きのこは、低カロリーでありながら栄養価が高く、健康や美容に役立つ成分を豊富に含んでいます。さらに、手に入りやすく、さまざまな料理に活用できるのも魅力の1つです。しかし、具体的にどのような栄養素が含まれているかをご存知ですか?実は、近年では腸活や免疫力向上を意識した食生活の中で、きのこのもつ作用が注目されています。
本記事では、きのこに含まれる栄養素とその健康・美容面で期待できること、栄養を逃さずに食べる方法について詳しく紹介します。種類別にも解説しているので、きのこ選びの参考にぜひ最後までお読みください。

この記事の執筆者
管理栄養士/ヴィーガン&グルテンフリー専門家
たちばな かやの
大豆食品・ヴィーガン・グルテンフリー情報に特化する栄養専門家として活動している。栄養を学び、給食委託会社に入社後、病院と保育園で調理・食材発注・事務対応などを経験。アレルギー除去食をつくるうちに大豆の可能性に魅了され、大豆関連の資格を多数取得。また、プラントベースにも興味をもち、ヴィーガンやグルテンフリーについて学ぶ。
現在はコラム執筆やレシピ開発、セミナー講演のほか、自身でグルテンフリーのケータリング弁当屋を主催するなど精力的に活動している。食物アレルギーやヴィーガン・ハラル等の食のマイノリティが抱える悩みを解消し、食の多様性がある日本・世界を目指す。
多くのきのこに含まれる主な栄養
きのこは低カロリーでありながら健康維持に役立つ成分を豊富に含んでいます。1年中スーパーで手に入りやすかったり、料理に使いやすかったり、さまざまな食材と合わせて楽しめるのも魅力的です。
きのこに含まれる栄養素を見てみると、ビタミンやミネラルなど体の調子をサポートしてくれる栄養素は注目すべきポイントです*1。特に注目したい成分は食物繊維、β-グルカン、ビタミンB群、ビタミンDです*1*2。どの栄養素も健康増進や美容の維持に役立ちます。
*1 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年・ 第2章(データ)」
*2 立山千草ほか. 食用きのこにおけるβ-グルカンについての一考察. 新潟県生活文化研究会誌 新潟の生活文化. 2023, No.29, p.4-6
きのこについて健康面で期待できる効果
次に、きのこの栄養素から分かる、健康面で期待できる効果を具体的にお伝えします。
コレステロールの低下
β-グルカンは水溶性食物繊維の一種です。血中のコレステロール値を低下させることが期待されています*2*3。さらに、きのこにはビタミンB2、ナイアシンも含まれており、脂質代謝を促進し、コレステロール値のコントロールをサポートします*4。
血中コレステロール値が上昇すると、高血圧や動脈硬化のリスクが上がります。リスクを抑えるには、増えやすい悪玉(LDL)コレステロールを減らし、善玉(HDL)コレステロールを増加させてバランスの良いコレステロール値にすることが推奨されています*5。
悪玉(LDL)コレステロールは肉やバターなどに含まれる動物性脂肪のとり過ぎが原因の1つとされているため、積極的にきのこを取り入れてバランスの良い食事をとりましょう。
便秘の予防や改善
食物繊維は腸内環境を整えるのに役立ちます。食物繊維は水溶性と不溶性に分かれますが、きのこで注目すべきは不溶性食物繊維です。腸の蠕動運動を促し、便のかさを増やしてスムーズな排便をサポートします*6*7。
日本人は食物繊維の摂取量が厚生労働省が定める1日の目安量より不足気味です*7。食生活にきのこを取り入れることで、食物繊維の摂取量が増え、便秘の予防や改善が期待できます。
生活習慣病の予防
生活習慣病の予防には、ただ食事の量を減らすだけではなく、バランスの良い適切な栄養摂取が推奨されています。前述のように、食物繊維、β-グルカンには血糖値やコレステロール値の上昇を抑え、糖尿病や高血圧の予防や改善が期待できます*2*3*7*8。
きのこを毎日の食事に活用すると、生活習慣病の予防をサポートしてくれるでしょう。
また、低カロリー・低脂質でありながら食感が良く満足感を得られるため、たとえば、肉の量を減らしてきのこで代用すれば、カロリーや脂質を抑えた上で満足感があるメニューづくりが可能です。
