモンド由来の栄養素がたっぷり詰まっています*17。ココアと混ぜれば、まろやかで香ばしい飲み口になるので、ココアを飽きずに飲み続けるためのバリエーションの1つとしておすすめです。
甘みを追加したい場合は、砂糖よりもカロリーが少ないはちみつやメープルシロップなどを入れると飲みやすくなります。砂糖のカロリーが100g当たり391kcalなのに対し、はちみつは329kcal、メープルシロップは266kcalです*16。ただし、使い過ぎるとカロリーオーバーになるので、ココアの苦みが和らぐ程度にしておきましょう。
おすすめのタイミングはスポーツの前や朝食時
ココアは薬ではなく、あくまで食品なので、決まったタイミングはありません。ウォーミングアップの前にココアを飲むと、膝下の皮膚の表面温度、柔軟性、筋力、平衡機能などが持続したとの結果が報告されています*18。運動習慣がある方は、スポーツをする前に取り入れてみると良いでしょう。その他、日本チョコレート・ココア協会は朝食時もおすすめのタイミングとしています*19。
ただ、いずれもおすすめのタイミングの一例なので、自分が飲みやすいタイミングで継続することがポイントです。
*15 日本チョコレート・ココア協会「チョコレート・ココアは1日にどれくらい食べると健康によいですか?」
*16 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年・ 第2章(データ)」
*17 アーモンドミルク研究会「アーモンドミルクの特長」
*18 吉田弘法. ココア摂取がウォーミングアップ効果に及ぼす影響について. 第21回チョコレート・ココア国際栄養シンポジウム, 2016, p.9-13
*19 日本チョコレート・ココア協会「チョコレート・ココア健康講座」
ココアの飲み過ぎは危険!リスクと注意点
ココアにはさまざまな栄養素があり、体の機能をサポートして健康維持に役立ちます。しかし、健康に良いからと言ってとり過ぎてしまうと、かえって健康を損ねることにつながりかねません。
ココアは不溶性食物繊維が豊富ですが*8、過剰に摂取すると体調や体質によっては下痢を起こすこともあります。また、ココアには少量ながらカフェインが含まれています。ココアパウダー5g中のカフェインは7mgで、レギュラーコーヒー約150 ml中のカフェイン約115mgに比べると少ないですが、子どもや妊婦、授乳中の人は注意が必要です*20。また、カフェインに敏感な人は寝る前に飲むのは避けましょう。
*20 日本チョコレート・ココア協会「チョコレート・ココアには『カフェイン』が含まれていると聞きますが、子供や妊婦が食べても大丈夫ですか?」
まとめ
今回の記事では、ココアの栄養とその効能について解説しました。ポリフェノールやテオブロミンは特に注目の成分です。また、食物繊維、カルシウムやマグネシウムなど不足しがちな栄養素も含まれています。脂肪蓄積の抑制や便秘改善効果なども期待できます。
ただし、とり過ぎるとかえって健康を損なうこともあるため、ピュアココアで1日5~10g程度を目安に、取り入れてみてください。
(参考文献閲覧日:2025年3月27日)
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