大豆は栄養価が高く、健康維持や病気の予防に役立つと言われています。この記事では、大豆に含まれる栄養素の特徴や期待される効能、大豆の種類、おすすめの食べ方について詳しく解説します。

この記事の執筆者
管理栄養士
津端 奈緒美
大学の食物栄養学科を卒業後、管理栄養士として給食委託会社に勤務。その後病院に勤務しながら大学院に通い家政学を専攻。現在は大学で医学博士課程に在学中。栄養改善学会や公衆衛生学会などで発表、論文執筆も経験。栄養指導は1,000件以上で、ライターとして執筆するなど幅広く活動している。
大豆の主な栄養素と期待される効能
ここでは、大豆に含まれる代表的な栄養素とその効能について詳しく解説します。
レシチン
レシチンは大豆に含まれるリン脂質の一種です。人間の細胞膜を構成する成分であり、記憶や認知に重要な神経伝達物質である「アセチルコリン」の前駆体として脳の機能維持に関与しています*1。
レシチンは認知機能の向上や肝臓の機能を高める働き、さらにコレステロール値を低下させ、血管の健康を守る役割が期待されています*2。
オリゴ糖
大豆にはオリゴ糖の一種であるスタキオースやビートオリゴ糖(ラフィノース)などが含まれています。大豆由来の難消化性オリゴ糖は胃や小腸で消化・吸収されることなく大腸まで届き、腸内で善玉菌のエサとなることで腸内環境を整えてくれます*3。
さらに動物実験の結果から、ビートオリゴ糖(ラフィノース)にはカルシウムやマグネシウムの吸収を促進する働きもあると考えられています*4。
サポニン
大豆サポニンは血液中の悪玉(LDL)コレステロールを減らす働きがあるとされています*5。
さらに、抗炎症作用や抗酸化作用によって、動脈硬化を防ぐ効果が期待されます*5。
カルシウム
カルシウムは骨や歯の主要な構成成分です。また、一部は血液や筋肉、神経内に存在し、血液の凝固や筋肉の収縮を助ける働きもしています*6。
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、成人1人1日当たりのカルシウム推奨量は成人男性で750mg〜800mg、成人女性で600~650mgと設定されています*7。カルシウムが不足すると骨粗しょう症のリスクが高まるため、予防のためにもしっかり摂取したい栄養素です*6 。
イソフラボン
大豆に含まれる大豆イソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンと構造が似ていることから「植物性エストロゲン」とも呼ばれ、エストロゲンと似た働きをすることで知られています*8。
エストロゲンは骨の健康を維持するホルモンですが、閉経後は分泌量が低下してしまい、80代の日本人女性では半数以上が骨粗しょう症であると言われています*9。イソフラボンは、閉経後女性の骨密度の低下を抑え*10、骨粗しょう症の予防に役立つと考えられています。
また、大豆イソフラボンには、肥満や糖尿病の予防・改善、乳がん予防などの可能性も期待されています*11。
*1 Robert E. Smith et al., Lecithin (Phosphatidylcholine): Healthy Dietary Supplement or Dangerous Toxin?. The Natural Products Journal. 2016, 6(4), p.242-249
*2 Moyinoluwa Comfort Onaolapo et al., Lecithin and cardiovascular health: a comprehensive review. Egyptian Heart Journal. 2024, 76(1), p.92
*3 原淑恵ほか. 大豆オリゴ糖の低投与量による便性状改善効果. 栄養学雑誌. 1997, 55(2), p.79-84.