*3 M Rondanelli et al., Beta-glucan- or rice bran-enriched foods: a comparative crossover clinical trial on lipidic pattern in mildly hypercholesterolemic men. Eur J Clin Nutr. 2011, 65(7)
*4 上西一弘「栄養素の通になる 第5版」女子栄養大学出版部,2022年,p.86-p.97
*5 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「コレステロール」
*6 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年・第2章本表別表1(データ)」
*7 高橋陽子. 技術用語解説 繊維質と食物繊維. 日本食品科学工学会誌. 2011, 58巻4号, p.186
*8 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」
きのこの栄養を逃さず食べる方法
きのこからはさまざまな栄養素を摂取でき、健康・美容に期待できることが分かりました。食べる際に注意するポイントはあるのでしょうか。次に、きのこの栄養を逃さず食べる方法を紹介します。
きのこは洗わず調理する
きのこは水洗いすると食感や風味が落ちてしまうため、できるだけ洗わずに調理しましょう。また、きのこに含まれるビタミンB1やB2、カリウムは水溶性であり、水で洗うと流れ出てしまう可能性があります。
汚れが気になる場合は、湿らせたキッチンペーパーで軽く拭き取ることで、風味を損なわずに衛生的に調理が可能です。
煮汁ごと食べる調理法を選ぶ
きのこに含まれるビタミンB1やB2、カリウムは水溶性であるためスープや煮物にすると、溶け出してしまいます。栄養を逃さず食べるのであれば、スープやあんかけなど、煮汁ごと摂取できる料理にすると栄養を逃さず効率的に摂取できます。
また、野菜と一緒におひたしにする場合は茹でるのではなく蒸してみましょう。
乾物や冷凍で栄養価を高める
しいたけとまいたけを干すと、生の状態よりもビタミンDが増えます。乾燥きのこが手に入る場合は使ってみましょう。生のきのこを天日干しする場合は、傘の裏側が日に当たるように干すと、よりビタミンDが増えやすくなります*9。
さらに、きのこは冷凍することで細胞壁が壊れ、うまみや栄養素が外に出やすくなります*10。購入したら石づきを落としてバラバラにし、ジッパー付きの保存袋に入れて冷凍してみましょう。冷凍したきのこを使う場合は、解凍せずにそのまま調理するのがポイントです。
栄養を逃さずにとれる点に加えて、乾物や冷凍は生のきのこよりも長期間保存が可能で調理する際もすぐに使えるので便利です。
カルシウムが豊富な食材と一緒に摂取する
ビタミンDは、小腸からのカルシウムの吸収をサポートする栄養素です*11。そのため、乳製品、小魚、大豆製品などときのこを一緒に摂取すると、効率良くカルシウムを吸収することが期待できます。たとえば、しらすときのこの混ぜご飯や、クリームシチュー、グラタンなどの料理が理想的です。
*9 菅原龍幸. キノコ類についての食品栄養学的研究. 日本食生活学会誌. 2000, Vol.10, No.4, p.111-118
*10 石黒弥生ほか. 冷凍した食用担子菌類の嗜好性. 日本食生活学会誌. 2006, Vol.17, No.3, p.57(247)-64(254)
*11 上西一弘「栄養素の通になる 第5版」女子栄養大学出版部, 2022年, p.140-p.145
きのこの種類別に期待できる効果
次に、きのこの種類別に期待できる効果をお伝えします。今回はスーパーで手に入りやすい5種類のきのこを紹介します。選ぶ際の参考にしてみてください。
美肌と免疫をサポートする「しいたけ」
