善玉菌とは?働きと増やす方法を解説|良好な腸内環境には善玉菌がカギ!

善玉菌とは?働きと増やす方法を解説|良好な腸内環境には善玉菌がカギ!

公開日:

「善玉菌」は私たちの腸内にすむ細菌の中でも、私たちの体のために良い影響を与えるとされている菌です。

便通のために腸内細菌のバランスを整え、善玉菌を増やしたいと思っている人もいるでしょう。実は、善玉菌には腸内を整えるだけではない働きもあります。

この記事では善玉菌の働きと善玉菌を増やす方法を解説します。健康な毎日のために、腸内の善玉菌を増やして腸内細菌のバランスを整えましょう。

この記事の執筆者
パティシエ/食品ライター
栗原 ともこ

パティシエとして13年働いた後、現在はヨガインストラクターおよびライターとして活動している。製菓衛生師やヨガの資格を複数保有する。様々な職歴と経験を経て、健康、ヨガ、食、ダイエット、レシピ開発、旅行など、幅広いジャンルの執筆をしている。

目次
  1. 善玉菌とは?
  2. 善玉菌の種類と特徴
  3. 善玉菌の働き
  4. 善玉菌を増やして腸内環境を整えるには?
  5. まとめ

善玉菌とは?

善玉菌とは、腸管内にすむ菌の中でも、腸内環境を整え、私たちの体に良い影響を与える細菌のことです*1。消化吸収を助けるだけでなく、感染予防や免疫調整など、健康維持に欠かせない役割を果たしています*2。

また、善玉菌は腸内で発酵によって乳酸や酪酸をつくり出します。乳酸や酪酸によって腸内が酸性に保たれることで、悪玉菌の増殖が抑えられ、善玉菌が優勢な腸内環境を形成しやすくなります*3。

*1 公益財団法人腸内細菌学会「よくある質問 腸管内にすむ善玉菌、悪玉菌、日和見菌とは何ですか?」
*2 保井久子. 発酵乳プロバイオティクスの免疫調節機能およびウイルス感染症予防作用. Milk Science, 2010, 第59巻第3号, p.260
*3 安藤朗. 腸内細菌の種類と定着:その隠された臓器としての機能. 日本内科学会雑誌. 2015, 104巻1号, p.29-34

善玉菌の種類と特徴

健康に良いと言われる善玉菌にはいくつかの種類があります。ここでは、代表的な善玉菌を紹介します。

ビフィズス菌

ビフィズス菌は、健康な人の大腸に常在する腸内細菌の1つです。高齢の人より若い人に多く存在することも分かっています*3。

ビフィズス菌の働きは以下の通りです*4。

  • 腸の運動を促す酢酸や酪酸などの短鎖脂肪酸を産生し、便秘を防ぐ
  • 病原菌の増殖を抑え、下痢や食中毒、腸炎などを抑制する
  • 腸内有害菌の増殖を抑え、発がん物質や老化促進物質などの産生を抑制する

乳酸菌

乳酸菌は糖を分解して乳酸をつくる細菌の総称で、古くから、ヨーグルトやチーズ、漬物などの発酵食品の製造に使われています*5。

乳酸菌の働きは以下の通りです*6。

  • 腸内を酸性にし、悪玉菌の増殖を抑える
  • 小腸や大腸が食べ物を消化吸収する環境を整える
  • ビタミンB群や葉酸、ビオチンなどの栄養素を合成し、免疫系を活性化する

酪酸菌

酪酸菌(酪酸産生菌)は、腸内で酪酸を分泌する細菌の総称です。自然環境中に広く存在する菌で、ヒトを含めた動物の腸内にも存在します*7。

酪酸菌の働きは以下の通りです*7

  • 大腸の蠕動(ぜんどう)運動のエネルギー源となる
  • 抗炎症作用や腸管免疫系の維持をサポートする

糖化菌

糖化菌は、食物繊維やオリゴ糖を糖に変換する善玉菌の1つです。食物繊維やオリゴ糖は善玉菌のエサになりますが、善玉菌が活用できる形である糖にするのが、腸内にいる糖化菌です*8*9。

腸内細菌の種類と働き|善玉菌を増やす方法を解説

腸内環境を整えることに興味はあっても、理想的な状態や改善方法が分からない人もいるでしょう。腸内細菌のバランスが乱れると、さまざまな病気のリスクに大きな影響を与えます。今回は腸内細菌の種類や働き、理想的なバランス、食事による改善方法を紹介します。健康的な腸内環境づくりにぜひお役立てください。

*4 奥恒行. ビフィズス菌の有用性とその研究周辺. 栄養学雑誌, 1994, 52巻5号, p.267-268
*5 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「乳酸菌」
*6 立垣愛郎. 乳酸菌の健康機能. Comprehensive Medicine, 2018, 17巻1号, p.10
*7 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 酪酸産生菌」
*8 庄子和夫. 私たちと腸内細菌叢のつながり. つなぎつながる心身健康科学. 第38回学術集会, 2024.02, p.76-79
*9 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 腸内細菌利用糖」

善玉菌の働き

善玉菌は、腸内で乳酸や酪酸などの短鎖脂肪酸を生成します。乳酸や酪酸が腸内を酸性に保つことで悪玉菌の増殖が抑えられ、腸内で善玉菌が優勢になるようなバランスが整えられています*3。ここでは、善玉菌によって得られる作用や期待される効果をみていきましょう。

ウイルス感染を予防し、アレルギー反応を抑制する

善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌の働きには、免疫機能を調整しウイルス感染の予防や、アレルギー反応の抑制作用などもあることが研究によって明らかにされています*2。