*4 太田篤胤ほか. フラクトオリゴ糖および各種少糖類のラットにおけるCa, Mg, Pの吸収に及ぼす影響. 日本栄養・食糧学会誌. 1993, 46(2), p.123-129
*5 Huiyu Luo et al., Advances in the Bioactivities of Phytochemical Saponins in the Prevention and Treatment of Atherosclerosis. Nutrients. 2022, 14(23), 4998
*6 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「カルシウム」
*7 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント」p.109
*8 厚生労働省「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A (問3)」
*9 厚生労働省「女性向け 知ってほしい健診・検診」
*10 石見佳子. 大豆イソフラボンの骨代謝調節作用. 日本栄養・食糧学会誌. 2023, 76巻5号, p.291-296
*11 Shiho Nakai et al., Health Promotion Effects of Soy Isoflavones. Journal of Nutritional Science and Vitaminology. 2020, 66(6), p.506
大豆の種類
私たちが普段食べている大豆や大豆製品は、主に黄大豆という種類が使用されています。しかし、大豆には黒大豆や青大豆といった種類もあり、それぞれ特徴的な栄養素を含んでいます。ここでは、大豆の種類とその栄養について紹介します。
黄大豆
黄大豆はもっとも一般的な大豆の種類で、みそや醤油、豆腐、納豆などの原料として使われています。たんぱく質や食物繊維が豊富で*12、大豆イソフラボンも含まれており、健康の維持にも役立つ食材です。スーパーやネットでも入手しやすく、生や水煮、加工品などさまざまな形で販売されています。
黒大豆(黒豆)
黒大豆は皮が黒いのが特徴で、おせち料理の黒豆としてもなじみ深い品種です*13。黒い皮には黄大豆に比べポリフェノールの一種であるアントシアニンが多く含まれています。アントシアニンは抗酸化作用をもち、活性酸素の除去に役立つと言われています*14。
青大豆
青大豆は完熟しても皮が緑色をしており、煮豆や豆乳、青きな粉の原料として使われます*13。青大豆を原料にしたきな粉は淡い緑色で、うぐいす餅に使われる「青きな粉(うぐいすきな粉)」として知られています*15。
なお、青大豆と枝豆は異なります。青大豆は大豆そのものの品種のことで、枝豆はどの品種でも未成熟な状態で収穫したもので、かつて枝付きのままゆでて食べたことがその名の由来とされています*16。収穫時期の違いによって栄養成分にも差があり、枝豆は成熟した大豆と比べると葉酸やビタミンCなどが多く含まれています*12。
*12 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年・ 第2章(データ)」
*13 農林水産省「日本で食される主な豆」
*14 Rie Takahashi et al., Antioxidant Activities of Black and Yellow Soybeans against Low Density Lipoprotein Oxidation. Journal of Agricultural and Food Chemistry. 2005, 53(11).
*15 農林水産省「きな粉のつくり方を教えてください」
*16 農林水産省「豆のこと、もっと知りたい」
大豆おすすめの食べ方
大豆は、炒る・煮るなどさまざまな調理法で楽しめるほか、納豆・豆腐・油揚げ・豆乳・大豆ミートなど、加工品としても食卓に取り入れやすい食材です。ご自身の好みに合った大豆製品や調理法を活用し、日々の食卓に取り入れてみましょう。
また、ほかの食品と組み合わせることで、さらに健康効果が期待できます。
・豆乳×小松菜×しめじ
豆乳には良質なたんぱく質や骨の健康を維持するイソフラボンが含まれ、小松菜にはカルシウムが豊富に含まれています*16。さらに、しめじに含まれるビタミンDがカルシウムの吸収を助けるため*17、成長期の子どもや女性など骨の健康が気になる人におすすめの組み合わせです。
・大豆×トマト
トマトに含まれるリコピンには強い抗酸化作用があり、動脈硬化の予防に役立ちます*18。大豆に含まれるイソフラボンにも抗酸化作用があるため、リコピンと一緒にとることでより抗酸化作用が期待できます。
*17 農林水産省 東海農政局「東海地域の旬の食材を使ったロコモ予防レシピ」
*18 Usman Mir Khan et al., Lycopene: Food Sources, Biological Activities, and Human Health Benefits. Oxid Med Cell Longev. 2021, 19;2021:2713511
1日の大豆の推奨摂取量と食べ過ぎのリスク
厚生労働省の「健康日本21」では、大豆を含む豆類の摂取目標を1日100gとしています*19。一方で、大豆の過剰摂取には注意する必要があります。
成人を対象にした研究では、大豆の過剰摂取で甲状腺機能の低下が見られています*20。これは、大豆には甲状腺ホルモンの原料となるヨウ素の吸収を妨げる物質が含まれているためだと考えられています*21。また、大豆イソフラボンは女性ホルモンに似た働きをするため、過剰摂取には注意が必要です*22。

納豆は栄養豊富!納豆の働きと上手なとり方を解説
納豆は発酵過程を経て栄養価が高まり、健康や美容におすすめの食品です。たんぱく質、ビタミンK、ビタミンB2、大豆イソフラボンなどを含み、特に腸内環境の改善に役立つ「プロバイオティクスを含む食品」としても知られています。この記事では、納豆の栄養素やその働き、上手な取り入れ方、取り入れる際の注意点について解説します。
*19 農林水産省「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A (問4)」
*20 石突吉持ほか, 健常者甲状腺機能への大豆の効果 大豆投与実験. 日本内分泌学会雑誌. 1991, 67(5), p.622-629.
*21 A. Konijn et al., Further purification and mode of action of a goitrogenic material from soybean flour. The Journal of Nutrition. 1973.103(3), P.378-383.
*22 厚生労働省「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品等の取扱いに関する指針について」
まとめ
栄養価の高い大豆は、腸内環境を整えたり、認知機能や骨や血管の健康維持に役立ちます。適量を守りつつ、さまざまな食品と組み合わせて摂取することで、より健康的な食生活を実現できます。ぜひ日々の食事に大豆を取り入れてみてください。
(参考文献閲覧日:2025年3月17日)
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