悪玉菌が増えるとどうなる?原因と減らす方法を解説

悪玉菌が増えるとどうなる?原因と減らす方法を解説

公開日:

悪玉菌は、私たちの腸内に常に存在する常在菌の一種です。悪さだけをするのではなく、たんぱく質の消化を助けてくれるメリットをもち合わせている必要不可欠な腸内細菌です。

しかし、やはり増え過ぎると炎症や動脈硬化などを引き起こしてしまうため、悪玉菌を増やさない生活習慣が重要です。今回は、悪玉菌の特徴や増やしてしまう原因、減らす方法について詳しく解説します。

この記事の執筆者
薬剤師/腸育コンシェルジュ
松本 萌

薬剤師ライターとして、セルフケアに関する記事を執筆している。前職のドラッグストアで健康相談を受ける中で、正しい知識を知らない人が多くいることを痛感。セルフケアの正しい知識を誰にでも分かりやすい言葉で紹介することを心がけている。薬剤師以外にも化粧品成分検定1級、腸育コンシェルジュなどさまざまな健康・美容の資格を取得。

目次
  1. 悪玉菌とは?
  2. 悪玉菌の種類と特徴
  3. 悪玉菌が増えるとどうなる?
  4. 悪玉菌が増える原因
  5. 悪玉菌を減らす生活習慣
  6. 悪玉菌を減らす食習慣
  7. まとめ

悪玉菌とは?

悪玉菌とは腸内細菌の1つです。西洋化した食事に多い脂肪分や活性酸素などを栄養源としているため、食物繊維の摂取が少ない状態では悪玉菌が優勢になってしまうと言われています*1。

悪玉菌は単糖や二糖類、脂肪、たんぱく質、アルコール、そして体内の炎症によって発生する活性酸素をエネルギー源とし、硫化水素やトリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)を産生します。硫化水素やTMAOは炎症やがん、動脈硬化を引き起こす物質のため、体に悪いことをする菌として「悪玉菌」や「有害菌」と呼ばれているのです*1。

ちなみに、善玉菌(有用菌)は食物繊維をエネルギー源として発酵を行い、炎症を抑えたり免疫バランスを整えたりする短鎖脂肪酸を生み出します*1。善玉菌を優勢にしてバランスの良い状態が「腸内環境が整っている」とされ、健康な状態を維持できるとされています*2。

*1 金井 隆典. 腸内細菌と消化器疾患. 日本内科学会雑誌. 108 巻 9 号, p1939-1945
*2 公益財団法人腸内細菌学会「よくある質問 ヒトの腸内にはどのような微生物が棲んでいるのですか?」

悪玉菌の種類と特徴

悪玉菌には数多くの種類がありますが、代表的なものに大腸菌(Escherichia coli)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)があります。

これらの悪玉菌については、テレビやニュースで聞いたことがあるという人もいるかもしれません。

実はこれらの菌は、食中毒などの感染症を引き起こす原因菌としても有名です。大腸菌、ウェルシュ菌、ブドウ球菌は人間の体内にもともと存在している常在菌ですが、その中の特定の種類のみが強力な毒素を発生させて食中毒を引き起こします。このような食中毒を起こす菌は、加熱処理が十分できていない肉や料理、加熱後に放置された料理などで大量発生します*3*4*5。

ただ、常在菌として腸内にいる悪玉菌は、これ程の威力は持たないものの便秘や炎症、動脈硬化などを引き起こすため、増え過ぎるのは健康上良くないと言えるでしょう。

*3 菊池 綾子. ヒトに悪さをする大腸菌について. 新潟市衛生環境研究所 衛生科学室
*4 農林水産省「Clostridium perfringens」
*5 国立感染症研究所「ブドウ球菌食中毒とは」

悪玉菌が増えるとどうなる?

悪玉菌が増えると、腸内環境が乱れて便秘や下痢を引き起こすほか、体の炎症・動脈硬化・がんなどの原因となる場合もあります。

悪玉菌が増え過ぎてしまうと、産生された物質により腸の動きがうまくいかなくなり便秘になります。また、腸内細菌のバランスが崩れて、炎症や下痢などが起こりやすくなるのです*6。悪玉菌がつくり出す有害物質は、がんや動脈硬化のきっかけになるとも言われています*1。

悪玉菌の一種であるウェルシュ菌はたんぱく質を腐敗させ、いやなにおいの原因と言われるアンモニアやインドールなどの有害物質をつくり出します*7。便中のアンモニアは認知症との関連性もあることが分かってきました*8。