腸の蠕動(ぜんどう)運動を促す

善玉菌が生成する短鎖脂肪酸には、腸の蠕動(ぜんどう)運動の促進作用があります。腸の動きが活発になることで、腸の内容物が肛門側へと押し出される動きが強くなります*10。

ビタミンを産生する

腸内では、ビタミンB6やB12など8種のビタミンB群と脂溶性ビタミンであるビタミンKが、バクテロイデス菌などの一部の善玉菌によって産生されています。食事から摂取したビタミンのほとんどは、小腸から吸収されてしまうため、大腸で必要となるビタミンは、腸内細菌が産生していると考えられています*11。

腸管のバリア機能を維持する

腸管には、栄養吸収や体に良くない物質を防ぐバリア機能があります。これらの機能を維持するには、善玉菌の働きが重要です*12。

*10 坂田隆ほか. 短鎖脂肪酸の生理活性. 日本油化学会誌. 1997, 第46巻第10号, p.143-254
*11 公益財団法人腸内細菌学会 「用語集 腸内細菌によるビタミン産生」
*12 金澤昭雄ほか. プロバイオティクス飲料の継続摂取が日本人2型糖尿病患者にもたらす効果. Scientific Reports. 2017, 21;7(1):12115

善玉菌を増やして腸内環境を整えるには?

腸内環境を整えるには、腸内フローラのバランスを整え、善玉菌が働きやすい環境を整えることが大切です。そのためには、善玉菌自体を取り込み、さらにその善玉菌を活性化させるエサを積極的にとることが重要です。

善玉菌のことを「プロバイオティクス」と言い、善玉菌の活性を促すエサを「プレバイオティクス」と言います。この「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」を組み合わせた取り組みは「シンバイオティクス」と呼ばれ、腸内環境を整え健康を増進する方法として広がってきています*13。

ここでは、善玉菌を増やす方法や善玉菌のエサをとる方法を解説します。

善玉菌を増やす方法

善玉菌を増やすには、善玉菌をとるだけでなく、規則正しい生活をすることも重要です。

善玉菌を食事から取り入れる

乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は食事からとることができます。ヨーグルトやチーズ、納豆、みそ、漬物、キムチ、乳酸菌飲料などの発酵食品には、乳酸菌やビフィズス菌が多く含まれています*14。

しっかりと睡眠を取る

明るい時間に起きて、夜は眠るという基本的な体内時計である「概日リズム」が腸内細菌のバランスに深く関わっています。睡眠不足は、腸内のバランスを乱し、エネルギー代謝異常などの原因となるので注意しましょう*15。

生活習慣を整え、ストレスを減らす

睡眠だけでなく、心身ともに健康な生活習慣も善玉菌に良い影響を与えます。近年、運動や肥満により腸内細菌の変化があることが明らかにされています*16*17。運動不足やストレスは腸内細菌の状態に影響があるため、生活習慣を整え、ストレスを減らすことも善玉菌を増やすのに良いと言えるでしょう*17*18。

善玉菌のエサをとる方法

善玉菌のエサとなるプレバイオティクスは、食事からとることができます。何をとればいいのか、具体的に解説します。

水溶性食物繊維を積極的にとる

食物繊維は、腸内の善玉菌のエサとなるプレバイオティクスです*19。食物繊維は、野菜類やきのこ類、豆類などに含まれます。ごぼうやブロッコリー、オクラ、かぼちゃなどに含まれるので、積極的に献立に取り入れましょう*20。

また、厚生労働省が推奨する1日当たりの食物繊維の目標摂取量は、18~64歳で男性21g以上、女性18g以上です*21。日本人の食物繊維摂取量は減少傾向にあるので、積極的に摂取するように心がけましょう*22。

難消化性オリゴ糖を積極的に取り入れる

フラクトオリゴ糖などの難消化性オリゴ糖もプレバイオティクスの1つです*19。難消化性オリゴ糖は、胃や小腸で消化・吸収されることなく大腸まで届き、善玉菌のエサとなるため、善玉菌の活性を促します*23。オリゴ糖を含む食品は、玉ねぎやごぼう、大豆、アスパラガス、はちみつ、みそ、ねぎ、バナナ、にんにくなどです*24。

オリゴ糖は粉末状やシロップ状のものも市販されているので、お料理や飲み物に使う砂糖の代わりにすることで、簡単に摂取できます。

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プレバイオティクスとは?健康効果や食品例、効果的なとり方を解説

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*13 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 シンバイオティクス」
*14 瀬川修一. プロバイオティクスが産生するさまざまな生理活性物質(バイオミディア). 生物工学会誌. 2012, 第90巻, p.736
*15 入江潤一郎ほか. 睡眠と腸内細菌叢, 腸内細菌学雑誌. 2017,31号, p.143-150
*16 森田英利. 運動と腸内細菌叢. 腸内細菌学雑誌. 2020, 34巻1号, p.13-18
*17 桑田有. ヒトの腸内細菌叢. 心身健康科学. 2012, 8巻1号, p.8-15
*18 須藤信行. ストレスと腸内フローラ. 腸内細菌学雑誌. 2005, 19巻, p.25-29
*19 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 バイオジェニックス」
*20 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年・ 第2章(データ)」
*21 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書 食物繊維」 p.1657
*22 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」
*23 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 フラクトオリゴ糖」
*24 中嶋洋子, 蒲原聖可 監修「食べ物栄養事典」主婦の友社, 2009,「オリゴ糖を多く含む食品」p.28

まとめ

今回は、善玉菌の働きと増やし方を紹介しました。腸内環境を整える善玉菌を増やすことで、便通だけでなく、免疫力にも良い影響があります。善玉菌を多く含む発酵食品や、善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖を含む食品を取り入れて、善玉菌を増やしていきましょう。

(参考文献閲覧日:2025年1月15日)

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