ドラッグストアなどの健康食品をよく見ると「難消化性デキストリン」という成分が入っていて「一体どんなものなんだろう?」と思ったことはありませんか?聞いたことのない成分だと、本当に安全なのかと気になってしまいますよね。
難消化性デキストリンはでん粉を加工してつくった食物繊維の仲間です。ほとんど消化吸収されず腸内細菌のエサとなるか、そのまま便として排泄されます。この過程で、腸内環境を整えたり、食事の糖や脂肪の吸収を緩やかにしたりすることが期待できます。
この記事では、難消化性デキストリンの働きととり方の注意点やコツについて見ていきましょう。

この記事の執筆者
薬剤師/腸育コンシェルジュ
松本 萌
薬剤師ライターとして、セルフケアに関する記事を執筆している。前職のドラッグストアで健康相談を受ける中で、正しい知識を知らない人が多くいることを痛感。セルフケアの正しい知識を誰にでも分かりやすい言葉で紹介することを心がけている。薬剤師以外にも化粧品成分検定1級、腸育コンシェルジュなどさまざまな健康・美容の資格を取得。
難消化性デキストリンとは?
難消化性デキストリンは、でん粉を加工してできる多糖類の一種です。でん粉に酸を添加して加熱処理をした後、消化酵素を作用させて複雑な構造にすることで、ヒトの胃や小腸では分解されず大腸にまで届きます*1。体内へ入った難消化性デキストリンは、わずか10%が小腸で消化・吸収され、約40%はそのまま便となって排泄されます。よって、約50%が大腸で腸内細菌のエサになったと計算されます*2。
難消化性デキストリンは、においも味もほとんどせず、食事や飲み物にも混ぜやすいのがメリットです*1。健康への働きも評価され、特定保健用食品や機能性表示食品としても使用されています。
*1 独立行政法人 農畜産業振興機構「多糖類としての難消化デキストリンの特徴」
*2 大隈一裕ほか. 難消化性デキストリンの開発. Journal of Applied Glycoscience. 2006, 53巻1号, p. 65-69
難消化性デキストリンの働き
難消化性デキストリンは「水に溶けやすい」「胃や小腸でほとんど消化・吸収されず大腸に届く」性質をもつ、水溶性食物繊維の一種です*1。腸内環境を整えつつ、糖や脂肪の吸収を抑え、体に必要なミネラルの吸収を助けるのが特徴です。
腸内環境を整える
腸内細菌のエサとなる難消化性デキストリンは、中でも善玉菌の1つであるビフィズス菌を増やす傾向があることが確認されています*3。
また、国内の研究において難消化性デキストリンをとることで便の量・便の回数が増え、便の状態も良好になったことが報告されています*4。
さらに、難消化性デキストリンにより、便が大腸を通過する時間が短縮するとの報告もあります*3。研究チームは、難消化性デキストリンを代謝された際に発生する短鎖脂肪酸によって、腸の蠕動運動が促されて起こる可能性を示唆しています*3。
食後の糖の吸収を緩やかにする
難消化性デキストリンは、食後の糖の吸収を緩やかにする働きがあります。この働きを利用して「食事の糖の吸収をおだやかにする」目的の特定保健用食品(トクホ)も発売されています。
難消化性デキストリンは、食事に含まれる糖をグルコースに分解して血液中に送り込む仕組みを阻害します。その結果、小腸での吸収が遅れるとされています*5。
脂肪の吸収も緩やかにする
難消化性デキストリンは、食事中の脂肪の吸収も緩やかにします。さらに、毎日継続して難消化性デキストリンをとることで、中性脂肪やコレステロールの低下、内臓脂肪面積が減少したとの結果も報告されています*6。
ミネラルの吸収を助ける
難消化性デキストリンをとることによって、カルシウムや鉄の吸収が促進されることが動物実験(ラット)で確認されています。難消化性デキストリンは腸内細菌によって短鎖脂肪酸へと消化され、腸内のpHを低下させ、食事中のミネラルが溶けやすくなったことで、体内への吸収が促進されたと示唆されています*3。
*3 宮里祥子ほか, 難消化性デキストリンの新たな生理機能 ―腸内発酵を介した生体調節機能―,応用糖質科学. 2015, 第5巻第4号, p.204-207
*4 里内美津子ほか. 難消化性デキストリンのヒト便通に及ぼす影響. 栄養学雑誌. 1993, 51巻1号, p. 31-37
*5 別府秀彦ほか. 難消化性デキストリンの血糖値抑制効果と糖負荷の関係. 生活衛生. 2011, 55巻1号, p.3-14
*6 独立行政法人 農畜産業振興機構「難消化性デキストリンの特性と用途」
難消化性デキストリンは安全?副作用はある?