ただし、悪玉菌を完全になくせば良いというわけでもありません。悪玉菌はたんぱく質を分解する役割も持っています。大切なのは悪玉菌と善玉菌とが良好なバランスを保つことです。

*6 佐藤研. 過敏性腸症候群における脳腸相関と腸内細菌叢. 心身医学. 2022, Vol.62, No.1, p.46
*7 安藤朗ほか. 腸疾患における腸内細菌のかかわり. 日本内科学会雑誌. 2013, 102巻11号, p.2983~2989
*8 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「あなたの腸は大丈夫? ―いきいき腸内細菌!―」

悪玉菌が増える原因

炭水化物や脂肪、たんぱく質、アルコールなどの多い食事は、悪玉菌のエネルギー源となるため、腸内で悪玉菌が増える原因になるでしょう。

また、腸と脳は密接に関わっており、ストレスによって腸内環境の調整が難しくなることも報告されています*9。

生活習慣や加齢などによっても、悪玉菌が善玉菌よりも増えてしまうことがあります。たとえば、ウェルシュ菌は中高年になると増えてしまうことが分かっていて、腸の老化のサインであるとも言われています*10。

*9 眞野あすかほか. ―話題― 脳―腸―腸内細菌軸と過敏性腸症候群, 日医大医会誌. 2023, 19巻1号, p.53
*10 安藤朗. 腸内細菌の種類と定着:その隠された臓器としての機能. 日本内科学会雑誌. 2015, 104巻1号, p.29-34

悪玉菌を減らす生活習慣

ここからは、悪玉菌を劣勢にして腸内環境を整える生活習慣について解説します。不規則な生活やストレス、喫煙などは悪玉菌を増やして腸内環境を乱す原因とされています。

腸内環境を整えるためには毎日の積み重ねが大切です。できることから実践していきましょう。

ストレスを減らす

ストレスと脳、そして腸は、とても密接に関わり合っています。緊張やストレスにさらされた時、下痢になったり便が思うように出なかったりして悩んだ経験はありませんか?

脳と腸は深い関わり「脳腸相関」があると言われています。最近では、腸内細菌の情報も脳と関連する「脳-腸-腸内細菌軸」という概念も出てきました*11。この「脳腸相関」が深く関わっていると言われる過敏性腸症候群という病気では、症状として腹痛やおなかの不快感とともに抑うつや不安などの心の変化も引き起こすとされています*9。

ストレスを減らす方法は人によって異なりますが、暴飲暴食は悪玉菌を増やしてしまうため、体を動かしたり趣味を楽しんだりする方法がおすすめです。

生活リズムを整える

生活リズムを整えることで排便が促され、腸内環境も整います。また、リズムを整えてメリハリのある生活を送れば、ストレス発散にもつながり悪玉菌を減らせるでしょう。

具体的には、次のようなことを実践するのがおすすめです。

  • 朝食をしっかりとること
  • 規則正しい時間に排便のためのトイレに行くこと
  • 夕食と朝食の時間を空け、空腹時間をたっぷりとること
  • 体を程良く動かすこと

これらの行為は、すべて腸の蠕動(ぜんどう)運動を促してくれます*12。

禁煙する

悪玉菌を増やす成分として、抗生物質などの薬やタバコの煙、環境汚染物質などがあります*13。しかし、病気を治すための薬の服用は減らせません。私たちができることとしては、まずタバコの煙や環境汚染物質を避けることです。

喫煙している人が禁煙すると、腸内環境が変化し腸内細菌の種類も多様化することが報告されています*14。自分が禁煙することはもちろん、喫煙者の近くで生活することが多い人は、受動喫煙にも気をつけると良いでしょう。

*11 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 脳腸相関」
*12 細田誠弥. 生活習慣と排便異常. 順天堂医学. 2004, 50巻4号, p.330-337
*13 内藤裕二. 脳腸相関UPDATE-疾患の予防と健康長寿のための食・栄養・腸環境, Part 1 脳腸相関総論, 3.腸内細菌叢のライフステージにおける変化. 臨床栄養. 2023,「臨床栄養」臨時増刊号 142巻6号, p.835-841
*14 Biedermann L et al., Smoking Cessation Induces Profound Changes in the Composition of the Intestinal Microbiota in Humans. PLoS One. 2013, 10.1371

悪玉菌を減らす食習慣

腸内環境を整えるためには、食習慣が非常に大切です。善玉菌を増やし、悪玉菌は増やさないような食習慣を心がけましょう。

プロバイオティクスを取り入れる

プロバイオティクスとは、十分な量を摂取すると、健康に役立つ効果を発揮する生きた微生物のことです*15。乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を多く含む、ヨーグルトや発酵食品を取り入れていきましょう。