しいたけで注目の成分はビタミンDの前駆体であるエルゴステロールです。紫外線に当てることでビタミンDに変化するので、カルシウムの吸収を助け骨の健康に役立ちます*11。干ししいたけであれば手軽にビタミンDの摂取が可能です。
また、しいたけにはたんぱく質の合成に関与するビタミンB2が豊富に含まれ、皮膚や毛髪などの生育を助けます*4。さらにβ-グルカンには免疫向上のサポートが期待できます*12。美肌や免疫が気になる人はしいたけがおすすめです。
疲れた時に食べたい「しめじ」
ほんしめじには、疲労回復に役立つビタミンB2が豊富に含まれています。糖質の代謝を助け、エネルギーを効率的に生み出すため、疲れを感じやすい人におすすめです*4*13。また、ぶなしめじ中のオルニチンも注目の成分です。オルニチンはアミノ酸の一種で、 肝機能改善や疲労感軽減作用があることが報告されています*14。
生活習慣の乱れが気になる人は「なめこ」
なめこのぬめりはペクチンという水溶性食物繊維です。ペクチンは、がん、アレルギーや消化管疾患などのさまざまな病気の進行のリスク低減が期待されています*15。また、食物繊維の一種のβ-グルカンは便通の改善、コレステロール値の低下、血糖値の急上昇の抑制など生活習慣病予防も期待できます*3*7*8。毎日の生活習慣の乱れが気になる人は、なめこがおすすめです。
ダイエットのお供「まいたけ」
まいたけはダイエットをしている人におすすめの食材です。ラットにまいたけの粉末を与えた実験では、体重と血圧を抑えるとの結果が報告されています*16。また、まいたけのβ-グルカンは、血糖値の上昇を抑えることが期待でき、ダイエットのサポートや糖尿病が気になる人におすすめです*17。食物繊維も含み、満腹感を得やすく、食事の量をコントロールしやすくなるため、健康的な体重管理に役立ちます。
ヘルシーな食生活を目指すなら「エリンギ」
エリンギは食物繊維を豊富に含み、不溶性食物繊維の割合が高いので、腸の蠕動運動を促進し、腸内の老廃物を排出しやすくする働きが期待でき、便秘がちな人をサポートします*6*7。また、エリンギは他のきのこと比べて加熱してもかさが減りにくく食感に弾力があります。そのため、満足感を得やすくヘルシーな食生活を送りたい人におすすめの食材です。
*12 須賀哲也. 免疫賦活成分β-グ ルカン(lentinan)含有機能性食品の研究開発. 日本食品保蔵科学会誌.2004, VOL.30 NO.6, p.301-310
*13 上西一弘「栄養素の通になる 第5版」女子栄養大学出版部,2022年,p.80-p.85
*14 小岩智宏ほか. ブナシメジ中のオルニチン測定法の検討と室間共同試験による妥当性確認. 日本食品科学工学会誌, 2022, 第69巻第8号, p.375-p.384
*15 北口公司. ペクチン摂取による生理機能制御と疾病予防効果. 応用糖質科学, 2020, 第10巻第4号, p.230-p.236
*16 大鶴勝ほか. マイタケ投与が高血圧自然発症ラットの血圧及び体重に及ぼす影響. 日本食品科学工学会誌. 1999. Vol.46, No.12, p.806-814
*17 Hui-Chen Lo et al., Submerged culture mycelium and broth of Grifola frondosa improve glycemic responses in diabetic rats. The American Journal of Chinese Medicine. 2008, 36(2):265-85
まとめ
今回はきのこの栄養素と健康や美容面で期待できる効果について紹介しました。きのこはカロリー、栄養素の両面で健康維持に役立つことが期待できます。特に食物繊維やβ-グルカン、ビタミンDなどは注目成分で、腸内環境の改善や免疫力向上、生活習慣病予防のサポートが期待できます。調理法を工夫し、栄養を逃さず効率良く摂取することも意識しながら、今回の記事を参考にさまざまなきのこを毎日の食卓に活用してみましょう。
(参考文献閲覧日:2025年2月11日)
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