難消化性デキストリンは医薬品ではないので副作用に関する調査は行われていません。各製品に示された摂取目安量を守っている限り、過度な心配は必要ないと考えられます。難消化性デキストリンは発売後25年以上経過し、世界で使用されており、米国食品医薬品局(FDA)や豪州・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)が提唱している条件を満たしていることから、十分な食経験のある安心して使用できる素材と考えて良いでしょう*6。
ただし、一度に大量にとると、難消化性デキストリンは胃や小腸で消化・吸収されず大腸まで届くため、お腹が緩くなる可能性があります。
また、食事からの血糖値や脂肪の吸収に影響を与えるため、医師の指示で血糖値やコレステロール、中性脂肪などをコントロールしている人や妊娠・授乳中の人は、念のため医師に相談するのがおすすめです。
難消化性デキストリンのとり方と注意点
難消化性デキストリンをしっかりいかすためには摂取の方法に注意が必要です。おすすめの摂取方法や摂取量について確認しておきましょう。
炭水化物や油の多い食事と一緒にとる
炭水化物や油が多い食事の時は血糖値や脂肪が気になりますよね。そんな時は食事と一緒に難消化性デキストリンをとるのがおすすめです。難消化性デキストリン商品(トクホ)では、食事と一緒にとることをすすめているものがあります。
もしくは、食事の前に難消化性デキストリンをとるのも良いでしょう。ある調査では、食事の30分前に難消化性デキストリンをとった場合、食後の血糖値の上昇が緩やかになったという結果が出ています*7。外食で難消化性デキストリンをその場でとるのが難しい場合には、食事の前にとりましょう。
飲み物に混ぜてこまめにとる
難消化性デキストリンは水に溶けやすい性質があるため、飲み物に混ぜるのがおすすめです。味もほとんどなく、人によってはかすかな甘味を感じる程度です*1。また、粘度も低いため、飲み物の味や口当たりを変えることもほとんどありません*1。
水やお茶、スープ、みそ汁などに混ぜてみましょう。炭酸飲料に混ぜても良いですが、ダマになる可能性があるため注意しましょう。また、すでに難消化性デキストリンが入っている飲料は、混ぜる必要がないため、手軽にとりたい人におすすめです。
お腹の調子が気になる人は、一度に大量にとるのではなく、少量ずつこまめにとりましょう。
適量を守る
難消化性デキストリンを一度にとり過ぎることで、お腹が緩くなる可能性があります。
明確な摂取の上限量は定められていませんが、難消化性デキストリンが特定保健用食品の場合の摂取目安量は以下のとおりです*8。
特定保健用食品の用途 | 1日当たりの難消化性デキストリンの摂取目安量 |
---|---|
おなかの調子を整える | 3〜8g |
食事中の糖の吸収をおだやかにする | 4~6g(1日1回食事とともに摂取する目安量) |
脂肪の吸収を抑えて排出を増加させ、食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにする | 5g(1日1回食事とともに摂取する目安量) |
初めて難消化性デキストリンをとる場合は、上記の目安を最終的な目標量として、まずは少量ずつとると良いでしょう。
*7 藤原啓子ほか, 低粘性水溶性食物繊維 (難消化性デキストリン) の耐糖能改善効果. 栄養学雑誌, 1995, 53巻6号, p.361-368
*8 消費者庁「特定保健用食品制度の概要」
まとめ
難消化性デキストリンは多糖類の一種で水溶性食物繊維の一種です。飲み物などに混ぜてとることで、腸内環境を整えたり、食事の糖や脂肪の吸収を緩やかにすることが期待できます。
とり方のコツを知っておくことで、難消化性デキストリンの働きをしっかり引き出せるでしょう。日々の健康のために、コツコツと取り入れてみてはいかがでしょうか。
(参考文献閲覧日:2025年2月10日)
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