善玉菌は腸内で乳酸や酢酸をつくり出し、腸内を酸性に保ちます。酸性の腸内では悪玉菌の増殖が抑えられ、より善玉菌が優勢になりやすいです*10。

腸内環境のバランスは、便を観察することで推測できます。バランスの良い状態では、表面がなめらかで柔らかいソーセージ状の便が出ます。逆に、悪玉菌が増えている便は、腐ったゆでたまごのような不快なにおいが特徴的です*16。

プレバイオティクスを取り入れる

プロバイオティクスと一緒にプレバイオティクスを取り入れると、腸内環境の改善に役立ちます。

プレバイオティクスとは、善玉菌を増やしたり、悪玉菌の増殖を抑えたりするなど、健康に有益な働きがある難消化性の成分のことで、オリゴ糖や食物繊維などが該当します*17。プレバイオティクスとプロバイオティクスを組み合わせて取り入れることをシンバイオティクスと言い、善玉菌の増殖や活性化を促進します*18。

日本人の多くは、食物繊維の摂取量が減少気味です。食物繊維が十分にとれていると、便の量が自然と増えます。1日に約150g(見た目でMサイズの鶏卵約3個分)程度の便が出ていれば、食物繊維はしっかりとれているとされています*19。

悪玉菌を増やす成分をとり過ぎない

悪玉菌は炭水化物(単糖や二糖類)や脂肪、たんぱく質、アルコールをエネルギー源として増殖していきます*1。

ファストフードや西洋化した食事が多いと、悪玉菌が増えやすいでしょう。またお酒の飲み過ぎにも気をつける必要があります。

厳しい食事制限はストレスの元になってしまいますが、発酵食品や野菜、果物なども取り入れたバランスの良い食生活を心がけると腸内環境が整いやすくなるでしょう。

*15 Colin Hill et al., The International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics consensus statement on the scope and appropriate use of the term probiotic. Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology. 2014, 11:506–514
*16 内藤裕二監修「最高の食べ方がわかる!老けない腸の強化書」新星出版社, 2023, p.28-29, 38-39, p.46-47
*17 Glenn R. Gibson et al., Expert consensus document: The International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics (ISAPP) consensus statement on the definition and scope of prebiotics. Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology. 2017, 14:491–502
*18 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 シンバイオティクス」
*19 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」

まとめ

現代人の食事や生活習慣では、意識していないと悪玉菌が増えやすいかもしれません。悪玉菌を減らして腸内環境を整えていくと、体にとってのメリットも大きく、より快適な毎日を過ごせるはずです。できることから少しずつ、腸に良い習慣を増やしていきましょう。

(参考文献閲覧日:2025年1月23日)

合わせて読みたいおすすめ記事

プロバイオティクスとは?効果と種類・おすすめの食品・とり方のコツを紹介

善玉菌を育てるのに有効なプロバイオティクス。腸内フローラを整えるのに役立つと言われていますが、プロバイオティクスとは何のことなのでしょうか?この記事ではプロバイオティクスの種類とその働き、プロバイオティクスを含むおすすめの食品、プレバイオティクスとの違いについて紹介します。

プレバイオティクスとは?健康効果や食品例、効果的なとり方を解説

善玉菌を増やし、腸内環境を整えながら健康をサポートするプレバイオティクス。善玉菌のエサとなり、腸内環境を整えるのに有効と考えられています。今回はプレバイオティクスの効果や食品例、効果的なとり方について解説します。

腸内フローラ(腸内細菌叢)とは?乱れる原因と対策を解説

腸内細菌の集まりである「腸内フローラ」のバランスが取れていると、免疫機能が高まるなど私たちの健康を支えてくれます。一方、乱れた腸内フローラでは、体や脳の疾患のリスクを高めてしまう可能性もあります。この記事を読んで、腸内フローラを整えて健康的な毎日を目指しましょう。

腸内細菌の種類と働き|善玉菌を増やす方法を解説

腸内環境を整えることに興味はあっても、理想的な状態や改善方法が分からない人もいるでしょう。腸内細菌のバランスが乱れると、さまざまな病気のリスクに大きな影響を与えます。今回は腸内細菌の種類や働き、理想的なバランス、食事による改善方法を紹介します。健康的な腸内環境づくりにぜひお役立てください。

善玉菌とは?働きと増やす方法を解説|良好な腸内環境には善玉菌がカギ!

善玉菌を増やすことで腸内環境が整うと耳にすることも多いでしょう。善玉菌には便通への良い影響以外にも、さまざまな働きがあります。この記事では善玉菌の働きと、善玉菌を増やす方法を解説します。